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ー未知ー196

「ちょっと、雄ちゃん……今の声、私にも聞こえてたんだけど……!」 「……プッ!」  その美里の言葉を聞いた瞬間に、雄介は吹き出した。そして雄介は、 「あー、スマン、スマン! 今のは堪忍なぁ……」  そう言って顔の前で手を合わせ、何度も何度も美里の前で頭を下げ続けた。  それを見てクスクスと笑う美里。 「もう、分かってるわよー。ホント、雄ちゃんって昔と変わらないわよねぇ……。そうやって、すぐに人に謝ってしまうところとか……。確かに、それは平和主義でいいのかもしれないけど、やっぱ、自分を出さないとダメなんじゃないかしら?」  その美里の話に目を丸くしたのは俺の方だ。  確かに雄介は、昔から平和主義というか、何かあっても最初に謝ってから相手に許しをもらって、後から言い訳をするようなところがあったように思えるからだ。  それに変に納得してしまう俺。  だけど、兄弟のやり取りに笑えてくる。  俺の兄弟は朔望と歩夢なのだが、あいつらとはそんな会話をしたことがないような気がするからだ。  確かに、俺たちの場合は離れて暮らしていたというのもあるが、雄介と美里の間には、こうも見えない愛情というものがあるように思える。 「ほんで、姉貴からしてみたら、可愛い息子の琉斗やけど、ホンマに無理やり手伝いとかさせてへんやろな? それと、ちゃんと反抗もさせてるんか?」  その雄介の言葉に、美里はなぜか目を丸くしていた。そして、 「ちょっと、子供もいない貴方が何で子育てに関して詳しいのよー……」 「そりゃ、伊達に小児科医やってないわぁ……」 「ま、そうかもしれないけど……別に、小児科医だからって、子供の心理に関する知識は無いでしょう?」 「……はぁ!? 逆に何言うてんねん……色々と小児科医として、子育て関係の知識があった方がええんやろが?」 「そうかもしれないけど……。だって、近場の小児科じゃ、そこまで……」  なぜか、そこで言葉を詰まらせてしまう美里。  俺と雄介は、視線を合わせて、 「ま、そこは、雄介、なんですよ……」  と、俺はわざと『雄介』を強調して言うのだ。  そう、俺の中では十分に雄介のことが分かっている。雄介という人間は、やると決めたら徹底するタイプなのだ。  だって、雄介が医大に行っていた数年間、ほとんど会話がなかった時期に、雄介は勉強以外にも色々と学んでいたようなのだから。  その時にきっと子育て分野も勉強していたのだろう。  そして俺も雄介も、親に対して反抗期というのはなかったのだが、本当は反抗期というのはあった方がいいらしい、とは聞いたことがある。

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