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 俺は以前生徒会長であった那智に、兄である咲良には近付かないことを条件にスカウトという形で生徒会に入れてもらった身だ。今思えば意中の咲良の弟である俺は那智の計画に利用できる、とでも思っていたのだろうが。  そんな形で生徒会に入った俺は正直、兄に罪悪感でいっぱいだった。だからせめて兄にはこれから少しずつその穴埋めをしていきたいと思っている。 「そういや弥生さ、」  そしてこの俺の目の前にいるこの男、結城は以前俺を嵌めて兄である咲良を襲わせた人物だ。  正直言うと、未だに兄のことは好きだ。でもやはり兄は朝日といる時が一番幸せそうで、笑っている時も多い。  結城に嵌められて保健室で兄とあれこれはあったが、その思い出(物理)は引き出しの奥に仕舞ってある。それにはたまに世話になっているが、それだけだ。  今の弟と兄以上の関係を、俺は求めようとはしない。やはり兄には幸せになって欲しいのだ。 「なんだよ、結城」  今はやることがないので、個別に分かれているソファに腰掛け、結城と向かい合う形で勉強をしていた。   基本的にこの学校は金さえあれば解決できる学校だが、やはり勉学は別だ。金だけではどうにもならない。 「兄さんとヤった時どうだったんだよ」  突拍子もない結城からの質問を脳で理解するのに少し時間がかかってしまった。  そして、結城が言ったことを頭の中で完全に理解した瞬間、俺は顔から火が出そうになってしまったのだ。 「・・・・・ッな"、お、お前・・ッ、その話は・・ッ!」  取り乱してしまった俺は結城をきっと睨むと、結城は息を吐くのだ。 「いいだろ別に。今は俺達しかいないんだしさ。・・ま、お前と兄さんのことは俺のせいではあるけどな」  兄である咲良を襲ってしまったのは俺を嵌めた結城のせいだ、と俺も当初は被害者面ではいたが、実際は兄のあられも無い姿を目の前にして自制が効かなかった俺のせいでもある。  だから俺は一発だけ結城を殴り、その後は以前と変わらない友人関係を続けている。 「誰のせいとか、それはもう終わったことだろ」 「まー・・、俺弥生に思いっきり殴られたもんな」 「お前が兄さんにしたこととか考えると、そりゃあ殴るだろ」  すると結城はペンを置き、いつも兄が座っている定位置をじっと見やるのだ。 「・・・俺さ、最初は咲良先輩のこと顔は確かにタイプだけど弄りがいがある先輩ってしか思ってなかったよ」 「でも保健室で弥生がいなくなった後に先輩抱いてたら、なんかだんだん可愛く見えてきたんだよな・・」 「・・・お前、それは俺未だに許してないからな」 「・・別に?それは弥生に許されなくてもいいし、俺が先輩のことどう思うかは勝手だろ」 「それにさ、弥生だってまだ先輩のこと好きだろ」  突然図星をつかれた俺は、思わずガタッと立ち上がってしまう。結城はそんな俺を見るとぶはっと笑うのだ。 「お前さ・・、分かりやす過ぎ」 「んで、さっきの質問の答え、まだ聞いてないんだけど?」  さっき、というとあのことだろう。話が逸れたことから、もう蒸し返されることはないと、俺は油断していた。  というか、結城自身も兄のことが好きなはずなのにそんな話を聞いて何が楽しいのだろうか。結城は俺からの返答を待っている間、頬杖を付いてにやっと口角を上げていた。

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