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ー閃光ー130
そんな雄介に俺は一瞬心臓をドキリとさせたものの、さっきの裕実の言葉を思い出し、平常心へと戻す。
「お風呂、ありがとうございました……」
そこに違和感を覚えながらも、
「あ、ああ……」
と答える俺。
しかし雄介は前までお風呂が大好きで、お風呂は浸からないと入った気がしないと言っていたのだが、記憶の無い雄介の場合、特にそう言ったこだわりみたいなのは無いのであろう。
今お風呂に入っていた時間というのは十分くらいなのだから、確実にシャワーのみで入ったと思えるからだ。
「じゃあ、俺入って来るな……」
「ああ……」
そう言って答えてくれたのは和也で、挙句、俺に向けて手を振って来てくれる。
本当に和也の存在って、俺の心をホッとさせてくれる人物の一人だ。
そこに軽く笑顔を向け、俺はお風呂場へと向かうのだ。
しかし一人でお風呂に入るのは、本当に何年振りなんだろうか。
確かに雄介が記憶喪失になってからは、お風呂には一人で入って来たものの、今更ながらにそう思う。
今のお風呂場は、一軒家の時に比べたら、気持ちばかり狭い。
だけど雄介と入っていた時に比べたら、やはり広く感じてしまう。
一人いないだけでもこれだけスペースがあるとは思っていなかった。
そしてお風呂に入って思い出すのは、雄介は必ずシャワーの元の位置にさせてくれることだ。 それは冬でも夏でもそうだった。 雄介がシャワーでお湯を浴びるのは、流す時だけ。 それだけ雄介は俺に気を使ってくれる人物だったということだろう。
それに何回かここで抱かれたこともある。
何かとお風呂場の方が楽だったいうのもあるからなのかもしれない。
それを考えてしまって、今日の俺は急に体が疼き始める。
確かに俺の場合には学生の頃から毎日が忙しすぎて、そういう行為に関してかなり疎かった筈だったのだけど、雄介と出会ってからの俺というのは、雄介にそういう行為について教えてもらってしまっている体だからこそ、急に体が疼いてしまったりしてしまうっていうことだろう。
それに男性の場合には、いつまで経ってもそういうことに関しては欲というのはあるのだから。
それに人間だけが、そういう行為に関して体が気持ち良くなることが出来るのだ。
それを知ってしまった体は急にスイッチが入ってしまう。 だけど俺の体っていうのは、ある意味一番最初に二人でヤることを覚えてしまったのだから、きっと一人ではイくことが出来ないだろう。 だけども、今日の俺の体っていうのは、体の奥底にあるところが疼いてしまっている状態だ。
よくよく考えてみたら、雄介と暫く体を重ねていなかったのかもしれない。
しかし今更ながらに俺の体っていうのは、急に疼いてしまうのだから困ったもんだ。
しかも今日はみんなが居る。
それに俺の場合のは、多分、一人ではイけないだろう。
本当に悩むところだ。
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