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ー未知ー197

 俺が雄介へとフォローを入れると、再び俺と雄介は視線を合わせる。そして微笑む俺たち。  今日、何度、俺たちは視線を合わせて微笑んだだろうか。  俺たちからすると、そういった回数が多いような気がするからだ。 「ホント、雄ちゃんって、確かに、そういうところ凄いところがあったわよね……。確かに、望さんの言う通り、『何かにハマるとトコトンタイプ』だったわぁ……」  そこにクスリとしている美里。きっと俺の言葉で、雄介と美里が小さい頃を思い出しているのだろう。 「それに、琉斗の場合には大丈夫だとは思うけど……」 「それが、アカンねんって……。自分の子は大丈夫って思っているほど、逆に危なかったりするんやからな。まぁ、確かに、琉斗だったら大丈夫やと思うねんけど……この前だって、スーパーで買い物しておったしな。琉斗はもう料理できるんか?」 「まぁ、料理はできるわよ。そんなのとっくに教えておいたからね。ウチは旦那さんがいなくて、私が働きに出てるじゃない?だから、夕飯はお金を渡して自分で作るか、食べてもらっているのよね。それで、たまに私の分も作っておいてくれて、それが、本当に美味しいの!」  そう幸せそうに話す美里は、本当に息子のことを溺愛しているのだろう。でなければ、そこまで褒めるっていうことはしないのだから。 「まぁ、そこは、ええんやないの?姉貴と琉斗の関係がええのやからなぁ。そんな生活の中で、琉斗とたまにぶつかっている時っていうのが、ちゃんとあるんか?」 「まぁ、たまにはねぇ……だけど、琉斗と私の場合、そんなに言い合ってはないかしらね?相手のことを無視するほどにはなってないと思うの……。そう考えると、ある意味、雄ちゃんを見てるみたいなのよね。凄く優しくて母親想いなのはいいことなんだけど……こうトコトン言い合いっていうのはなかったと思えるわぁ……」  その言葉に雄介は思いっきりため息が出そうになるのだが、そこは止めて、 「琉斗の場合には、大丈夫かもしれへんけど……。人間、不満が溜まりすぎて、そういうお年頃だと、余計に不満が爆発しそうで、それを晴らせないでいると、非行とか犯罪に手を出すかもしれへんから、マジで気を付けた方がええねんで……」  その雄介の言葉に、俺も思わず「あ……」と言いそうになってしまっていた。確かに雄介の言う通りだからだ。  これが完全に反抗しなきゃいけない時に、反抗しないでいると、自分の意見も親に言えなくなるわけだし、心に鬱憤だけが溜まっていくだけなのだから、上手くそれを発散することができない。そうなると、中には犯罪で鬱憤晴らしをする若者も出てくるのだろう。

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