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ー未知ー198

 むしろ、そういった感じで、親に向けて何かサインを出しているのかもしれない。  犯罪を犯してまで、「もっと自分のことを見て!」と言っているのだから。  少しでも気を自分の方へと向けたい年頃でもあるのだから。  「もう中学生なのだから」とか思わない方がいい。人間は誰にも構ってもらえないと寂しいものだ。だから、気持ち的に家で子供が親にアピールをしているのに、気付かないでいると、そうやって犯罪まで犯して構ってほしいというのであろう。 「俺たちが小さい頃、琉斗のことを見ていた時期があったけど、その時だって、あまりわがままなこととか言わなくて、『琉斗はいい子やなぁ』って思っていたけど、『いい子でいて、褒めてもらえる方がいい』と思わせるのも問題があるんやで……だって、それこそ本来の自分を出せてないんやからなぁ……。まあ、あの時の琉斗は、親ではなくて、俺たちだったから、あまり甘えることとかできんかったから仕方ないとは思うんやけどな。だって、病院に姉貴のこと見舞いに行った時の琉斗はちゃんと姉貴に甘えに行っておったしな。そこもまた重要なところやって思うわぁ……しっかりと親に甘えることができた子っていうのは、外に出ると、しっかりとするもんやし、褒めてもらってきた子供っていうのは、自分に自信がつくしな」  その雄介の言葉に、俺と美里は唖然とした顔で雄介のことを見ていたのかもしれない。  美里の方は急に口を開き、 「ほんと、子供に関してそれだけの知識があるなら、本当に、雄介と望さんの子供を預かってもいいと思うわぁ……。むしろ、作ってあげたい気持ちになれたしね」 「え? あ、ああ……べ、別に……俺は、そんな気持ちで……言ったわけじゃないんだけどなぁ」  その雄介の言葉にクスクスとしたのは美里だ。 「そういう自然なところが、あなたのいいところじゃない? だって、会話からそうやって子育てについて話してくれたわけだしね」 「あ……」  しかし何気に美里もすごいと思う。話をしながらもちゃんと雄介のことを理解しているのだから。  確かにさっきまでは真剣に、しかも雄介は敬語まで使って話をしていたのに、今はすっかりその話を終えて普通の会話をしている時に、そうやって育児に関することを話し始めたのだから、元から雄介は育児に関することについてしっかりと意見というのか知識がちゃんとあったのだろう。  なんだか今日があれだけ憂鬱な日だと、雄介の方は思っていたみたいなのだが、結果的には本当にいい方へと進んでいるような気がする。

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