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「んで、どうだったんだよ、弥生。咲良先輩とヤった時」  結城はにやっと口角を上げている。兄とのことがあって、結城の性格は理解したつもりだ。  こいつが笑っている時は大抵何か企んでいる時だ。 「・・・お前、何企んでんだよ」 「・・何も?ただ純粋に、一回家族になった好きな人とヤるってどんな感じなのかと思って」 「・・・そもそもな、結城。俺は兄さんとあんなことになるなんて嫌だったに決まってんだろ」 「何で?好きなのに?」 「好きは好きだけど、家族だったことに変わらないだろ。家族とヤりたいなんて思うわけがない」  すると結城は俺からすっと目を逸らすのだ。 「あー・・・、弥生、今の内に謝っておくわ」 「・・は?何ーーー・・・・・っえ"、」  結城の目線の先を追うと、入口前で俯いてわなわなと震えている兄の姿があったのだ。  兄は俺と目が合うと、涙が溜まっている瞳できっと俺を睨んだ。 「っお、・・俺だって・・・ッ、弥生なんか大っ嫌いだ・・・ッッ!!」 「・・・・・・・・は、」  ーー今、兄は俺に何と言った?  俺の聞き間違いでなければ、"大嫌い"だと。  ・・・・・・嘘だ。兄が、兄が・・、俺を嫌いなわけが、ない。 「兄さん・・っ」  兄の元に駆け寄り肩を掴むと、兄は「離せよ・・ッ!」と暴れるのだ。  どうすれば、分かってもらえるのだろうか。家族ではなく恋人がいいということを。家族としてではなく、一人の人間として、兄に、咲良に、好きになって欲しい。あんな無理やり襲うなんて、俺はやりたくなかった。  それをなんとか伝えようとするが、泣いている兄を前に俺はかなりパニクっていた。 「っに、兄さんの中・・ッ、めちゃくちゃ気持ちよかった・・ッッ!!」  頭に浮かんだことを何も考えずに口に出すと、兄の動きがピタッと止まった。  そして結城は吹き出していた。  それでも俺は止まらなかった。 「・・・・・おい」 「感度良すぎて何回もイってて可愛かったし・・ッ!」 「・・・・・やよい、」 「俺・・っ、あの時の兄さんとの思い出は今でもよく使わせてもらってて・・ッッ」 「・・・思い出?」 「うん、動画」 「使うって?」 「そりゃあおな、・・・・・・・・・あ、」  ーー 余計なことを言ってしまった。  だがそれに気付いた時にはもう遅いのだ。 「弥生・・・・・・、お前・・・・・・」  顔を真っ赤にしてぷるぷる震える兄は下から俺を睨み、襟を掴んでぐいっと俺を引き寄せると、 「その動画・・・・・、今から持ってこい」 と低い声で呟くのだ。  本気で怒っている兄に抵抗するのはやばい。家族だった俺には分かるのだ。  その後泣く泣く引き出しの奥にある動画の入っているデータを持って来ると、念の為中身を確認し、真っ赤になっている兄に目の前で鈍器で粉砕され、俺は一週間寝込んだ。  そして兄は一ヶ月 口を聞いてくれなかった。  結城としては兄の目の前でヤった時の感想を言うのを期待していたらしい。結果こうなってしまったことに結城は謝っていた。が、そんな結城をべしっと叩いた。

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