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20【完】

 咲良達が食事をしている中、食堂にいる生徒は同じテーブルで朝食を取っている生徒会の話で持ち切りだった。  特に興奮していたのは咲良達から少し離れた場所に座っていた二年の生徒二人だった。 「おい・・!見ろよあの席、生徒会が揃って飯食ってるぞ・・!!」  一人の生徒が生徒会の方を指差すと、もう一人の生徒が指を指すなとその生徒の腕を押さえるのだ。 「今の生徒会って仲悪いんじゃなかったか?」 「ああ。咲良がよく那智先輩を怒鳴ったり叩いたりしてるらしいよな」 「肝が据わってるよな、咲良」 「朝日はパソコンぶっ壊して弁償したらしいし」 「・・ま、色んな話はあるけどみんなで同じ席に座ってんだから実は仲いいんじゃね?」  すると指を指していた生徒がそう言えば、とぽつりと呟くのだ。 「なあ、仲良いといえばさ、咲良が生徒会全員と寝てるって・・」 「バッカ、それは誰かが広めたデマだって朝日がウワサ知ってる奴探して言い回ってただろうが。いつだかそのウワサ信じた奴が咲良襲って朝日に消されてただろ」 「あー、そいつらよく咲良に手ぇ出せたよなあ」 「な。バックに朝日いるしな。それに、むしろ咲良が生徒会を握ってるって噂だろ。お前も知ってるだろ?実は咲良が生徒会を裏で糸引いてるって噂」 「生徒会の連中を手ごめにしてるらしいしな」 「元会長を怒鳴ったり叩いたりしてるくらいだからな」 「咲良って高嶺の花って言うじゃん?実はめっちゃくちゃ口悪いらしいぞ」 「それがいいんだろ。ギャップだよギャップ」  もう一人の生徒がそうだなと呟くと、机に頬杖を付き、生徒会が座っている席を見やるのだ。 「・・全員頭良いしさ、やっぱ頭の良い会話してんだろうな」 「そうだな。どんな話してんのか気になるわ」 「・・・おい、これ絶対仲良いって思われてんだろうが。弥生はいいとして、他は別のテーブル行けよ」  ただでさえ注目を集めている席に結城と弥生も入ってきたことで、咲良達はより他生徒の視線を集めることとなってしまった。 「えーいいじゃん。だって実際仲良いしさあ」  すると類が咲良の肩に手を回すのだ。朝日からの視線が痛いこともあり、咲良はやめろとすぐにその手を払った。 「兄さん、珍しいんじゃない?この時間にいるの。倒れたって聞いたけど体調大丈夫?」  昨晩朝日とシていたこともあり、弟と顔を合わせるのは咲良はなんとなく気まずかった。  弟に何と説明しようかと考える咲良は、朝日の隣に座っている弥生に顔を向ける時には顔が赤く染まってしまっていた。 「あ、ああ・・・、大丈夫。ちょっと、色々あって寝坊してさ・・・」 「あ・・、そう、なんだ・・」  弥生と結城はそんな様子の咲良をみると何かを察したようだった。  すると朝日を挟んだ弥生の反対側に座っていた結城は、食べている途中の箸を置いてガタッと立ち上がると、咲良に向かって前のめりになるのだ。 「ね、咲良先輩、俺とはいつシます?今日でもいいですよ」 「いやしつこいなお前も。那智先輩かよ」  すると隣にいる那智は熱々の唐揚げをほふほふと頬張りながらもこちらにぐりんっと顔を向けるのだ。 「呼んだか咲良!!」 「いや大丈夫です」 「大丈夫ってなんだ・・?!」  そんな咲良にぐいぐい行く結城を見る類は深い息を吐いた。 「もー、結城は弥生くんのウブさを見習って欲しいよね。弥生くんなんてこないだ裸のお兄さんに抱き着かれただけで勃っちゃったんだから」 「うっわそれウブすぎ。逆に引くわ」 「おい・・ッッ」  類の発言により結城は露骨に顔を歪ませると、弥生は顔をかっと赤くさせて必死に兄である咲良に弁明し始めた。 「でも結城も意外とヘタレだよね。挿れる途中で止めたじゃん」 「へ、ヘタレ・・?!」  すると結城はヘタレと言われたことにより一瞬固まるが、すぐに冷静になり類を睨むのだ。 「は、俺にとっては二人がかりでやるのは節操ないと思いますけどね。発情期の猿じゃあるまいし」 「・・那智、結城もぶっとばしてきて」 「だから何で俺・・?!」 「まあでも咲良めちゃくちゃ気持ち良さそうだっ・・ぶふぅッッ」  那智が言い切る前に咲良は那智の腹にそれなりの強さでヒジを入れると、那智はイスの上でうずくまるのだ。 「ってかヘタレって類先輩でしょ。初っ端ビビって入れられなくて未だに一回も入れたことないくせに」 「っび、ビビってないから・・!!なんなら今日シてもいいくらいだし?」 「いやしねえから」  ちらっと咲良を見る類を咲良は一蹴すると、類が当たりキッツいな~と咲良に向かって笑った時だった。 「咲良ー!」  名前を呼ぶ声と共に後ろからぎゅうっと抱き着かれた咲良は、名前を呼ぶその声だけで誰か分かってしまい、抱き着いてきた背にいる人物に、思わずどすっとヒジを入れてしまうのだ。 「う"ぐっ、・・あっは、相変わらず当たりつっよいね。本当そういうとこ好きだなー」 「おい・・、咲良から離れろ椎名」  やめろと嫌がる咲良の頬に自らの頬をすりすりと寄せる椎名は、いつの間にか後ろに回ってきていた朝日に襟元を掴まれ咲良から引き剥がされるのだ。 「お前は生徒会じゃないでしょ。あっち行きなよ」 「いや俺はあんたらにもどっかに行って欲しいんだけど」  咲良がじろっと類をを睨むと、類はまあまあ、と咲良をなだめた。  そして椎名はむっと頬を膨らませるのだ。 「えーいいじゃん。俺明日でいなくなんだしちょっとは咲良吸わせて欲しいんだけど」 「そういえば咲良、この間は俺のせいでごめんな?次はちゃんと合意を得てからやるから安心してよ」  すると咲良から椎名を引き剥がした朝日は 「安心しろ。合意を得られることはないから」 と椎名を睨むのだ。  そんな朝日を見る椎名はくすっと笑った。 「それは分かんないでしょ?咲良だって心変わりあるかもしんないしさ」 「・・・なあ咲良。咲良に思いっ切り噛まれた唇がまだ治らなくてじんじんしてるんだけどさ、逆にこれ咲良とシてる時思い出してめちゃくちゃ興奮するんだよね」 「さっきもみそ汁飲んだだけで勃起しちゃって大変だったよ」  あはっと笑う椎名を見た一同はドン引きしたと共に、この場にいる全員の思想がこの時一致したのだ。  ーーこいつを咲良に近付けてはいけない、と 「おい・・、お前兄さんから離れろ」 「わ、ちょっと引っ張らないでよ・・!俺もっと咲良と話したいんだって!明日で退学なんだよ俺・・!」 「はいはい。話は生徒会室で聞くからさ」  類と弥生が椎名の腕を掴むと、椎名はそのまま生徒会の一同によってつまみだされた。  すると今までの光景を見ていた他の生徒がなんだなんだと咲良達の席の回りに集まってくるのだ。  ーーなんかこの席、超目立ってるんだが。  そんなことを咲良が思った時、ポケットに入れていたスマホがピコン、と鳴った。  スマホを取り出して画面を開くと、ここから抜けないか、という内容で朝日からメッセージがきていた。  するととんとん、と後ろから肩を叩かれ、振り返るとにやっと笑う朝日がいたのだ。  そんな朝日は咲良の手を取ると、人混みをかき分けて一目散に駆け出した。  そんな朝日の手を咲良はぎゅっと握り返し、そのまま二人は寮の外に出るのだ。  生徒会の奴らが追って来るかもしれないから、と朝日は咲良の手を引いたまま学校の外にまで連れ出した。  すると、朝日はなあ、と咲良に顔を向けるのだ。 「咲良・・、今日はこのまま遊びに行かないか?」  そんな咲良は朝日の顔を見ると、少し考えた後に仕方ないな、と呟くのだ。 「・・・今日だけだからな。明日は絶対学校行くから」 「やった。行きたいとこあるか?」  カラオケ、ボウリング、ゲーセン、と指を折って数える咲良を横目で見る朝日は柔らかく微笑んだ。 「いいよ、全部行こう。俺は咲良とならどこでもいいから」 「時間はたっぷりあるしな。じゃ、今日は目いっぱい遊ぶか」  そんな二人を見送るように、眩しいくらいの晴天が二人を照らしている。  良い天気で良かった、と顔を合わせて笑う咲良と朝日は、青空に包まれながら街に向かって駆け出した。  その翌日から再び学校に行くこととなった二人だが、咲良により過保護になった朝日は学校の中で完全に咲良に付きっきりになり、校内でも寮でも二人が離れることはなかった。  終いには過保護過ぎる朝日が四六時中咲良の手を離さない為、咲良を狙おうとする者は完全にいなくなったのだ。  中には束縛されて可哀想、と咲良をあわれむ者もいたが、案外満更でもない咲良を見ると皆まあいいか、とその光景を誰も気にしなくなった。  今日も二人は手を離さない。きっと、これからもずっと、その手が離れることはないだろう。 END.

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