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第92話
闇の底でセックスをした。
絡みつく闇がお互いを溶かしあうようだった・・・
ミサキはあの後、家に連れ戻された。
そしてアキラは黙ったままミサキを見つめていた。
直ぐにでもベッドに引きずり込まれ、自分がミサキを所有しているのだと教え込まれるのだと思っていたから驚いた。
暗い、電気も付けないまま、ミサキが自分が住むために自分で買ったマンションのリビングで、アキラはミサキをソファに座らせたまま、その手を握り自分は床に跪いていた。
暗闇の中に家電や時計のデジタル表示が光る。
窓の外からの灯りが差し込む。
その微かな光にアキラの目が金色に光る。
アキラは何も言わない。
ただ、苦痛に満ちた目でミサキを見つめるだけだ
その目が気にいらなかった。
なんだその目は。
ミサキがシンのベータを誑かそうとしたのは分かっているだろう。
シンとミサキの間に起こったことから、ミサキがあのベータとシンを引き裂いてやりたいと思ったのも分かっているだろう。
それをアキラが許さないのはわかる。
アルファは独占欲の塊だからだ。
だが。
なら、分からせるようにレイプしたら良いじゃないか。
あの日ミサキをそうしたように。
「お前は・・・そんなことをするヤツじゃない・・・」
アキラがやっと絞りだすように言った言葉にミサキは目見張った。
はぁ?
何を?
「そんな・・・そんな・・・そんなはずじゃなかったはずだ」
アキラは苦しげに言う。
何を言ってる?
アキラ?
ミサキは驚いてしまう。
予想が違った。
嫉妬に駆られたアキラにぐちゃぐちゃにされるのも折り込み済だった。
むしろミサキの身体はそれを期待してるし、ミサキもそれをもう諦めて受け入れてる。
なのに、アキラが何か奇妙なことを言い始めた。
「俺もシンもクズだ。お前に何回殺されても仕方ない。・・・でも、お前は、お前は・・・そういうヤツじゃないだろ・・・俺の俺のせいか・・・」
アキラは泣いていた。
ミサキは驚く。
アキラがミサキの前で泣いたことなどなかったからだ。
それと同時にミサキは怒りで白くなる。
あまりの怒りに血の気が引いたのだ。
アキラは。
アキラは。
ミサキを哀れんでいるのだ。
それが分かったからだ。
ミサキはベータの心を引き裂いて楽しんだ。
ミサキにしてみれば、あのベータにも罪が無いなんて言えないからだ。
でもアキラは。
本来のミサキはそんなことをしないはずだと言う。
それはシンやアキラと同じクズのすることだと言う。
お前が言うか!!
お前がそれを言うか!!
ミサキは拳を握りしめ、思い切りアキラの顔面に叩き込んだ。
ベータなら頭蓋骨を折るそれを、アキラは避けようともせず受けて、少し顔を歪めただけだった。
「お前は何も悪くない・・・俺が・・・俺が・・・」
アキラは泣きながら言うのが気に触り、ミサキはめちゃくちゃに殴りつけた。
そんなの何の意味もないのに。
殴り続け息が切れたミサキを、やっとアキラが抱き上げた。
無理やり犯された方がマシだった。
だって、アキラは殴りながら、ミサキが興奮していたのを知っている。
孔を濡らし、そこを疼かせていたのも。
「殺してやる!!お前なんか大嫌いだ!!」
そう叫びながら、のしかかってくるアキラの腕に噛み付く癖に、ゆっくり入ってくることを腰を揺らして喜んでいる。
「愛してる・・・愛してるんだ・・・だから殺されてやれない・・・殺されてやれないんだ」
アキラの声は悲痛だった。
金色の目が光る。
暗闇の中で。
喰らいあうようなセックスが始まる。
「お前は・・・お前は俺たちとは違う・・・違うんだ」
アキラの言葉に怒り、でも、その意味をミサキは考えようとは・・・しなかった。
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