「と、とりあえず、もう、仕事に行こうぜ」 　俺はその新城の言葉に動揺しながらも、新城の背中を押して家を出る。 　きっと昼間は何も言わずとも美里が来て、雄介のことを見てくれると思ったからかもしれない。 　地下にある駐車場でエンジンをかけ、俺たちの仕事場である病院へ向けてアクセルを踏む。 　俺は仕事が嫌いではない。むしろ、好きな方だ。 　かと言って、別に雄介のことが嫌いになったわけではない。記憶のない雄介は雄介であって雄介ではないのだから、あまり好きではないということだ。 　そして、俺はいつものように仕事を始める。 　今回ここに戻ってきてから、一緒に働いてくれている美潮は、本当に真面目すぎるくらい仕事をこなしてくれる。早さも和也並みのスピードだから許せるのだが、和也から見たら、性格が合わないのかプライベートで遊ぶということにはならない。それに、俺は雄介と結婚しているのだから、ただ遊ぶっていうことはしないのだろう。 　本当に俺は雄介のことが好きだ。仕事が終わったら、早く帰って雄介に会いたいという気持ちが勝ってしまう。それで遊ばないのかもしれない。 　そして、いつものように仕事を終えた。今日も新城たちが家に来るようだ。仕事が終わった後、新城と実琴は俺の仕事場にある部屋へ来ていた。俺の仕事が終わるまで、新城と実琴はソファに座って、何やらイチャイチャしているように見える。 　まあ、恋人同士だから仕方がないだろう。 　少し気になりながらも、俺は仕事を終わらせる。 「ふぅー、終わった！」 　そこで体を伸ばす。 「ふふ……仕事終わりました？ お疲れ様です」 　そう言って声をかけてきたのは新城だ。 「あ、ああ……お疲れ様です」 　どう答えていいかわからず、とりあえず同じ言葉を返す。 「では、帰りましょうか？」 　とは言ったものの、ふと考えがよぎった。新城たちはここ二日間、家に帰っていないのだから、同じ服を二日も三日も着るわけにはいかないだろうと思ったのだ。 「颯斗さんと実琴さん、一度家に帰ったほうがいいんじゃないでしょうか？」 　その言葉に、二人は視線を合わせるように見える。 　さすがに今の俺の言葉だけでは意味がわからなかったのだろう。 「あー、えっと……ですね……。お着替えを取りに一度自分の家に行ってから家に来るっていうのはどうでしょう？」 「あ！ そういうことですね！」 　新城は俺が言いたかったことがわかったようだ。