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「もしかして俺達お邪魔だった感じ?今からでも出ていこうか?」  音量が大きすぎて扉を開ける音が聞こえなかったようだ。  類と結城は俺達のこの状況にムカつくくらいにやにやしていた。 「廊下にまで音、漏れてますよ?熱烈ですね」  結城がこちらに向かってクスっと笑った時だった。騒がしかった爆音がピタッと止んだのだ。  振り返るとパソコンを操作している弥生がいた。弥生は俺と目が合うとばっとこちらから目を逸らすのだ。 「やーよーいー・・・・・、これはどういうことだ・・・・?」  弥生を壁に追い詰め見上げると、弥生は慌てているんだろう、顔は青ざめていて目がぐるぐると回っていた。 「に・・っ、にににに兄さん・・・、これは、違くて・・、その・・・ッ、」 「なぁにが違うんだよ、こんな大事そうな場所にしまって、なあ?」  じいっと弥生を下から睨みつけ、涙目になっている弥生が必死に俺に弁明しようとした時だった。 「" ・・い、・・い、れ・・・、て・・ーーっぁ、ぁッッ、 "」 「" っあ・・・ッ、ぁ・・、あ・・・、ひ・・ぁ、ッ "」 「" ・・・気持ちいいね、咲良。なあ、言って良かっただろう? "」  ーーまたしても、俺の体はピタッと固まった。  再び俺の喘ぎ声が生徒会室内に響き渡ると、パソコンを操作していた那智がドヤ顔で「咲良!」と俺を呼ぶのだ。 「俺達のも見てくれないか、良く撮れているだろう!しかも俺達のは4K超えて8Kなんだ・・・!」 「今テレビに繋げるから一緒に見・・へぶ・・ッッ」  こちらに向かって腕を広げ、歩み寄ってくる那智に思い切りタックルをかますと「ぐえっ」と鳴いた那智はその場にぐしゃりと倒れ込んだ。  すると、朝日含めた面々は全く同じことを考えていたのだ。  ーー咲良が那智に入れてと言ったのは本当だったのか・・・、と。  面々がそんなことを考えているとは知らずに俺は急いで動画を停止させると、変に対抗心を燃やした結城と類は、ずいっとこちらに詰め寄ってくるのだ。 「ねえ、咲良先輩。俺達の動画もあるので、後で見ながらシます?久々に」 「誰がするか・・ッッ!あといつもシてるみたいに言うな・・ッ!!」 「咲良ちゃん、後で俺とのも撮ろうよ。あとついでに入れさせて?」 「ついでってなんだ・・ッ!そもそも撮るわけないだろうが・・ッッ!!」  そんな二人に俺が息を切らしていると、「咲良」と朝日に呼ばれたのもつかの間、腕を引かれ、首根っこを掴まれるのだ。  朝日は俺の首根っこを掴んだまま「ちょっと来い」と、生徒会室の端にある簡易休憩室まで引きずると、中で朝日にめちゃくちゃ説教された。  ちなみに簡易休憩室は防音である。俺と朝日が中であれやこれやあった間、本来であれば外側にいる連中には何一つ音は漏れていない。・・はずなんだが、後に類に聞いた話によると、俺の悲鳴のような声がたまに聞こえたそうで、肝を冷やした。  朝日にめちゃくちゃ説教(直喩)されて衣類が乱れ、しくしく泣く俺を隣に、朝日は他の面々を正面に正座させた。  朝日は弥生以外の面々の文句が飛び交う中、保健室と那智の部屋で撮影されていた動画のデータが入ったパソコンをデータもろとも鈍器で粉砕したのだ。  那智が俺よりも泣いていたのは言うまでもないだろう。  尚、弥生の部屋には以前類から受け取っていた咲良との行為の動画データが残っていた。そのことは絶対に咲良にバレないようにしなければ、と決心した弥生であった。

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