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05

「風呂、ありがと」  まあ誰が見ても分かるが、俺と灰田とでは体格が全く違う。灰田が貸してくれたシャツは太ももが隠れるくらい丈が長いのだ。ズボンはウエストが太く、たまに上げないと下に下がってきてしまうくらい緩かった。 「ん"ん"っ··········」  そんな俺の姿を見た灰田は飲んでいた牛乳を吹き出しそうになっていたが、すんでのところで耐えたようだった。  貧弱なことが恥ずかしくて顔が少し熱くなった。灰田を見習って、俺も少しは鍛えたほうがいいかもしれない。 「·····まじか、一番小さいのがそれだったんだけどな」 「いや、むしろ貸してもらってごめんな?助かるよ、本当」  まあ好きなとこに座れと言われ、人一人分間隔を開けた、灰田が座っているソファの隣に腰掛けた。  飲むか?と言われ、コップに注がれた牛乳を礼を言って受け取った。風呂上がりで喉が乾いていたこともあり、ごくごくと喉に流し込んだ。  すると喉の変なところに入ったのか、げほげほとむせてしまったのだ。灰田はそんな俺に大丈夫か?とティッシュを渡してくれた。ありがたく受け取ると、灰田と目が合った。 「っ·····、」  咲良はむせたせいで口の端からは牛乳を垂らしていて、おまけに目が潤んでいた。しまいには自分の服を着ている。ただでさえ意識している相手のそんな姿を見た灰田は、バッと顔を逸らすのだ。 「ん"ん"ん"っ··········」  よこしまな考えを払しょくしようと咳払いをすると、灰田が自分を意識しているなど考えてもいない咲良は「風邪か?」と灰田の顔を覗き込むのだ。 「顔、赤いな」  灰田に身を寄せた咲良の胸元はサイズが緩いこともあり、咲良より背が高い灰田からは胸が丸見えだった。色付いている突起がちらっと見えたと同時に「熱はなさそうだな」と額にぴとっと手のひらを当てられると、灰田はもう限界だった。  すると、咲良は手首をパシっと掴まれるのだ。 「灰田?」  咲良は目の前の相手の様子が変だと気付き、どうした?と呼び掛けた。すると深く息を吐いた灰田は 「·····風邪かもしれねえ。もう寝るわ」 と立ち上がるのだ。  灰田の唇には噛み締めた跡がくっきりと残っていたが、咲良には灰田の苦悩など知るよしもなかった。  そして当然だが、一人用の寮の部屋にはベッドが一つしかない。お前がベッドを使えと灰田に言われたが、風邪なら灰田が使えと、灰田を無理やりベッドに寝かせた。  ーー夜中。  ふと目が覚め、トイレに行きたくなった俺はソファから立ち上がり、眠い目を擦りながらトイレへと向かった。  部屋に戻ると寒くて背筋がぶるっと震え、早く温まりたい一心でベッドへ行き、暗闇の中もぞもぞと布団に潜った。  そういえばなんでさっきはソファで寝てたんだっけ、と考えるが瞼が落ちかけてきている頭では思考が上手く回らなく、まあいいかと目の前の背を見つめた。 「あさひ·····」  昨日もしたけど、また明日当たりするかな。そんなことを考えながら壁を向いて寝ている背中に抱き着くと、その背はぴくっと揺れるのだ。  すると、寒くて立ちかけていた胸の突起が温かい背に擦れ、思わず「んっ··」と声が漏れてしまう。  ーーやばい、変な声出た。  そういえば、朝日にしては体ががっしりしているような気がするけど気のせいか、と湯たんぽのように温かい背に頬を寄せながらも瞼が重くなってきた時だった。  壁を向いていた身体がぐるっと勢いよくこちらに向き直るとパシっと手を掴まれ、覆いかぶさってきた大きい影が俺を見下ろした。 「はい、だ·····」  鋭い目付きをしている相手の視線と重なると、灰田の部屋に泊まったことを思い出した俺は、背筋が凍りついてしまった。

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