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第24話 これからもずっと死ぬまで一緒だからな。微エロ
無事にエレベーターから出た二人が外に出ると、夕方になっていた。
繁華街の人混みの中を恋人繋ぎをしながら歩きながら、二人はさっきエレベーターでした事を思い出して笑みを溢していた。
「外したプラグだけどちゃんと消毒して明日返すから」
「分かった。やっぱり結構時間かかりそうだな」
「セックス以外にもしたい事は山ほどあるし、急がずにゆっくり広げてこうな」
「あぁ。そうだな」
頬を赤く染めながらはにかむ旭を見つめながら、敦は手を強く握る。
「で、連れて行きたい場所なんだけどさ、旭は高い所は平気?」
「平気だけど」
「良かった。夕日が綺麗に見えるビルがあるんだけどそこに行こうと思ってさ」
「えっ!ビルって入って平気なのか?」
「幼馴染がアトリエに借りてるビルだから大丈夫。そこからの景色が凄く綺麗でさ」
「へぇ。その友達何してる人なんだ」
「ウエディングドレスのデザイナーだよ。AKIRA・HIGASIOってブランド聞いた事あるだろ?」
「あぁ、あのブランドか。凄い人じゃないか」
AKIRA・HIGASIOとはデザイナー東尾明が立ち上げたブランドで、計算されたシルエットとこだわりの素材で作り上げたタキシードと、レースをふんだんに使ったドレスが人気のブランドだ。
最近では、ドレスに使われているレースを使ったアクセサリーや小物も製作していて、それもヒットしている。
「世間的にはそうなんだろうけど俺か新さんが付いてないとすぐに部屋、ゴミ屋敷にする生活力のないやつだよ。あぁ。新さんっていうのは明の仕事のパートナーな」
「へぇ、お前の面倒見の良さはそこからきてたのか」
「面倒見いいか?」
「新入社員の研修の時とか丁寧に分かりやすく説明して出来るまで付き合ってただろ」
「えっ!旭そんなところまで見ててくれたのか。俺嬉しい」
敦は声を弾ませながら、旭の顔を覗き込む。
唇が触れそうな距離まで顔を近づけられて、胸が高鳴ってしまう。
しかし、こんなに人がいる繁華街でキスは恥ずかしすぎて出来ないと旭は急いで顔を逸らした。
「たまたま見てただけだ!たまたまな!」
「はいはい。また素直じゃなくなっちゃったな。あ、次の狭い路地曲がった所にあるから」
「分かった」
繁華街から裏路地に進むと、狭い道の途中に目立つお洒落な灰色のコンクリートのビルがあった。
敦はスラックスのポケットからキーケースを取り出して開けると、ビルの鍵を出し鍵穴に差し込んだ。
「今は二人とも海外に行ってるけど、帰ってきたら旭にも合わせたいな」
「いいのか?」
「いいも何も友達に恋人紹介したいし」
「紹介って恥ずかしいな」
思い出せば敦から知り合いを紹介されるのは初めてだった。
友達に逢わせてもらう事で、敦の恋人になった事を再び実感した旭は、頬を真っ赤に染めながらはにかむ。
敦はそれを可愛いいなと、微笑ましく見つめた。
ビルに入って屋上に続く階段を登り扉を開けると、一気に視界が広がり、オレンジ色に染まった街並みが広がる。
「綺麗だな」
思わず旭は声を上げた。
それを横で見ていた敦も、それに同意して頷く。
「やっぱり、ここから見る夕焼けは格別だな」
二人で顔を見合わせると、もっと近くで景色を見るために柵の近くに歩き出す。
「仕事終わりに見たら疲れが飛びそうだ」
「そうだな。最初は予算の都合でここ借りる気無かったんだけど明がこの夕焼けが好きで新さんに無理言ったらしい」
「へぇ。明さんって可愛い人だな。逢うのが楽しみになってきた」
声を弾ませる旭に敦は口を尖らせて不満そうな顔をした。
「向こうも旭に逢いたいみたいだけど、浮気はダメだからな」
「浮気しないってさっき言ったろ。っていうか、俺の事話したのか」
まったく嫉妬深いなと旭が呆れながら否定すると、敦は安心したように笑みを浮かべた。
「あぁ。恋の相談に乗ってもらってたからさ」
「恋の相談って……どんな?」
「どんなって。そんな恥ずかしい事聞くなよ……」
敦は言葉を詰まらせて顔を赤くしながら、頬を掻く。
敦が俺の事で悩んで友達に相談していた事を知った旭も、つられて顔を赤くさせた。
「敦だって恥ずかしがってるところ可愛いよ」
「旭!?」
「二回は言わないからな」
「えーっ」
「それにしてもいい眺めだな」
高い所が好きな旭ははしゃぎながら声を上げる。
柵に手をついて下を見ると目を輝かせた。
「うわぁ。結構高いな」
周りには店や民家の屋上が見えて、それも綺麗だなと旭は見惚れていた。
「あまり柵の近くに行ったら危ないだろ」
敦はそう言いながら旭を後ろから抱き寄せる。
いきなり抱きしめられて焦った旭は体をビクッとさせた。
「ちょっと。離せって」
「ダメ。大人しくこっち向いて」
顎に手を置かれて敦の方を向かされると、敦と目が合う。
夕日に照らされて、宝石のように輝いている敦の瞳に旭は一瞬にして心を奪われてしまい、顔を真っ赤にさせて俯いた。
「こんなところでキスされたら忘れられなくなるだろ」
「忘れさせないようにキスするんだろ」
人差し指と親指で顎をクイっとされて顔を上げさせられると、唇を重ねられる。
「旭の事手放す気なんて無いからな。これからもずっと死ぬまで一緒だから」
「敦……っ」
そう告げられると強引に口付けられ唇の間から舌を割って入れられる。
奥に引っ込めてある舌を絡め取られて、引きづり出されると膝がガクガクと震えてしまう。
「はっ……っんーん♡いっ……しょに♡いる♡から……♡」
「ん……っ。本当か!?」
唇が離されて、荒い息をしながら旭が頷くと、敦にぎゅっと抱きしめられる。
その温もりを感じながら、これから一緒に生きていくんだなと、旭は嬉しくて涙が溢れそうになった。
「泣きそうになっちゃって、旭は本当に可愛いな」
「敦だって、泣きそうな顔して可愛いよ」
お互いに笑いながら顔を見合わせる。
このまま時が止まってしまえばいいのにと、旭は敦の顔に頬を寄せた。
しばらくじゃれ合った後、夕焼けに染まる街並みを見下ろした。
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