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おわり
少年はそれほど長く警察に拘束されなかった。
少年は何もこたえなかったけれど、泣きつづけていたし、少年の身体には何ものかの精液が注ぎ込まれていたのが身体検査ですぐに分かった。
それが人間のものでもないことも。
びしょ濡れの室内で溺れ死んだ年老いたメイド。
部屋は天井まで濡れていたあとがあった。
だが水の出どころは室内のトイレくらいしかない。
しかも部屋のドアは外から塞がれていたのだ。
何かに食い殺された富豪の男の死体。
男の身体やベッドに付着していた男以外の精液は、やはり人間のものではなく、おそらく少年の内部にあったものと同じかと思われた。
屋敷に閉じ込められていたという脚の不自由な少年の正体は分からなかったし、その行方も分からなかった。
少年は何も話さず泣き続けた。
誰もがショックなことがあったのだ、と思った。
それが単なる失恋だからだとは。
誰にも分からなかった。
事件は迷宮入りとなった。
少年は被害者として扱われた。
両親は少年を連れて村を出た。
息子の傷を癒そうと。
そして。
海辺の村へと移り住んだ。
息子が海ばかり恋しがったからだ。
少年は海のある村に来てから元気になった。
両親も安心した。
どんな事が息子に起こったのだとしても。
それはもう、終わったのだと。
息子が海へ入り浸るのを止めることは出来なかったけれど、息子は漁師達と仲良くなり、それを仕事にしようとしているのだから良いかと思うようにした。
少年は。
毎日海へと向かう。
漁師達からは「海に愛されている」と言われている。
迷信深い漁師達は少年を大切にした。
彼らは仲間以外では語らない物語を共有している。
海が人間を選ぶことがある。
その人間といれば、漁師達はどんな荒れた海からも帰ってこれるのだ。
漁師達は少年が何なのか知っている。
それは。
海に愛されている者だ。
漁師達は、大人になった少年と海へ出るのを心待ちにしている。
少年さえいれば、海はもう恐るべき対象ではなく、慈愛の海でしかなくなるからだ。
だから。
漁師達は秘密を守る。
少年が小舟を漕いでいく先で何をしているのかを知ってはいても。
沖の小さな小島。
少年はそこで恋人に会う。
恋人は美しい。
出会った頃より美しく、大きくなっていた。
少女のようだった姿は、美しい青年に近づいている。
人魚は人間より成長が早いのだと知る。
でも男でも女でもない妖しさも恋人にはある。
恋人は少年を愛してくれる。
もっと大きくなったペニスで少年の後ろを穿ち、少年を蕩けさせる。
少年の芯が無くなるまで突き上げ、ふにゃふにゃになった身体に甘く注ぎ込んでくれる。
身体の全ては恋人に可愛がれるためにあり、少年の乳首はもう、恋人がしゃぶり噛むためにある。
そうされて、少年は何度も何度もイクのだ。
それに。
恋人の気が向けば。
本当に気がむけば。
少年のペニスを恋人の中に挿れさせてもくれる。
恋人の女の部分も少年は好きだ。
その穴に締め付けられ、絞りとられ、情けないほど声を上げてしまうのだとしても。
恋人の中に出すのも好きだ。
恋人が自分だけのモノだと思えて。
だけど。
恋人に中を穿たれるのが一番好きだった。
恋人だってそう。
飽きることなく愛してくれる。
恋人と離れることはない。
そう、知っている。
人魚は生涯ただ一人を愛する生き物だから。
「お前はいつか海へと行く。みんなそうだ。海に愛された人間はやがて身体が変わって地上では暮らせなくなる。何十年もかかるがな。それまで、そして、海へかえってからもお前は俺たちを護る者になってくれ」
漁師達は少年に言った。
海を知る漁師達は、多くのことを知っている。
彼らは少年という守護者を手に入れたのだと分かっている。
少年は。
いつか海へかえるまで。
彼らを守り、海へ帰っても、彼らを守るだろう。
だから、少年の秘密は、彼らによって守られる。
今日も、恋人が海から上がってきた。
少年は腕を伸ばす。
だきかかえられ、着ていた服を脱がされる。
恋人の目は失った舌より多くを語る。
だから少年はそれが嬉しくてたまらない。
「うん。オレも愛してる」
少年は恋人の目に返事をした。
おわり
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