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ー未知ー186

「いえいえ……今日は、お邪魔しますね」  と美里も、雄介の姉であるのに、丁寧に挨拶をしてくる。  俺も雄介や美里に続いて、 「こんにちは、今日はわざわざ家に来ていただいて、本当にありがとうございます」  と頭を下げて言う。俺と美里は他人なのだから、それはそれで良いのだろう。  俺は美里をリビングへと案内する。とりあえずソファに案内すると、雄介はお茶を取りに行く。こういう行動は雄介の方が得意なのかもしれない。  そして、俺たちの正面に座る美里。ますます俺の鼓動は早くなるばかりだ。緊張は最大限に達しているようだ。心臓がこんなに早く鼓動するなんて、今にも止まりそうな勢いだ。  俺が緊張している中、雄介はお茶を運んでくる。そして、それを美里の前に出し、自分たちの方にも出す。お茶を出した後、雄介はソファに座り、口を開く。 「今回、僕たちがお姉さんをお呼びしたのは、前に電話でも話しましたが、代理出産についてお姉さんにお願いしたいと思ったからです」  と雄介は美里に向かい頭を下げる。俺も美里に向かい頭を下げる。俺は雄介の話に対して反応していくしかない。今日はきっと雄介が誘導して話を進めてくれるのを待つしかない。 「お願いします! どうか、僕たちのために、代理出産をお願いできないでしょうか?」  本当に真剣な声で、美里に向かい頭を下げる雄介。  すると美里は、 「前にも言ったけど、雄ちゃんと吉良先生のために、代理出産をしてもいいのだけど……出産っていうのは、色々と危険を伴うことも分かってほしいの……。それに、もしかしたら健康に生まれてこないかもしれない。私や生まれてきた子供がすぐに死んでしまうかもしれない。もしそうなった場合、吉良先生は大丈夫かもしれないけど、雄ちゃんは絶対にそういうのに弱いと思うのよ。昔、ハムスターを飼っていた時も、メダカを飼っていた時も、あなたの場合、涙もろくてすぐに泣いてしまって、約一ヶ月くらい毎日のように泣いていたことがあったじゃない?だから、私はそこも心配しているのよね」  その美里の話に、俺は雄介の方を見上げる。「それは本当なのか?」という目でだ。どうやら俺のサインに気付いたのか、雄介は一瞬俺を見たが、すぐに美里の方へ視線を向け、 「確かに、子供の頃はそうだったかもしれませんが、今は大人になったので、そういうところは大丈夫だと思います」

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