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ー閃光ー112

 そこはきっと二人と新城の状況を知っているからであろう。  そう、和也には昔『好きだ』と言っていた新城と美里には、こう紳士的な態度を取っていたのだから、美里からしてみたら新城はいい人でしかないのだ。  しかし、美里は本当に何か強そうなイメージがある。  あの和也だって、美里にはヘコヘコしているのだから。 「とりあえず、ご飯できましたよ……」  そう言って優しく声をかけてくる美里。 「あ! そうだ! 琉斗も呼んでもいいかしら?」  そう言いながら手を叩く。 「え? あ、いいですよ……僕たちの方は全然構いませんからね……」  俺は美里の言葉にそう答える。 「ありがとうございます」  そう美里が礼を言うと、俺は、 「だって、昨日だって琉斗君がいなくて、大丈夫かなぁ? って思っていたくらいですからね。むしろ、美里さんが作った料理を食べさせるなら、ぜひ琉斗君をこちらに呼んでくださいね」 「ありがとうございます。では、早速そうさせてもらいますね」  そう言って美里は琉斗にメールを送ったようだ。  すると、数分もしないうちに家のチャイムが鳴る。  俺が出て、部屋へと琉斗を連れてくる。 「お邪魔しまーす」  美里の教育がしっかり行き届いているのか、琉斗は丁寧に挨拶をして家に入ってきた。  俺は、 「どうぞ……」  と言って、琉斗を部屋の中へと通す。  部屋の奥へ入ってきた琉斗は、まず大勢の人数に驚いたようだ。目を見開いている。 「琉斗、来てくれたのね。今日は望さんに許可を頂いて、みんなでここでご飯を食べましょうってなったの」 「あ、うん……そうだったんだね。それより、この人たちは?」  琉斗からしてみれば、知らない人物が多く感じられたのかもしれない。いや、和也と裕実に関しては知っているかもしれないが、あまりの人数の多さに圧倒されて、思い出せなかったのだろう。 「あー、俺から紹介した方がいいかな?」  俺は優しく言う。 「とりあえず、和也と裕実は覚えてるだろ?」  そう言って、琉斗が覚えていそうな和也と裕実を指差す。 「あー、えーと……」  琉斗はきっと頭の奥底にある記憶を思い出そうとしているのだろう。唸りながらも頭を抱えている。 「あ! そうだ! 思い出しました! 和也さんと裕実さんですね! 幼稚園の時に、お母さんが入院していて、その時に望さんや雄介叔父さんと一緒にいた人だ!」 「そうそう、そういうこと!」  琉斗が和也や裕実のことを思い出してくれたことで、俺はほっとする。

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