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ある朝の風景
カーテン越しに感じる朝日、全身を優しく包むタオルケットを肌に直接感じながら、まだ覚醒しきらない頭で微睡に身を任せる。
軽く寝返りを打てば、腰に気怠い昨晩の余韻を感じた。
これは自分にとって最高の目覚めだ。
リビングの方からは食器がぶつかるような音が聞こえ、ふとセミダブルのベッドが広く感じられる。もう一人寝られる広さはある余白へ腕を伸ばすと、シーツの冷たさだけ感じられた。
昨晩俺の家に泊まった恋人はもうすでに起きているようだ。
自分も起き上がり、タオルケットを肩から覆った格好でリビングへと向かえば、香ばしいコーヒーの香りが鼻腔をくすぐった。
「ショウヘイさん、起きた?」
気配で気付いたのか、俺の可愛い歳下の恋人はキッチンから顔だけこちらに向けて、優しく微笑んだ。
「良い香りがする」
「うん、コーヒー淹れておいたよ。ミルクいれる?」
「いや、いらない」
リビングのソファに腰掛けると、マグカップをふたつ持った恋人…ハルキが俺の隣に座った。
ほかほかと柔らかい湯気がたつカップを受け取り、コーヒーの香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
しつこくない苦味と鼻から抜ける香りにほっと安心感を覚える。
「あ、ショウヘイさん、パンツだけじゃ風邪ひくよ? 服着ないと」
ハルキがタオルケットをかけ直しながら、首元に軽く触れた。
「……また痕、付けちゃった」
「やめろって言っても付けるだろ」
ハルキはへへっと照れたように笑って、コーヒーをすすった。
ふと昨晩の行為を思い出す。今隣で穏やかに笑うハルキからは想像つかないほど情熱的な夜に、本当に同一人物だろうかと確認したいような、首元に痕を付けられた仕返しをしたいような気持ちになる。
「……俺も痕付けてやろうか?」
「ショウヘイさんが付けたいなら、いくらでも」
こちらに向けられた視線は優しくも挑戦的で、ゆらりと火が灯ったように熱を帯びた。仕返しならいつでも、いくらでもどうぞというような余裕が感じられる。
マグカップをテーブルに置いてハルキの首元に唇を寄せる。チュッと音を立ててキスをして、ねっとり舐めてやれば、どちらともなく体温が上がるのを感じた。俺がどのようにすればこの男の気が引けるのか、そんなのもう分かりきっている。
「……起きたら一人だった」
「寂しかった?」
「…今日、大学休みだろ」
「うん、そうだよ」
俺はハルキの耳元にキスをしながら膝の上に跨るように移動した。窓から注ぐ朝日から、自分たちだけを隠すようにタオルケットで二人を覆う。
「今日はどこかにお出かけする?」
「んんー…」
俺ははっきりと返事をしなかった。2人で過ごす休日ならどこだっていい。
ハルキの唇にゆっくりとキスを落として、感触を楽しむように食んで。ハルキの舌が追いかけてきたら逃れるように唇を離すと、物足りなさそうな視線がぶつかった。
「お出かけはお前の加減次第かな」
フッと笑ったハルキの手は熱を帯びて、俺の肌の上を探りながら這うように移動する感覚にぞくぞくと欲が沸き上がった。
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