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ー閃光ー86

 さすがにため息が出そうだった。  確かに新城たちには家に来てもらうようにしたのだけど、あからさまに二人でイチャイチャし始めたのだから、俺がため息をついてしまうのは当然のことだろう。  とりあえず、そんな二人を横目に、俺はイライラしながら自分の家へと向かう。  車を駐車場に止め、新城たちと一緒に、このマンションの三階にある自分の家へと向かう。ドアを鍵で開けると、なんだか今日は賑やかな気がするのは気のせいだろうか。  確か、家には雄介しかいないはずだ。  少なくとも、雄介がいると思うのだが、もう一人確実に誰かがいるような気がする。  俺は少し警戒しながら、部屋の奥へ進んで行った。すると、そこにいたのは―― 「……美里さん?!」 「あら〜……おかえりなさい。お邪魔してますよ」 「あ、こんばんは……えっと……?」  とりあえず、美里だということに安心したが、俺はどうも美里にまだ慣れていないせいか、言葉に詰まってしまった。 「えっと……望さんの反応からすると、『美里さんが俺たちの家に来てるんですか?』って感じですよねぇ?」 「え? あー……まぁ?」  俺は美里の言葉に思わず視線を逸らしてしまう。まさに美里の言う通りだったからだ。 「だって、さすがに私だって、雄ちゃんのことが気になるじゃない? 雄ちゃんは記憶喪失という立派な頭の病気なんですから、家事とか日常的に前のようにできるのか? って言われたら、分からなかったですしね。それに、昼間は記憶のない雄ちゃんが一人でいるのも危ないじゃない?」 「あ……」  そう言われて、俺は思わず納得してしまったかもしれない。  今日の俺は、朝出勤する際に雄介から逃げるようにして出て来たせいもあるが、美里には雄介のことを頼むのはどうかと思っていた。美里のお腹には今、俺たちの子供がいるのだから、無理をさせるわけにはいかない。 「ま、望さんが私にそう簡単に頼れないっていうのは、分かる気がしますけどね。だから私の方から動いたほうがいいかと思いまして……」 「あ……そうだったんですね。あ、ありがとうございます」  どうも俺は本当に美里と話すのが苦手だ。元々口下手なのに、さらに口ごもってしまう。 「それで、今日は望さんの後ろに素敵なお二人がいらっしゃると思うんですけど……お仕事関係の方ですか?」 「あー……あっ!」  美里との会話にテンパってしまい、すっかり新城のことを忘れていたのだ。

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