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「·····咲良先輩、大丈夫ですか?」  背に結城の体温を感じながらも、脇にある結城の足を肘置きにし、木陰のぽかぽかとした陽気に当てられていた。  そのあまりの心地良さにうとうととしていると、背にいる結城は腹に手を回してくるのだ。 「·····おれ、先輩に受け入れてもらえたのが嬉しくて、やりすぎちゃいました。·····ごめんなさい」  まるで子犬のようなその物言いに、またも可愛いと思ってしまった。 「ん、大丈夫·····、」 「先輩とこうしてるのが、夢みたいで。·····俺、絶対脈ないと思ってたから、」 「·····ね、先輩、どうして俺の誘いに乗ってくれたの·····?」  その問いに対して喉から出かけた言葉をぐっと飲み込んだ。  ーー類と寝てしまったし結城ともいいかと思った、なんて口が裂けても言えるわけがない。  後ろから投げかけられるその言葉をどういう表情で結城が言っているのかは分からないが、結城が欲しいであろう言葉をくれてやることはできる。 「·····いや、自分の気持ちを、確かめたくってさ」 「··········え、それって、」  俺の顔を覗き込んでくる結城は、目を丸くさせながらも期待に満ちていた。  この時点で俺が何を言うのか、結城は察しているのだろう。 「あー·····、うん。もしかしたら、好きかもしれない、結城のこと·····」  横にある結城の顔は、先程と同様にきらきらと輝いていて、「まじか」と呟いたと思えば背後からぎゅうっと抱き締められるのだ。  嬉しい、嬉しい、と首に顔を埋めながらも繰り返し呟く結城にきゅっと胸が締め付けられた。 「俺も、咲良先輩好き。好き、先輩、好き·····」  頬を淡く染めた結城の顔が近付いてくる。それを受け入れるかのように目を閉じると、ふっと笑ったかと思えばちゅ、とキスを落とされるのだ。  すると、腰にごりっと硬いものが当たった。ぎょっとしたのもつかの間、はあ、と結城の熱い息がつむじにかかるのだ。 「先輩、もう一回、したい。いい·····?」  熱っぽく俺を捉える結城の目からは逃れることができずに、そのまま流されるように結城の熱に溺れることとなった。 ***  我ながらクズだとは自覚はしている。  俺にはお前だけだと甘い言葉で封じ込め、朝日ではない類や結城と体を重ねる日々を送っている。  朝日がいない寂しさを、あいつらで埋めている。騙しているのは悪いとは思っているが、どうしても誰かに愛されたかった。愛されている、という実感が欲しかった。  だがあいにく、今日はもちろん朝日はいなければ類も結城もいない。  持て余しているこの退屈な時間をどう過ごそうかと、生徒会室の自分の定位置で頬杖を付いて考えながらもうとうととしていた時だった。  ーーバンッッ  勢いよく扉が開く音で目がばちっと冴えた。  また朝日か?と顔を上げると、開いた扉から現れたのは改心してからすっかり丸くなったあの男だった。 「咲良·····!今一人か?·······もし、もしも暇なら、俺の部屋で映画でもどうかと思ったんだが·····、」  どうだろうか、と言い終わる前に、 「いーですよ、行っても」 と食い気味に答えると、那智は「·····え、」と目を見開くのだ。  恐らく那智は行くわけねーだろ馬鹿かとでも言われると思ったのだろう。  前までの俺ならそう言っていただろうが、ここ最近ほぼ毎日類や結城と寝ていた俺にとっては退屈なこの時間が苦痛で仕方ないのだ。  分かっている。部屋に呼ばれる、というのは"そういうこと"の誘いだと。だからあえて行く、と言っているんだ。  なのに、なぜ表情が固まったまま動かないのだろうか、この男は。

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