772 / 825

ー閃光ー60

 そこに、自己嫌悪状態の俺は、無意識のうちに息を吐き出してしまっていた。  やっぱり俺には、美里の相手をするなんて無理に決まっている。だけど、今は半ば無理矢理にでも相手をしないといけないのだから、余計に憂鬱な気分になってしまう。だけど、実際美里に対して言葉が出てこない。  そう、俺の頭の中では、その繰り返しだった。  そうこうしているうちに、既に家の近くの信号まで来てしまっていた。  そこで再び、ため息を吐いてしまう俺。  まだ俺は、美里のことをちゃんと相手してあげられなかったことに、自己嫌悪状態だったからだ。 「あー、今日は色々とすみませんでした……」  やっと最後の最後で出てきた言葉がそれだった。 「全然いいんですよ……」 「そう言ってくださると、本当に助かります……」  俺は美里へと笑顔を向ける。そして、自分の家の駐車場へと車を止めると、 「着きましたよ」  そう美里に伝えるだけで精一杯だった俺。  確かに雄介の言う通り、何だかわからないのだが、美里には威圧感というのか、そんなものを感じてしまい、なかなか上手く話すことができないのかもしれない。 「美里さんは、また何かありましたら、俺に電話してくださいね。それと、緊急事態になった場合には、救急車の手配とかもお願いします!」  俺は雄介を支えると、美里にそう言うのだ。 「あ、わかりました……。望さんと雄ちゃんにはここまで私をサポートしてくださったし、赤ちゃんの方も、もう、ここまで大きくなってきているので、だいぶ安定していますのでね。あとは、もう、生まれるのを待つだけですから、そんなに心配する必要はないと思いますよ」  そう笑顔で言われ、何だか俺はほっとしたような気がした。 「すみません……!」  そこで俺は一旦美里に向かい頭を下げる。 「本来なら、俺たちが赤ちゃんが生まれるまで美里さんのフォローをしていくつもりでしたが、できなくなってしまい、本当に申し訳ございませんでした!」  そう言って再び頭を下げる俺。  本当に申し訳ない気持ちなので、何度でも頭を下げるつもりだ。 「もう、大丈夫ですよ……。そろそろ私もですが、雄ちゃんの体にも響いてしまいそうなので、お話はまた今度にしませんか? 望さんだって、雄ちゃんがこんな状態になってしまったんですから、何かと忙しいと思いますしね」  そんな美里からの気遣いに、涙が溢れそうになったのだが、この涙は雄介が元に戻った時にしようと思い、簡単に拭うと、美里に向かい頭を下げたのだ。

ともだちにシェアしよう!