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 髪の毛をすくわれ優しく頭を撫でられる感覚に、目を覚ました。  寝起きで冴えない頭ながらも、布団の匂いとベッドの心地良さで、すぐに誰の部屋か分かった。  がばっと起き上がり部屋を見渡すが、部屋の主の姿はない。  探すためベッドから立ち上がろうとすると、脇から伸びてきた手に腕を掴まれ、ぐいっと引き寄せられるのだ。 「・・わ・・ッ!」  温かく、慣れた匂いにぽすっと包まれる。腕の中にすっぽりと収まった俺はもぞもぞと身体の向きを変えると、その人物と向き合う形になった。 「っあ、さひ・・・」 「・・ん、まだ寝てろ。今日は休むぞ」  頭にちゅっとキスを落とされ、大好きな匂いを感じながら撫でられていると、再び瞼が重くなってくるのだ。 「おやすみ、咲良」 その言葉を最後に、俺の意識は再び暗闇に落ちていった。  それから目が覚めて、まずは一番に互いに謝った。俺は朝日の話も聞かずに避け続けたこと。朝日は類と那智のこと。そして椎名のこと。  その後は一緒に風呂に入り、あいつらに触られた箇所を上書きするかのように、優しく抱かれた。  何日かそんな生活が続き、これ以上自堕落になっては駄目だと思った俺は渋る朝日を何度も説得し、なんとか学校に行かせてもらえることになったのだ。  そして最後にと、学校に行く前日にめちゃくちゃ激しくヤられた。 ***  そしていざ学校へ行く日、昨晩激しく互いを求め合ったことから、案の定二人は寝坊した。  正確には寝坊ではなかったが、面倒な奴らに絡まれるのを避けるため、食堂にはいつも開いた後すぐに行っていたのだ。  今はちょうど混み始める時間だった為、咲良は面倒だから飯はいらないと言ったが、朝日はそれを許さなかった。  喧嘩する前と比べ、明らかに痩せた咲良を心配した朝日は咲良を引きずるように食堂へと連れて行った。  そしていざ食堂に着くと、案の定混んでいた。  食事を乗せているトレーを唯一空いていた席に置き、テーブルを挟んで向かい合う形で座った咲良と朝日が話をしながら食事をしていた時だった。 「それでさーーー」 「ーーわ、空いてる席はっけーん!ね、ここ座っちゃおうよ」 「そうだね。咲良、隣失礼するよ」 「・・・え、ッ」  咲良の両脇に、カチャンとトレーを置く音、そしてガタッとイスが引く音が響いた。  上から降ってきた声を聞き、まさか、と思った咲良は思わずガタッと立ち上がると、左右から伸びてきた手にパシッと両手を掴まれてしまうのだ。まあまあ座って、と言われ、腕を引かれ席に再びすとん、と座らせられてしまう。 「・・・おい、あんたら、あれだけ言っておきながら、よくも普通に顔出せるよな。咲良から離れろよ」  テーブルに手を付いた朝日がガタッと立ち上がると類と那智はぱっと咲良を掴んでいた手を離すのだ。 「ただ腕を掴んだだけだろう?過剰な反応じゃないか、朝日」 「ーーそれにさ、」 と呟いた類は辺りを見渡した。 「あんまり騒ぐと、生徒会の評判に響くんじゃないかな?」  案の定、咲良達が座っている席は注目されていた。 それも当然だろう。生徒会の奴らに絡まれることがないようにいつも早い時間に食事を取っているから、この時間に咲良と朝日が食堂にいるのはかなり珍しいことなのだ。 「他に空いてる席もないんだよねえ」 そう呟いた類はちらっと朝日を見ると、朝日は深い息を吐くのだ。 「・・咲良に手ぇ出したら速攻で追い出すからな」 「もー、やるわけないじゃんこんなところで」  すると、類は咲良の食事が乗っているトレーを横目で見やるのだ。 「・・え、咲良ちゃんそれしか食べないの?ほら那智のたまご焼きあげるよ」 「っおい!!勝手に取るな類・・!!」  咲良を挟んだ向こう側にいる那智の卵焼きを掴んで咲良の皿に乗せた類は、声を荒らげる那智を見るとえー、と顔をしかめるのだ。 「那智最初のころはよく「ここの食事は俺の体には合わないな」とか言ってじゃん」  類の那智の真似が似ているかはさておき、咲良の正面に座っている朝日も、咲良の料理が乗っている皿を見て口を開いた。 「咲良・・、昨日は激しくし過ぎたし、ちゃんと食べないと駄目だ」 「・・ばッ!!何でここでそういうこと言うんだよ・・ッ!!」  朝日の言葉に顔を真っ赤にしている咲良に類は顔をしかめるのだ。 「うっわ、彼氏マウントうざ。ちょっと那智、朝日くんぶっとばしてきて」 「ああ。・・って、おい・・ッ!!前からちょっと思っていたが俺はいつお前の下僕になったんだ・・ッ!!」  声を荒らげる那智の様子を見た類はきょとん、としていた。 「・・・・・え、違うの?」  咲良を挟んだ類と那智がぎゃあぎゃあ騒いでいるのを横目で見た咲良は朝日と目を合わせ、早く食べて出ていこう、と二人でアイコンタクトをした矢先だった。 「ーーお、弥生、ここの席まだ空きがある。ここに座らないか」 「・・おい、お前先輩の席に座るってそんな図々しいことーーーって、兄さん・・・?!」  ーーこの声は、と見上げると結城と弥生がいた。  結城は咲良と目が合うとなんだか久しぶりですね、咲良先輩、とこちらににこっと笑いかけるのだ。

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