それから数ヶ月後には、美里のお腹も以前に比べて大きくなってきており、病院での検診の時には、 「見て見てー、またお腹が大きくなってきたでしょー」 　と、俺たちにお腹を見せてくれる。 「本当ですねぇ」 　と、俺は笑顔で答える。 　雄介はきっと、琉斗の時に何度も見てきたから知っているのだろう。 　そして俺たちが美里のお腹を見ていると、お腹の中の赤ちゃんが元気に動き始める。 「え？ 動いた？！」 　と、驚いて目を見開き、声を上げてしまったのは俺だ。 　その直後、周りからの視線に恥ずかしくなったのは言うまでもない。 　俺にとっては初めての経験なのだから、仕方がない。 　それに、今美里のお腹の中には俺たちの子供がいるのだから、はしゃがない方が難しい。 　しかし、今日の雄介はいつもより冷静に見える。さっきからほとんど口を開いていない。 　一体どうしたのだろう。雄介が静かにしているなんて珍しいことだ。 　俺は雄介の顔を見上げてみる。 　すると、雄介は気持ちを天井の方へと向け、何か考えている様子だった。 　それを見て、俺は首を傾げる。 　雄介は美里に対して苦手意識があるから、普段もあまり話さないことが多いが、今日はいつもより静かだと感じるのは気のせいだろうか。 　俺が気になって声をかける。 「雄介……どうしたんだ？」 「あ、いや……大丈夫だって……何でもないから……」 「そうか……」 　俺は美里に聞こえないような小声で雄介に話しかけた。 　しかし、雄介の様子がおかしい気がする。しかも、俺の質問に対して「何でもない」と答えるのも不自然だ。首を傾げつつ、俺はソファに深く腰掛けた。 　周りにはお腹に赤ちゃんを抱えた女性がたくさんいて、その空気がふわふわと感じるのは気のせいだろうか。きっと、赤ちゃんがお腹の中で成長していて、もうすぐ産まれるという期待感がこのふわふわした空気を作り出しているのかもしれない。 　そんな空気の中で、再び雄介がうつむいて頭を抱えている姿が目に入る。 「ちょっと、雄介……どうしたんだよ。さっき、声をかけたときは『何でもない』って言ってただろう？」 「まぁ……ちょっとな……さっきは大丈夫だったんだけど……っ！」 「はぁ！？ 例の頭痛か？」 「まぁ……あ……そうなのかもしれないなぁ……」 「ちょっと待ってろ……」 　俺はそう言って、美里に声をかけた。 「美里さん、すみません！ 雄介が頭が痛いって言ってるので、少し雄介のことを休ませてきますね。薬を飲ませたら、俺だけ戻ってきますので……」 　そう言って、俺は雄介と一緒に病院の中にある自分たちの部屋へと向かった。