長テーブルを挟んだ向かい側に、類、結城、弥生の順で個別のソファに一人一人腰掛けている状態だが、 　何だろう、なぜだか下を向いたまま顔を上げられない。そしてもちろんだが、誰も口を開こうとしない。 ーーーき、気ッまず・・・ 　よりによってなんで今席を外したんだ。どう考えてもこのメンツで残されるのは、間が持たない。 　早く那智に戻って来て欲しいと、誰もが願っていたことだろう。 「ーーーてかさ」 　そして長い沈黙を破ったのは、俺の正面にいた空気を読まないあの男だった。 　俺含めた3人が、その声を合図に反射的にその男の方を向くと、男は続けて口を開くのだ。 「俺だけ咲良ちゃんとヤってないんだけど・・・？！！？！」 　いやいきなり何言ってんだこいつは。 　すると、無駄にノリが良い結城も続けて口を開くのだ。 「あー気持ちよかったですよ、咲良先輩の中」 　いや本当何言ってんの？？？ 　そしてそんな結城の頭をすかさず弥生がばしっと叩いた。 「い"・・・ッ」 「お前、本当そういうのやめろ。てか結城ヤってたのかよ・・・！」 　結城は叩かれたところを手で抑え、涙目で弥生を睨むのだ。 「・・っにすんだよ弥生！・・いいだろ別に。俺だって良い思いしたかったし」 　すると、類が勢い良く机をバンっと叩いた。 「いや、本当美味しいとこ持ってったよね君達はさ！俺、咲良ちゃんと抜き合いしかしてないんだよ？！てか咲良ちゃん泣いたから抜き合いでやめてあげた俺、こん中で1番優しいと思うんだけど？！」 「そんな優しい俺と違って、弥生くんは嫌がる咲良ちゃんに泣くまでヤったし、結城は泣いてる咲良ちゃんに無理やりヤったしさ。本当、やってらんないよ」 　まったく、と呟く類に、ちょっと待て、そもそも何でそんなこと知っているのかと聞きたいが、カメラを仕掛けてるとか言われたら怖いので、もはや何も言うまい。 「は、泣かせたってそれ類先輩が下手くそなだけでしょ」 「・・結城、後でシバく。てか俺、咲良ちゃんから求められちゃったし？あの時の咲良ちゃんまじ可愛かったな～」 「も、求められた！？！！？？？」 　マウントを取るかのようにふっと鼻で笑う類に、結城と弥生は揃って声を上げるのだ。 　2人の反応に類はふふん、と得意気な様子だ。 　というか何の会話をしてんだこいつら。 　俺が類を求めたってあんなの類がいきなり甘い空気になったのが悪いしあの場の空気感の問題だろ(言い訳) 「ってことで咲良ちゃん。今度こそ俺と最後までしてみない？またあの可愛い咲良ちゃん見たいなあ」 「いや咲良先輩、俺との体の相性めちゃくちゃ良かったですよね？」 　ソファから立ち上がり、テーブルに手を付くと2人揃ってこちらにずいっと顔を寄せてくる。 　俺はどうすればいいのか。俺が2人を交互に見て慌てふためく様子を見た弥生はガタッと立ち上がると、2人に向かって声を荒らげるのだ、 「おいアンタらいい加減にしろ！」 　そしてそんな弥生を類はじとっと見やるのだ。 「・・てか弥生くんさ、俺にはケダモノとか言ってきたくせに、自分だってそうじゃん」 「っそれは・・・ッ、」 　すると、こちらをちらっと見た弥生と目がばちっと合うのだ。 「に、兄さん、その・・・」 「弥生・・・」 　弥生はおそらく、俺を襲ったことをずっと気にしているだろう。 　弥生にされた時は確かに結構傷ついたが、そもそも弥生をそそのかした結城が悪いのだ。 　ここは兄として、気の利く言葉をかけてあげなければ。 「弥生、大丈夫だ。俺は全く気にしてないから」 　すると弥生はなぜかショックを受けている様子だった。 　類と結城に至ってはなぜだか腹を抱えて笑いをこらえていたのだ。 「良かったね、弥生くん。君と違ってお兄さんは全く気にしてないってさ」 　類の余計な一言に結城はついにぶはっと吹き出してしまう。 　弥生は顔を真っ赤にしながらそんな2人をきっと睨んだと思えば、テーブルに置いていた俺の手を取り、目をじっと見つめてくるのだ。 　手を取られたことにぎょっとしたのもつかの間、綺麗な弥生の瞳に見つめられ、思わずその瞳に吸い込まれそうになってしまった。