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ー未知ー178

 雄介のその言葉で俺も動く。  一体、自分で飲み物を入れるというのはどういうことなのだろうか。 「望は珈琲やねんやろ?」 「あ、ああ……」  そう答えると、雄介はコーヒーカップを用意して、コーヒーマシンの下にそのカップを置く。それとほぼ同時にコーヒーマシンが動き出し、そのコーヒーカップへとコーヒーを注ぎ始める。 「……マジかぁ!?」  そこに一人感動して見てしまっている俺。  今の時代はこんなに簡単にコーヒーが出来てしまうことに感動していた。  俺の家ではコーヒー豆を買って来て、コーヒーミルで粉にしてからコーヒーにして飲んでいるのだから。 「ほい……出来たで……。砂糖にミルク一個で良かったか?」  そう雄介に言われて、お皿の上に砂糖とミルクを乗せてくれる雄介。 「あ、ああ……」  俺の方がそう答えると、雄介は今度自分の分を作り始めたようだ。雄介の方はどうやらコーヒーではなく、炭酸飲料系にしたようで、そこにある炭酸飲料をミックスしているような気がするのは気のせいであろうか。 「え? お前、何してんの?」  そう俺の方は驚いたように言うと、 「何言ってるん? 寧ろ、ファミレスって言うたら、普段では出来ないようなことが出来るのがファミレスでの醍醐味っていうやつやろ? こう色んなジュースを混ぜて飲むっていうのも楽しみの一つなんやで……」  そう言って雄介が顔を上げた頃には、雄介のグラスの中の色が今までには見たことのないような色をしていたのは気のせいであろうか。一瞬、その色に『うげぇっ!』という表情をした俺だったのだけど、どうやら雄介はその俺の表情を汲み取ったようで、 「確かに、見た目わなぁ……。だけど、俺は炭酸飲料しか入れてへんからぁ……」  雄介はそう言いながら、席へと戻って行く。  しかし、雄介が炭酸飲料を飲むなんて、どういう風の吹き回しなんだろうか。  そこは気になるところなのだが、俺の方も席へと戻る。  俺は席へと戻ると、ミルクと砂糖をカップへと入れ、スプーンで混ぜる。そして目の前にある雄介のグラスの中というのは、やはりさっき見たのと同じで、見たこともないような色をしていることに再び表情を濁らせる俺。 「本当に、ソレ美味しいのか?」 「美味いのか? と言われれば、特に美味いとは言い切れんのやけど、まぁ、普通に飲めるっていうことかな?」 「ふーん……」  と俺の方は一応返事をするのだった。そう、俺の方からその話題を振ったのだから、一応返事はしといたほうがいいと思ったからだ。  しかしもう一つ謎が残る。  雄介の方も普段は俺と同様に、ほとんどコーヒーか麦茶しか飲まないのに、何で今日に限って『炭酸飲料』を飲んでいるのかに疑問が残るところだ。

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