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第1話 ありえない状況って信じたくないものだよな

『一夜の過ち』という言葉がある。 日暮れから翌朝までの間に、何らかの間違いを起こす事だ。大体の場合として恋人や夫婦間でないもの達が何らかのはずみで一線を越えてしまう事を指す場合がほとんだ ところでどうでもいい事だがこの言葉は昼の場合はどうなるんだろうか? 『一夜の過ち』じゃなく『一昼の過ち』だろうか…いやなんか語呂が悪いな。 まぁ、正直なところ俺としては事はどうでもいいんだ。んで、なんでそんなどうでもいい事を考えてるのかって言うとその理由は俺が当事者だからだな。まぁ、ここまでの流れで大体察するよな 現実逃避をしていた遠い目を憂鬱な気持ちを抑えて何とか引き戻す。そして俺はどうでもいい思考をする事になった元凶をもう一度見る為に首を横に向ける。 「すぅ……すぅ……んぅ~…」  そこにはサラサラとした茶髪に、耳にはその髪色に似合う金色のピアスがある。きりっとした形のいいまつ毛。そして高い鼻の整った顔を持つ俺の友人である同い年の少し軽そうな少年#篝__かがり__##響__きょう__#が俺と一緒に布団をかけて同じベッドですやすやと気持ちよさそうに眠っている  そう、同じベッドだ。しかもなんか俺たち抱き合ってるんだが。目覚めた時にいつもと違う光景に、自分の知らない部屋。おまけにいやおまけにしていいのか怪しいんどけどな。ともかくラストに隣に自分以外の人間がいた事に気づいても声を出さなかった俺はしょうもないけど自画自賛してもバチは当たらないと思うんだよな。まぁ、面倒くさいからどうでもいいんだが。 「はぁ………」  つい、ため息が口から出てしまう。  ………あーやばい。あまりの事態につい現実逃避をしちまったな。さっきやめたばかりだったのに。いい加減考えた方がいいよな  俺は自分の服装を確認する事にする。実は視界の端に映る服の肩の部分が俺の記憶にある範囲で着ていた服の色と違うんだ。 見間違いであってほしいと思い、自分の服装を見る為に布団の中の自分の体が見えるように腕を少し上げて、視線をそこに向ける。 「ですよね~」 思わず俺の口からは間抜けな声が漏れてしまった。まぁ、案の定と言うかなんというか。見間違いでもなんでもなく、今俺が着ている服は記憶にあるものと違う服だった。この状況に全身から嫌な汗が出る夏という季節も合わさって気持ち悪い  ズキっ おーい、おいおい。なんか体を動かしたら事にちょっと体が痛んだが。特に腰の辺りに違和感がある。おかしいな俺が覚えてる限りこんな事はなかったはずなのにまさかこの歳で腰痛持ちになったのか?それは勘弁してほしいな …………はぁ、現実逃避をしても何か変わる訳はないよな。多分そういう事だよな 「……んっ、うぅん…」 俺が布団を少し持ち上げて風が入って冷えたからか声を出す。 「ふわぁ~、あっおはよう」 そしてそのまま目覚める響。この状況に特に何か取り乱す事もなく、普通に目覚めの挨拶をする響。 普通に声をかけるってことは多分何もなかったんだよな?というか頼むそうであってくれ!きっと俺の服装が変わっていたり、体に痛みがあったのは偶然、別の何かがあっただけよな! 「あっ、よく眠れたか?喉とか体痛まないか?駆、初めての体験だったらしいのに結構無理させちゃっからな。ちゃんと気持ちよかったか?」 ………ふぅー、落ち着け、俺。まだ大丈夫だ。まだ何か明確な台詞が出た訳じゃない。そうだ。こういうのは確認が大事なんだ 「なぁ、響俺記憶がないんだけど何があったんだ?」 頼む。俺が望んでる答えを言ってくれ。俺の思い違いだったから大丈夫だって安心させてくれ 「え、そうなのか?駆自分の初めてもらってくれって俺ににキスしてきたんだよ。」 ……は?えっ、嘘だろ。あまりの衝撃に俺は一瞬思考が停止してしまう。それはつまり俺から迫ったって事なのか? 「それで準備に必要な道具が偶々あったから風呂場で一緒に準備してからベッドで初体験をしたんだ」 俺は響が言った言葉を受け止めきれずに視線を無意識に彷徨わせる。そしてたまたま視界に入った窓から見えた空はまだ青い空だった。 ………本当に一夜の過ちって昼間の場合なんて言うんだろうな。 普通ありえないだろ。俺なんの記憶もないんだが。てかそれだけでもおかしいのに、なんで準備をする道具があるんだよ!?てか俺から迫ったって事は俺がゲイだって事もバレてるんだろうな なんだよこれ。信じたくねぇ。これマジだったら厄日じゃねぇか。あぁ、面倒くせぇ。今日あった事なかった事にできねぇかな

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