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「・・兄さん、あんな形になっちゃって本当に最低だけど、あの時の兄さんが忘れられないんだ。俺、やっぱり兄さんのことがーーー・・い"ッッ」  弥生が言い切る前に結城が弥生の頭を叩くと、 「おい!」 と、弥生は隣にいる結城を睨んだ。 「さっき打たれた分の仕返しだから。それと、お前の兄さんはお前のこと弟としか思ってないから諦めろ」  すると弥生は俯いたと思えばわなわなと肩を震わせるのだ。 「・・弥生、ごめんな?」 机に手を付き、俯いている弥生の顔を覗き込むと、弥生は一瞬肩をぴくっと震わせるのだ。 そういうとこだよ、とぼそっと呟いたかと思えば、 「いいよ、分かってたことだから」 と、少し悲しそうにこちらに笑って見せた。  そしてふと結城を見ると、頬に殴られた様な跡があった。  喧嘩でもしたのかとじっとその傷を見つめていると、結城がその視線に気付いた様で、ん?と軽く首を傾げるのだ。 「・・ああ、この傷ですか?弥生にやられました。これで、あの時のこと許してくれるみたいです。俺、結構酷いことしたのに甘いですよね、弥生。・・・誰に似たんだか」  結城が頬の傷に指を当てながらちらっとこちらを見る仕草に、思わずドキッとしてしまう  そんな俺の様子を見た類は口を開くのだ。 「ねえ咲良ちゃん。そんなに心配しなくても手ぇ出すなって那智に言われてんだからなんもしないよ」 「そもそも"俺は"那智に頼まれて咲良ちゃんヤっただけなんだからさあ」  すると類は隣にいる二人をチラッと見るのだ。 「あーはいはい。俺のは完全に咲良先輩からかってやりましたよ。どーもすいませんでした」  全く反省していない様子の結城に、弥生はまたも頭をべしっと叩くのだ。  それよりも、前から疑問に思っていたことがあった。 「あの、その、那智先輩に頼まれてってどういうことですか?前も類先輩、俺に無理やりしたのは本意じゃないとか言ってましたけど」 「・・あー、」  類はちらっと扉の方を見ると、 「那智には聞いたって絶対言っちゃだめだかんね」 と、声のトーンを少し下げるのだ。 「ま、もう分かってると思うけど俺達はみんな、咲良ちゃんのことが好きなんだよね。俺達が咲良ちゃんを好きな気持ちを、那智に利用されたって感じなんだよ」  えっと、つまりどういうことなんだろうか。  那智は、類とかが俺を好きなことを分かっていて、その気持ちを利用して、生徒会室に侵入した俺を類に襲わせたってことか?  ・・・というか、待て。今、"全員"俺のことが好きって言ったか。 「いや、俺はこの間生徒会に入ったばっかだし、好きじゃありませんけど?」  すると結城の発言には?と類が首を傾げるのだ。 「何言ってんの・・?弥生くんいなくなった保健室であんなに甘々セックーーっんぐ・・ッ」 「・・アンタ、それ以上言うとしばきますよ」  顔を真っ赤にした結城は、窒息しそうな勢いで類の口を手で塞いだ。 「・・・結城、後でもう一発殴らせろ」  弥生は鋭い目つきで拳を握り結城を睨むと、類は口を塞がれていた結城の手を掴み、ぷはっと酸素を取り込んだ。  ・・・甘々セッ.....だのなんだのは聞かなかったことにしよう。

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