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第1話①
逃げられなかった。
借金取りからメッセージが来てしまった。
「ホテルに20時俺1人で来るように
誰にも言うな」
相変わらず絵文字がない冷たい文章だ。
行きたくない。今回の案件はいつもと違う。
体を売らないければならない。
お金を工面する方法は他にもあるから断れば良いが親父の借りどころが悪い。断ると何をされるか分からない。俺は送られてきたメッセージに目を通すと「はい」と送ってしまった。
本番は無しらしいけど内容が不透明すぎる。
そんな怪しい仕事を引き受けないといけない自分が嫌になってシャワーだけ済ませると下町の雑音を消すように布団に丸まって眠りについた。
手配されたタクシーから降りると噴水が湧き上がる城のような星が4つ付くぐらいの立派な洋風のホテルが目の前に聳えたっていた。
俺は足元には大理石が広がり、真上には豪華なシャンデリアに圧倒されながら待ち合わせ場所のラウンジに向かった。
まだ到着してないようなのでドリンクを飲んで心を落ち着かせようとした。
運ばれてきたオレンジジュースのグラス縁にカットされたオレンジがのっていた。
俺はオレンジを食べるか食べないのかくだらない事を考えながら気を紛らした。
手入れされ薔薇が咲き誇る中庭を眺めていた。
「青長くん」
今回のお客さんが到着した。
4.50代くらいだろうか。俺より少し背の高い紳士で借金取り達とは違って清潔感があった。
一言二言挨拶を交わし世間話が弾み気がつけば客室にいた。
大きな窓からみる夜の街は騒がしかった。
「おじさんの事も見て欲しいな」
背後から声がして肩がビクッと震える
「すみません あの緊張してしまってて俺」
「大丈夫だよ。痛いことはしないからさ。まずは君の体を教えて欲しいな」
予想よりも紳士的なおじさんが着て安心していたが俺は体を売りにきたのだ。
これからいかがわしい事をされるのだ。
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