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第1話
「なぁ、龍」
「わぁービックリした。いきなり声を掛けるな」
脱衣所を覗くと洗濯機の前にちょこんと座り、光希が着ていた服や下着の匂いを一つずつ嗅ぎながら洗濯機の中に入れる龍の姿があった。
光希も俺も何度か止めるように言ったが、龍から楽しみを取り上げるのも可哀想と早々に諦めた。
「なぁ、龍。最近どうも光希の様子がおかしいと思わないか?」
「そうか?気のせいじゃないか?」
「浮気でもしているんじゃないかって」
「マイハニーに限ってそんなことある訳ないだろう。う~~ん、いい匂い」
満面の笑みで使用済みの下着にスリスリする龍。
我が弟とは思いたくない行動にもはやため息しか出ない。
「昨夜もその前もだろう。龍が光希が嫌だって言うのにしつこくするから」
「は?俺のせいかよ。それを言うなら兄貴だって。わざと意地悪をして、いつも泣かせている癖に」
「また喧嘩をしているのか。相変わらず仲がいいな」
裕貴が姿を現した。
最近妙に機嫌がいい。
今の今まで鼻歌なんて一度も歌ったことがないのに。鼻歌を口ずさみ、るんるんしている。
もしや、恋人でも出来たか?
「またやってんのか。本当に好きだよな」
裕貴は龍を見て呆れ顔になった。
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