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ムーンライズ 5
ソファに体を投げ出して天を仰ぐと、天井が目に入った。やっぱり倉庫を改築して作ったんだろう。高くて、鉄骨の張りが剥き出しになっていて。工場の天井とすごく似ている。
ストーブで温まっていると、不意に思い出した。工場の庭でドラム缶で焚き火をした、あの暖かさ。その当時働いていた事務のミサちゃんと、そこにアルミホイルで巻いたさつまいもを入れて、焼き芋にして食べた事。
もう、3年も前のことなのに。
どうしてそんな何でもない事が思い出されるのか。ミサちゃんはずっと前に寿退社したから、もう2年以上会っていないのに。
ああ、寂しい。辛い。
俺、大丈夫なんだろうか。
押し寄せる眠気に抗おうと、姿勢を正して座り直す。そろそろ、帰るべきだ。
その時、さっきのコーヒーフロートのイラストの奥に、ちらりと見えた文字に釘付けになった。
反射的にガバッと体を起こしてメニューの奥に立てかけてある小さなカードを手に取った。
「昼スタッフ募集中。仕入れ、清掃、その他。住み込み可」
住み込み可。その言葉から目が離せない。
店をぐるりと見回す。俺には似合わないお洒落な雰囲気だけど。お客さんの話し声や笑い声がさざめく。幸せで暖かな空間。
ここに入って来ておよそ1時間だけれど。
丁度そばでテーブルを片付けていたお兄さんに、カードを持ってつかつかと歩み寄ると、何の躊躇いもなく声を掛けていた。
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