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ー閃光ー108

 それから俺たちは、俺の提案で、一旦新城たちが住んでいるマンションへ向かい、その後、俺の家に向かうことになった。  新城たちの家は俺には全く知らない場所だったが、新城たちの案内で向かうことになった。  新城が住んでいるマンションは病院から程近い。車で十分圏内といったところだろうか。しかも大通りに面していて、一直線で病院へ行ける場所にある。  俺はマンションの駐車場で、新城たちを普通に待っていた。  新城たちが家に向かって何分かした後、珍しく俺のスマホが鳴った。 「……へ?」  最近はあまり着信音を聞いていなかった俺のスマホ。しかも短く鳴っただけだから、メールだろう。  俺は車のシートに寄りかかりながら、リラックスした状態でメールを読み始める。  そのメールの内容を読んで、俺の表情がみるみる変わったのは言うまでもない。本当に珍しい人からのメールだったのだから。  それを読んで、俺は今すぐにでも帰宅したくなった。しかし、新城たちを駐車場で待っているので、さすがに黙って帰宅するわけにはいかない。  メールで新城に帰ると連絡しようかと思ったが、もしメールを打っている間に新城が駐車場に来てしまったら意味がない。もう少しで来る予定なら、待っていた方が早いかもしれない。それに、俺からすればメールは面倒だと思っているからかもしれない。そうだ、こういうことは直接本人に言った方が早いだろう。  高ぶる気持ちを抑えながら、俺は駐車場で今か今かと新城たちを待っていた。すると、やっとのことで駐車場に続くドアが開き、新城と実琴の姿が見えた。それを見て安堵しながら、俺は自分でも思えないような仕草をしていた。きっとそれだけ新城を待ち望んでいたのだろう。  俺は窓から新城の方へ手を振り、 「颯斗さーん! こっちです!」  と思わず大きな声で新城を呼んでしまった。それだけ今の俺は興奮していたのだ。しかもここはマンションの地下駐車場で、大きな声を出したら響いてしまうのに。  さすがの新城も、この俺がそんな大きな声で呼ぶとは思っていなかったのだろう。俺の元に来るとすぐに、 「どうしたんです? 望さんがそんなに興奮するようなことがあったんですか?」  と、にやにやしながら話しかけてきた。  顔を真っ赤にしながら、俺はさっきのメールの内容を新城に話し、 「ま、そういうことだからさ……今日は、もう、颯斗さんたちは俺たちの家に来なくても大丈夫ですよ」 「そういうことでしたら、分かりました……」  そう笑顔で承諾してくれたので、俺は一人で自分の家に戻ることにした。

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