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04
カーテンから差し込む日差しが眩しくてうっすらと目を開ける。
すると、目の前にぼんやりと朝日の顔が見えるのだ。ぼやけた意識の中でどんどん目が冴えていき、朝日の顔がだんだんはっきりと見えてきた。
目が合った瞬間、唇に柔らかいものが当たり、目の前に朝日の顔があった。
「っん、」
「おはよ、咲良」
するとぎゅうっと抱き締められ、俺の肩に顔をぐりぐりと押し付けられるのだ。
甘えている朝日は可愛い。わしゃわしゃと朝日の頭を撫でていると、再び瞼が重くなってくるのだ。撫でていた俺の手が止まったからか、朝日は肩に埋めていた顔をぱっと上げると、再びキスを落としてくる。
「ん、・・・・・あれ、俺、寝てた?」
「ああ。早く起きないと食堂閉まるぞ」
「んー・・・、起きる。一旦部屋戻って着替えてくるから待ってて」
「分かった」
この学園は全寮制だ。さすが金持ちな学園なだけあって、一人一部屋与えられているのだ。
俺は朝日と付き合ってからほとんど朝日の部屋に転がり込んで生活をしている。自分の部屋に戻るのは着替えや何か物を取りに行ったりする時だけだ。
急いで自分の部屋に戻り、身支度を整え、朝日と合流して食堂に向かった。
***
「咲良、空いてるみたいだしあそこ座るか」
「ああ」
定食が乗ったトレーを、空いてるテーブルに朝日と向かい合う形で置いた。
俺達が付き合っているのは俺達二人だけの秘密だ。
なんでも朝日は周りにバレるのは恥ずかしいらしい。だから俺達が付き合ってるとは分からない他の奴らは、俺らが2人でいる時も平気で話しかけてくるのだ。
「あの、咲良くん。朝日くんといるところ悪いんだけど、一緒に食べてもいい?」
トレーを持った恐らく同学年の奴が、俺達がテーブルに着いたと同時に声を掛けてきた。後ろにもう一人いる様だ。
こんなのも日常茶飯事で特に珍しいことでもない。が、たまには俺だって朝日と二人で食べたいのだ。
「あー・・」
ちらっと朝日を見ると、
「いいんじゃね?他のテーブルも埋まりかけてるっぽいし」
「朝日がそう言うなら、」とぼそっと呟くと、
「いいよ」
と二人に声をかけた。喜んでいる様子な二人は、俺の隣に二人並んで席に着いた。
内心面倒だと思いつつも、二人が結構話かけてくるので流しながらも適当に相づちを打った。こんなんで何が楽しいのかと思いつつ適当に対応していると、いつの間にか定食をほぼ食べ終わっていて、朝日と、同席している二人もほぼ食べ終わっている様だった。
最後に連絡先を聞かれたが、スマホを部屋に忘れたと嘘を付いた。
そして二人は連絡先を交換できなかったのに嬉々として空になったトレーを持ち、
「また一緒に食べようね」
とだけ言って食堂を後にした。
俺に一度話かけて来た奴は、俺と会話をするのがつまらなかったのか理想と違かったのか二度話しかけてくることはない。連絡先を交換したところで無意味だ。だから絶対に連絡先を交換することはないし、そもそも朝日さえいれば他の奴はいらない。
すると2人きりになったテーブルで、なぜか朝日が席を立ったと思えば、二人がいなくなって空いた俺の隣の席に着いたのだ。
「え、何、朝日」
「なあ、咲良。昨日話したことなんだけど」
「昨日話したこと」で、何の話しかすぐに察しがついた。まさかまだ止めるつもりなのかと、
「なんだよ」
と少し不機嫌に返事をしてしまった。
「本当に、やるのか?」
「もう決めたことだ」
「そうか、・・・」
「朝日の為は朝日の為だけど、元々生徒会のやり方には気に食わなかったんだよ。大丈夫、上手くやるから心配するなって。朝日は部屋で待ってろよ」
「・・分かった。そこまで言うなら、咲良を信じる」
「ん、ありがとう、朝日」
ーーある日の午前1時。
こっそり手に入れた鍵を開け、裏口から静かに入る。生徒会室がある階に、事前に頭に叩き込んでおいた警備が薄いルートで向かう。
深夜の学校はなんだか空気が澄んでいて、なんとも薄気味悪かった。さっさと済ませようと足早に歩く。
事前に調べていた時よりも警備が手薄だったのが幸いして、案外時間がかからずに生徒会室に着いた。中に入ると奥に大きい机があり、そこに書類が束になって積み重ねられていた。
本当は生徒会室をめちゃくちゃにする気でいたが、それだとすぐに犯人探しが始まってしまう。地味だが、重要そうな書類を盗むくらいならおそらく盗まれたと気付かれるのに時間がかかり、犯人探しをする頃には足は付かないだろう。
パッと見大事そうな書類を手当り次第手に取った。
これくらいでいいだろう、と書類を小脇に抱え、生徒会室の扉に手をかける。ドアノブを回し、扉を引こうとした時だった。
ーーガチャ
俺が扉を引く力より強い力で押し返されたのだ。
ーーつまり、こんな時間に、向こう側から生徒会室に入って来る奴がいる、ということだ。
ドアの向こうからも「ん?」と声が聞こえる。当たり前だが、こんな時間に中に人がいるとは到底思わないだろう。
押し返された反動で尻もちを付き、手にしていた書類を床にばらまいてしまう。
「・・・あ、」
床に散った書類に一瞬目をやると、それらを俺ごとすっぽりと目の前の人物の影が覆うのだ。
顔を上げると、こちらを見下ろしていた目の前の人物は、屈んできたと思えば俺に目線を合わせてくるのだ。
「子ネズミちゃんはっけーん」
その人物は俺と目を合わせるやいなや、にこーっとなんとも陽気に微笑んでくるのだ。
薄暗い中見える相手の笑顔を前に、これから俺はどうなってしまうのだろうと、早くなる心臓を服の上からぐっと抑えた。
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