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06
「・・あれ、朝日、今日は咲良は一緒じゃないのか」
「ああ・・、あいつならまた告白みたいですよ」
放課後、いつものように生徒会室で業務をしている時、生徒会室の扉が開くと那智がひょこっと顔出すのだ。
言わずもがな、咲良はモテる。
心配で咲良の告白に毎回付いて行っていたが、今日ついにもう付いて来るなと言われてしまった。
まあ、今まで本当に純粋に告白されていただけだから、多分何もないだろう。
何より、生徒会長である俺と付き合っている、というのが大きいだろう。もちろん俺は那智のように咲良に近付く奴を脅したりはしないが、俺と付き合っている咲良に手を出そうとする奴は、まずいない。退学にさせられる、と皆分かっているから。
「・・・今、咲良を一人にするのは、まずいかもしれないよ」
机を挟んだ目の前の椅子に那智が腰掛けると、珍しく真剣な表情をしていたのだ。
「・・何でですか?」
「なんでも、咲良は生徒会全員と寝ている、という噂が一人歩きしているらしい」
「っえ、それって・・・、」
「・・いいや、以前俺達がやったことがバレたわけではないみたいだ。その噂が広がったのは最近みたいだからね」
「・・今やっている業務は、俺がやっておく。咲良の様子を見に行くといい」
この学校では、生徒会はかなりの人気を誇っている。特に咲良は生徒会の中でも一二を争うほどの人気がある。
だが、人気があるということは反対にアンチもいる、ということでもある。
少数いる咲良のアンチのほとんどは、咲良には顔も人気も敵わないと諦めてはいるものの、一部はそうではない生徒もいるのだ。
那智に業務を任せて急いで生徒会室を出る。俺は呼び出しに使われていそうな人気のない校舎裏や屋上を手当り次第当たってみることにした。
***
また、手紙での呼び出しがあった。
ほぼ毎日ある呼び出しに、心配性の朝日が毎回ついてくるので、もうついて来るなと今日ついに言ってしまった。
俺に構ってばかりの朝日は、生徒会の業務がおろそかになっている。
俺が朝日と付き合っていることは、ほとんどの奴が分かっているはずだ。そんな俺に何かをしようとする奴はよほどのバカしかいない。
だから、朝日がいなくても大丈夫。
・・・と、思っていたのが数分前の俺だ。
なんだ、この状況は。
手紙に書いてあった通りに校舎裏に行き、手紙の差出人を待っていると突然後ろから羽交い締めにされたのだ。
そして抵抗していると後からもう一人が来て、二人がかりで床に押さえつけられてしまった。
「おい、ちゃんとそっち押さえてろよ。抵抗されたら面倒だからな」
「分かってるって」
俺の頭の上にいる奴は、俺の手首を頭の上で束ね、ぐっと力を入れるのだ。
正面にいる奴に蹴りを入れるが、パシッと掴まれてしまった。
「っく・・、」
「おーおー、お綺麗な顔の割に気ぃ強えな」
正面にいる奴は俺に馬乗りになると、顎を掴み顔を除き込んでくるのだ。
「・・なあ、生徒会辞めてくれよ。空いた枠に俺が入っからさ」
・・・こいつら、それが目的か。おそらく2年の連中だろう。何度か廊下ですれ違ったことがある。
「庶民だもんな、こいつ。生徒会に入れたのだって体売って票稼いだからだろ」
「なんたって生徒会全員と寝てんだもんな」
・・・おい、何でこいつらが生徒会しか知らないことを知っているのか。
ーーいや、一度生徒会が解散してからしばらく経っている。・・・そうなると、ここ最近で噂がどこからか沸いたのだろうか。
「・・へえ、この状況で考え事なんて随分と余裕じゃん。・・・ね、そんなに遊んでんならさ、俺らの相手もしてよ。副会長サン」
「朝日と付き合ってるくせに他の奴らとも寝てるとか超ビッチじゃん。相当遊んでるよな、こいつ」
すると、ベルトを緩められたと思えば、ズボンをパンツごとずるっとむき取られるのだ。
「や、めろ・・・っ」
二人がかりで手も足も押さえ付けられ、力を入れてもビクともしなかった。
太ももに這わせられる手に全身に鳥肌が立ったと同時に、俺は心の中で朝日に助けを求めた。
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