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ー閃光ー90

「あ、いや……何も……」  そこで美里の方は、俺を見てクスリとしていた。 「やっぱり、望さんって、雄ちゃんに聞いた通りの人なんですね……」  その美里の言葉に、俺は顔を真っ赤にさせる。 「あ、いや……あ、その……あー……」  なんでだか、美里の前では素直に話をすることができない。確かに俺は昔からそういう性格ではあったけど、今では雄介のおかげで直ってきたように思えた。だが、やはり雄介以外の他人には無理なのかもしれない。 「いいんですよ。もう、私の方は望さんのことを雄ちゃんからたくさん聞いているので、望さんがそういう性格だってことは知ってますからね。だけど、逆に望さんは私のことを知らないのかしら?」  その問いかけに、俺はますます言葉を出せなくなった。  今、美里が言った通りだ。  俺は雄介から美里のことを聞いたことはない。寧ろ、興味がないものに関しては聞かないタイプだ。だから今まで美里について聞かなかったのだ。  ここで聞くのがチャンスだと思い、美里に色々と聞こうと思ったけれど、俺の隣でご飯を食べている雄介が気になってしまった。  今日、俺が帰宅してから、一言も雄介とは会話をしていない。  確かに今日はこれだけ大人数がいるのだから、雄介にかまっている暇なんてなかったけれど。 「あ、あの……美里さん……昼間の雄介ってどうなんですか?何をしているんですか?」  どうしても雄介のことが気になってしまい、美里に尋ねた。 「そうねぇ……別に変わったことはしてないわよ。それに、昼間の雄ちゃんはずっとテレビを見てるわ。笑ったり、泣いたりしてね……。感情的な部分は記憶のある雄ちゃんと変わらないんじゃないかしら?」  俺が美里に聞きたかったのはまさにそれだった。美里はよく俺の言いたいことを汲み取ったものだと思う。 「あー……なるほどぉ……」  俺が納得していると、その会話に新城が入ってきた。 「そうなんですね。医者として、私も記憶喪失には興味があるので、吉良先生や美里さんからもっと詳しい話を伺いたいのですが、宜しいですか?」  そう言って、新城は俺たちがいるリビングテーブルに来て、空いている席に座った。 「でも、新城先生は外科医なんじゃないんですか?」  俺はつい、よくわからないツッコミをしてしまった。 「そういうのは関係ないですよ。それに、記憶喪失は誰でも興味を持つ話ですからね。分野が違っても気になることだと思いますよ……」

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