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ー閃光ー87
「あ、はい! そうなんですよー。今日、仕事場で話をしたら、今日は来てくださると言ってくださいましてね」
そこで俺は一旦止め、今度は新城たちの方へと視線を向け、
「背が高い方が、俺と同じ外科医をしている新城颯斗さんで、可愛くて裕実に似ている感じの方が本宮実琴さんです。裕実に似ているのは、実はですね、裕実と実琴さんが双子の兄弟だからなんですよ……」
と、やっと落ち着いた感じで俺は美里に新城と実琴のことを紹介する。そして、美里のことを新城たちにも紹介し始める。
そう、この三人のことを知っているのは、今は俺しかいないのだから、俺が紹介しないといけないのだ。
「こちらの女性は、雄介のお姉さんで、桜井美里さんです」
と、とりあえず美里のことも新城に紹介する。
すると、新城はやはり紳士的な男性というイメージがあるからなのか、女性には優しいのであろう。いや、もしかしたら今まで俺は新城とはそこまで仲良くしていなかったから気づかなかったのかもしれないが、新城という人間は見た目も紳士っぽいだけでなく、本当に紳士的で、俺が新城のことを美里に紹介した直後には、美里の前で片膝を床に付き、美里を見上げるように、
「どうも、初めまして。今、吉良先生にご紹介いただきました、新城颯斗です。これから、お見知りおきくださいね」
と、今にも美里の手の甲にキスをしそうな仕草で言うのだ。だが、さすがに実琴という恋人がいる前だからだろうか、そこまではしないようだ。
なんだか、そこに安心してしまう俺。確か、実琴も裕実同様にかなり嫉妬深かったように思う。今、この場で、実琴と新城の修羅場というのは非常に困る。だからなのか、新城もそこまでしなかったのかもしれない。
そして新城に続き、実琴も普通に挨拶をする。
「やはり、望さんの仕事場の方って、素晴らしい方が多いんですね。あー、もう! 新城先生にやられそうだわぁ……」
なんだか美里は新城にメロメロになってしまったのか、両頬を両手で包み、完全に乙女な視線で新城を見つめている。
やはり、世間的には新城のルックスはイケメンの部類に入るのだろう。
「だけど、実琴さんがいるってことは、新城先生と恋人さんなんでしょうね」
その美里の言葉に、新城は『フフフ』と笑いながら、
「お察しの通りですよ……美里さん……」
これまた女性の乙女心をくすぐるような言葉で美里に返すのだ。
とりあえず、俺はそこで軽く咳払いをして、
「あー、と……これから、どうしましょう?」
咳払いはしたものの、その後の言葉が出てこない俺。
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