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ー閃光ー42

 本当に雄介には驚かされる。まさかカレーまであんな風に作ってしまうとは思わなかった。 「……へ? マジか……」 「ま、まぁな……」  そして、相変わらず謙虚なところが、雄介の素敵なところだ。  本当に雄介の場合は、そういったことを自慢げに言わないところが、またいいのかもしれない。 「ホント、雄介が旦那さんで良かったよ……」  そう、俺も素直に言うのだ。 「ん……ありがとうな。望にそう言ってもらえると、ホンマ、嬉しいわぁ……」  そう返してきて、笑顔を俺に向ける雄介。  本当に、今はこういう一瞬さえも幸せに感じる。  先ほど帰宅したときには、一瞬ドキリとしたものの、今ではもうそんなこともなく、幸せな時間を過ごしている。  俺たちはご飯を終えると、今度はお風呂の準備を始める。  そこは俺の役目だ。  とは言っても、軽く浴槽を洗ってお湯を溜めるだけだが。  いや、きっと昼間に雄介がお風呂掃除をしてくれているから、軽くシャワーで浴槽を流し、お湯を溜めるだけでいいのだろう。  ホント、雄介はマメな性格だ。  昼間は家の端から端まで掃除してくれて、洗濯やお皿洗いまでしてくれる。だから、俺は本当に雄介に対して何も言うことがないくらいのパーフェクトな人間だと思っている。  俺がお風呂にお湯を溜めて戻ってくると、雄介はテレビの前で、コーヒーを啜りながら見ていた。  もちろん、俺の分のコーヒーも置いてある。  今の俺は気にせず雄介の隣に座り、コーヒーを啜りながらテレビに視線を向ける。  以前はバラエティ番組が苦手だったけど、雄介や和也のおかげで見られるようになった。  二人で笑い合い、二人だけの時間を過ごす。そしてお風呂が溜まったら一緒に入る。それだけの時間が、今は本当に楽しい。昔は、俺は雄介に対してツンツンとした態度を取っていて、よく喧嘩もしていたけど、今は素直になったからなのか、あるいは雄介のことを信じられるようになったからなのか、こうした二人だけの時間を楽しめるようになった気がする。  恋人の時間や夫夫の時間は、こうやってパートナーと楽しむ時間なんだと、雄介が言わなくても教えてくれたような気がする。  しかし、そういう時間はすぐに過ぎ去ってしまうものだ。  もう今日はお風呂に入ったら、後は寝るだけの時間になってしまうのだから。  当然、寝ている時間というのは、他の人間とは合わない時間だ。だから寝てしまったら、次に起きたときには仕事の時間になってしまう。  本当はもっともっと雄介と一緒に時間を過ごしたいと思うのは、我儘なのだろうか。

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