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ー閃光ー129
「まぁな……確かに、俺もそれは思うよ……。だから疲れるっていうのかなぁ?」
そう口にしながら俺は天井へと視線を向ける。要は簡単に言うと、現実逃避したい気分で明後日の方向に視線を向けてしまっていた。
正直、今の雄介には疲れてきている。だけど、前に雄介も俺が記憶喪失になった時、俺が全くの別人になったことがあって、今の俺と同じ状況になったのだから、そこは仕方がないだろう。
本当にこれから先、いつ雄介の記憶が戻るのかは分からない。上手くすれば明日にでも戻るのかもしれないし、もしかしたらこの先も永遠に戻らないのかもしれない。
もう、そこにはため息しか出てこないのだから。
そうやって俺が頭を抱えていると、
「でも、雄介さんは元気そうなので、安心しました……」
そう笑顔で言ってくれる裕実。
その裕実の発言に俺は裕実の方へと視線を向ける。そして、
「……へ? なんでだ?」
と問うてしまった。
「だって、最悪の場合、雄介さんはこの世にいなかったかもしれなかったと思うんですよね……。だって、海の中で漂っていて、その時にも助かってますし、その影響で頭が痛くなってしまっていても、血栓とかそういう病気ではなくて、一生寝たきりになることはなかった訳ですから……」
「あ……」
その裕実の言葉に、俺は思わず納得してしまったからか、気付いた時には、自然とそう言ってしまっていた。
確かに裕実の言う通り、雄介は記憶喪失にはなっているが、この場にいる。それに、大きな病気ではなく、記憶喪失というのは、必ずいつか治るかもしれないのだから。
そう思うだけで、何だか今まで憂鬱だったことが、急に心が軽くなったように思える。
きっと表情にも現れてしまっていたのだろう。
急に俺の視界には、和也のニヤけたような表情が入ってきたのだから。そして、
「……だな。やっぱ、この世にいないよりは、記憶は失っているものの、近くにいるんだから、それはそれでいいんじゃねぇのか?」
和也も裕実の意見に賛同しているようだ。
俺もゆっくりとだが、笑顔になった。
これから、今の雄介と一緒に人生を歩んでいけばいいと思う。そして、記憶が戻った時にも、また一緒に人生を歩んでいけばいいと思ったからだ。
きっと裕実がこう言ってくれなかったら、毎日がずっと憂鬱だったかもしれない。だが、裕実のおかげで、気持ちが軽くなったように思える。
本当に俺の周りにはいい友達が集まっているように思えるのだ。
そんな時、どうやら雄介がお風呂から上がってくる。
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