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07

 灰田の"それ"は俺のものとは比べ物にならないほど大きく、こんなのが中に入るのかと思うほどだった。  ーー怖い。灰田が、怖い。  抵抗しても敵わないし、煽ってしまったのだから受け入れるしかない。涙を漏らしながらもぎゅっと目を閉じた時だった。 「·······あ、」  ーー咲良が、泣いている·····。俺のせいで·····、 「··········悪い、」  瞼の裏の暗闇の中、そう声が落とされると同時に下腹部に当てられていた先がすっと離れた。埋められていた感覚が消えない中、俺は恐る恐る目を開けた。  すると灰田は「悪かった」とバツが悪そうに俺から目を逸らすのだ。 「部屋、好きに使っていいから」  出る時は鍵は開けたままでいい、と身なりを軽く整えた灰田は背を向けて入口へ向かった。待って、と俺の制止も聞かずに暗闇の中バタン、と扉が閉まる音が部屋に響いた。  黙って出て行ってしまった灰田に、俺はその場からしばらく動けずにいた。 ***  あんなことがあった後で寝れなかったということもあり、起きて灰田が戻るのを待ったが、部屋に戻って来ることがないまま朝を迎えることとなった。  鍵は閉めなくていいと灰田は言ったが、万が一のこともあるので、寮の管理人に言って施錠をしてもらった。 「咲良、昨日はどこ行ってたんだよ」  ーーギクッ  昨日喧嘩をした朝日と学校で顔を合わせて無事に仲直りはできたものの、俺の部屋が改修工事をしているのは朝日も分かっているので、俺が昨日どこで寝泊まりをしたのかと問い詰められていた。  ーー昨日のことがバレたりでもしたら、やばい。  そう思った俺は表情に出ないよう、なるべく平然を装って朝日に向き直った。 「灰田のとこに泊まらせてもらったんだよ。お前と喧嘩した後あいつの部屋に行ったら、ちょうど出るとこだったみたいでさ」 「·····あんな夜更けにか?」 「ああ。なんか用事あったらしい」  ーーめちゃくちゃ疑われている。  嘘ではない。·····はず。いやまあ嘘だが。かなり罪悪感はあるので、灰田と話をしたら朝日にもちゃんと本当のことを話して謝ろう。  まあ、そりゃあそうだよな。夜中に他の奴の部屋に何の見返りもなく泊めてもらえるなど、少なくとも俺の周りでは有り得ない話だ。  ーーそういえば、灰田は昨日あの後どこに行ったんだろうか。  まさか、外で寝た、とか·····。まだ灰田とは知り合って日は浅いが、俺とのことの責任を感じたあいつなら、野宿もやりかねないような気がする。  俺と顔を合わせづらいのか、灰田は朝から学校にいない。話をしたいが、とりあえず学校に来るまで待つしかないだろう。  あの後教師に呼ばれた朝日は小さく舌打ちをするとまた後で話そう、のこの場を後にした。  残された俺はほっとすると共に生徒会の業務があったことを思い出し、早足に生徒会室へ向かった。

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