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06※

「·····俺がこんなこと言うのもなんだが、」  俺のシャツのボタンを外した那智が、首から鎖骨へ唇を這わせながら口を開いた。喋りながら肌を這う唇がくすぐったくて、背筋がぞくっとした。  那智としては勢いでこういうことになったのだから、少し冷静になって考えたのだろう。今の、俺との状況のことを。  顔を上げた那智と目が合うと、那智はまるで後ろめたいことのようにぱっと視線を逸らすのだ。 「·····その、朝日、は·····」  いいのか、と言いかけた那智の唇を俺の唇でふに、と塞いだ。  すると俺からのキスが嬉しいのか、今度は那智から触れるだけのキスを何度も落としてくるのだ。 「·····っは、先輩、言ってることとやってること、違いますけど」 「っ、お前が、煽るからだろう、」 「·····ね、先輩。今、朝日の話はしないで。俺を見て、」  那智は唇を噛みながら何かを考えているようだった。このまま勢いに流されてしまうことに躊躇しているように見える。  それはそうか、俺が死のうとしてまで拒んでいたことを再びやろうとしているのだから。  以前俺は那智に朝日の目の前で犯されそうになったところ、首を切って死のうとした。  その時のトラウマが、未だ那智の中に残っているのかもしれない。 「·····やめてくれ、咲良。そんなことを言われたら、勘違いしてしまう」 「なに言ってんですか、先輩。下心があったから部屋に呼んだんでしょ」 「ーーそれに俺の中、もう柔らかいんですよ?」  那智の手首に手を添え、ズボンの中、股の奥にまで誘導すると、事前にほぐしておいた窪みに那智の指先が簡単に飲み込まれていくのだ。 「ーーッ、おい、咲良·····っ、」 「ッんん·····っ」  力を入れずとも沈んでいく指に那智は戸惑っていた。  だが指が奥にまで進むにつれ、はあ、と熱い息を吐く那智は掴んでいた俺の手を置いてきぼりに、ずりゅずりゅと内壁をえぐるように指を打ち付けてきたのだ。 「ーーぁ·····っ、あ·····、なち·····ッ、せん、ぱ·····、ぁっ·····」 「·····咲良、なぜもうこんなにぐちゃぐちゃなんだ、まさか·····、」  他の奴ともヤってるのか、とでも言いたそうな雰囲気だった。  まあ、そう思うだろうな。実際、ヤるために準備していたのだから。  類と結城には特に口止めはしていないが、朝日にバレるようなことは自ら進んではやらないだろう。  朝日は普段は温厚だが、あいつらが俺と体を重ねていることを知れば、消される可能性は十分ある。 「咲良、お前ーーー」  ·····まあ、バレてしまったのなら仕方ない。朝日には言わないで欲しいと口止め料としてヤればいいだけだ。  元々そのつもりでここに来てるし。 「ーーお前、生徒会室で、一人でヤってたのか··········?!」  ーーあ、そっち···············?  まあ、勘違いをしてくれてるのなら、それを利用しない手はないか。 「·····実は最近、朝日が触ってくれなくて········」 「だから、一人でヤってたけど寂しくて、なんなら、先輩に触って欲しいなって·····ーーーっひ、ぁ·····ッッ」  瞬間、入ったままの指をくの字に曲げられ、中の熱い粘膜をかき混ぜられた。  内ももを掴まれぐっと広げられると、指が肉壁をかき分け、奥にまで入ってくるのだ。  いつの間にか指の本数も増やされていて、中を拡げるかのようにぐちゃぐちゃと出入りされる指に、体が仰け反ってしまう。  少しでも熱から逃れようと足を閉じようとするが、内ももを押し広げる手がそれを拒むのだ。 「ぁ·····ッ、な、ち·····、せんぱっ·····、ぁ·····っ、ん·····、あ·····ッ、や、ぁ·······、っ」 「·····咲良、君は誘うのが上手いな。······本当、どうなっても知らないからね」  指を引き抜かれると腰がぶるっと震えた。すると、カチャカチャと音が聞こえたと思えば俺の呼吸が整う間もなく、口を開けたままになっていた股の奥がつぷっと熱で埋められていくのが分かった。 「·····俺をここまでその気にさせたんだ。今日は帰さないからね、咲良」  ーーこれはもしかしたら煽りすぎたかもしれないと思いつつ、腹の裏側にまで侵入してくる熱を拒む‪ことはできなかった。

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