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第17話 いつかのつづき
タクシーを捕まえて、ルイのホテルへ向かう。その間、ルイの温かな手はユーシーの手をしっかりと握って離すことはなかった。
タクシーを降り、二人は足早にホテルの部屋へ。もう何度も訪れた筈なのに、ユーシーの胸は高鳴る。ルイが愛してくれる場所だと、知っているからだ。
部屋に入るなり、ルイはユーシーを抱きしめた。
二人しかいない、静かな部屋。それでもユーシーを覆い隠すように、ルイはユーシーを腕の中に閉じ込めて離さなかった。
ルイの匂いに包まれる。ルイの肌の香りに香水とタバコと汗の混ざった匂いに、体温が上がる。
肺深くまで吸い込むと思考が蕩けて、何も考えられなくなる。
「シャオユー、キスしてもいい?」
降ってきたのは甘やかなお伺いの声だった。
「今更、聞くなよ」
散々キス以上のことをしたのに。今更そんなことを訊かれるとは思わず、可笑しくなってユーシーは笑った。
ユーシーが顔を上げると戯れ合うように鼻先が触れ合い、吐息が互いの唇を温かくくすぐる。笑った薄い唇を、貪るようにルイの唇が塞いだ。いつもの触れるだけのそれとは違う、食らいつくような深い口付けだった。
こんなに明白な獰猛さを見せてくるルイは初めてだった。自分に向けられる獰猛な欲望の向こう側が知りたくて、ユーシーは誘うようにルイの唇を舌先でなぞる。
悪戯な舌先はルイの熱い舌に絡め取られ、無防備な粘膜を蹂躙された。二人分の唾液が混ざり、口の端から溢れる。
ルイの腕はしっかりと腰と背中に回され、ユーシーの緩くしなった背を支えた。
「ん、はぁ、ルイ」
「シャオユー、かわいい」
吐息が混ざり合う距離でルイが囁く。綺麗に並んだ白い歯で唇を優しく齧り、柔らかく食み、舌を絡めて唾液を混ぜる。
余すところなく互いの口腔を味わって、唇が離れる頃には、ユーシーはすっかり息が上がっていた。膝は震え、ルイにしがみついていないと立っていられなかった。
こんなに、溶けそうなキスをしたことなんてなかった。頭の芯まで痺れて、ユーシーはぼんやりとルイを見上げた。
熱の籠った視線を浴びると、心臓がおかしくなったみたいに大きく脈打った。
ルイの指が唾液で濡れた口元を拭っていく。
「続き、してもいい?」
「ん」
小さく頷いたユーシーに笑みを返し、ルイはユーシーを優しく抱き上げた。ユーシーの身体がふわりと浮く。
ルイの温かな腕に抱えられ、ユーシーはバスルームに運ばれた。大理石の床にそっと下ろされ、服は残らず剥ぎ取られ、白い肌いっぱいに描かれた刺青が晒される。
いつか、ドレスのようだと褒められた美しい模様は、変わらず肌を彩っていた。
ルイもスーツを脱いでいく。締まった身体が露わになる。
傷ひとつない美しく逞しい身体をぼんやりと眺めていると、抱き寄せられてガラス張りのシャワールームに導かれる。
向かい合って、温かなシャワーを一緒に浴びた。降り注いで肌の上で弾けるぬるま湯の雫が心地好かった。
ルイの手が、ユーシーの肌を彩る絵をなぞっていく。その手は繊細なものに触れるように優しいのに、隅々まで暴くような貪欲さを孕んでいた。
ルイの指先がまだ幼い色をした胸の肉粒を撫でると、ユーシーはくすぐったそうに身を捩って笑った。
「綺麗な色」
屈んだルイが胸に唇を寄せ、赤い舌が慎ましい肉粒をくすぐる。濡れた音を立てて吸い上げられると腰が震えた。
唇から解放された肉粒は充血して白い胸の上で小さく震えていた。
ルイの指先は臍を撫で、その下の下生え、頭を跨げた性器へと伸びる。
「触ってもいい?」
「ん」
「ふ、こんなに涎を垂らして」
シャワーから落ちた雫とはまた別の、うっすらとろみのある体液が丸く張った先端を濡らしていた。
ルイの指先は先端から溢れるカウパーを塗り込めるように先端を撫でる。それだけでユーシーの腰は跳ね、甘い熱を乗せた波が全身に広がる。
「ん、っく、う」
ユーシーは薄い唇を噛む。それを咎めるように、ルイは赤くなった耳に唇を寄せて甘やかな声を流し込む。
「シャオユー、声、聞かせて」
耳殻をくすぐる吐息に、ユーシーの身体が小さく震えた。
「あ、う、ルイ」
ルイの手の動きに合わせて、湿った音がする。その後は狭いシャールームに響いて、ユーシーを聴覚から犯していくようだった。
ユーシーが身を捩っても、ルイの手は止まることはない。すっかり芯を持ったユーシーの性器はルイの手に包まれて上下に擦られると、背筋を甘い痺れが駆け上がる。
甘い声が勝手に漏れるのを止められない。
身体はどこも力が入らず、ユーシーはルイにしがみついた。
ユーシーの双眸が蜂蜜色に蕩ける。
「んあ、ルイ、気持ちい」
ルイの手の動きに合わせて、はしたなく腰が揺れる。ルイは楽しげにそれを眺めている。
「はぁ、あ、っ」
段差から先端を握り込まれ、磨くように小刻みに擦られるとユーシーの声は一際甘くなった。先走りを塗り込めるような手の動きに、腰が跳ね、太腿が震えた。腹の底から、熱いものが上がってくる感覚に、思わず足の指を丸めた。
「ふあ、っい、く」
「ん、いっていいよ」
とろりと流し込まれた甘い囁きに誘われるまま、ユーシーはルイの手の中で熱い白濁を吐き出す。何度も迸る熱い白濁がルイの手を汚し、余韻に震える幹を垂れ落ちていく。
「ふふ、たくさん出たね」
ユーシーの吐き出した白濁で汚れた手を、ルイが舐め上げる。
「っ、不味いだろ、そんなの」
「シャオユーの身体で、不味いところなんてないよ」
「ふ、なにそれ」
「僕の知ってるシャオユーは、どこもかしこも美味しいんだ」
ルイの唾液で濡れた指が双丘を割り、期待にひくつく窄まりに触れる。
「シャオユー、中、準備するよ」
「ん」
ユーシーはルイにしがみつく。濡れた肌に体温が馴染んで、触れているところから溶け合うようだった。
ルイの指が震える蕾を優しく撫で、こじ開けていく。
散々レイを受け入れた蕾は未だ柔らかく綻び、ルイの長い指を容易く飲み込んでいく。
「柔らかいね。これは誰の仕業?」
ルイの声が耳元で響く。レイとの行為を知られたらお仕置きをされるかもしれないと、貪欲なユーシーの身体は期待に震えた。
「ん、あ、おれの、兄貴、みたいなひと」
「ふふ、妬けるな。今日は僕だけに愛させてくれる?」
「ん、いいよ」
「もうこのままでも良さそうだけど、念のため、ね」
腹の中にぬるま湯を注がれて確認程度の洗浄を終えると、中にたっぷりとローションを注がれる。温感ローションらしきそれは、じんわりと胎の中を温める。
ルイの手ですっかり高められ、受け入れる準備のできた身体を柔らかなバスタオルに包まれ、抱き上げられてベッドへ連れて行かれた。
ルイにそっとベッドに下ろされると、皺なく張られたシーツがユーシーの体に沿って緩く波打った。
金色の薄明かりの中、ルイはユーシーの視界を奪うように覆い被さる。
「シャオユー、君のこと、もっと教えて」
見上げたユーシーの視界には、もはやルイ以外に映るものはなかった。
ルイの唇が、顔中に、身体中に降る。
もう知らない場所などないであろうユーシーの白い肌に強く吸い付き、引き攣るような微かな痛みと共に、刺青越しに赤い跡を残していく。
白い肌に描かれた模様に浮かぶ赤は、植物の紋様と相まって花のようだった。
「るい、跡」
「ごめん、シャオユー、いっぱい、つけたい」
「ん、いいよ」
首筋に、鎖骨に、胸に、腹に、内腿に。身体中にルイの欲望の証が刻まれる。所有の証のように白い肌に刻まれた赤に、決して紳士的な態度を崩さないルイの独占欲を垣間見た気がして、ユーシーの胸が高鳴る。
「ふふ、しばらく試合出れねーな」
「ごめん」
「いいよ。その代わり、起きられなくなるくらい、抱き潰して」
「シャオユー、優しくするね」
優しくなんてしなくていい。ルイの与える濃くて甘い暴力的なまでの快感を、ユーシーは全身で浴びたかった。
拓かれた最奥まで塗り込められた快感に何もかも溶かされる。
ただ快感を貪るための行為への期待に、胎が疼く。
「ルイ、はやく」
焦れて、はしたないとわかっていても甘えるような声を上げてしまう。
そんなユーシーを窘めるでもなく、ルイはその先を教えるようにユーシーの震える太腿を撫でた。
「足、抱えて」
ルイに促されるまま、ユーシーは膝裏に手をかけ、自らの手で蕾も、花芯もルイの目の前に晒す。
自ら痴態をルイに晒していることに、ユーシーの身体は昂り吐息を熱く濡らす。
「そう、上手だね」
甘く響く声が聞こえる。ルイの視線が柔らかく肌を這う気がして、ユーシーは息を飲んだ。それだけで体温が上がり、芯を持って天を仰ぐ花芯が震えて透明な雫を溢す。
ルイの逞しい屹立がひくつく窄まりに宛てがわれ、期待に震える後孔は誘うように先端にしゃぶりついた。
ルイは焦らすように押し付けては離し、ローションを塗り広げるように窄まりをなぞる。自身にもたっぷりとローションを垂らし、ゆっくりと押し入ってくる。
窄まりの皺を伸ばして、雁首が収まる。次いで幹が半分ほどおさまったところで、ルイは動きを止めた。
「痛くない?」
「ん、う」
ルイがゆっくりと腰を引く。中を引き出されるような感覚に、ユーシーは甘い声を上げた。
しこりを弾かれ、喉が引き攣る。
「ひ、あ!」
ルイの雁首が前立腺を抉ると、ユーシーの身体が跳ねた。
「ここ?」
ルイが確かめるように腰を揺する。
「あ、そこ、っあぁ」
張り出した部分に熟れたしこりを優しく弾かれ、ユーシーはあられもない声を上げてびくびくと全身を震わせる。はしたなく勃ち上がった性器は震えながら先走りをとろとろと垂らす。
「っあ、変、また、いって」
「いいよ、たくさんいって」
「んう、あ、ぁ」
腰が揺れて勃ち上がった性器が揺れるばかりだった。中はおかしくなったのかと思うくらいにきつく締まって、ルイの逞しい幹に絡みついた。
視界が白くちらつく。脚は勝手に跳ねて、意識は快感に染め上げられる。
「ふふ、出さないでいけたね。いい子」
「っあ、や、あ」
声を震わせるユーシーは絶頂から戻ってこられない。浅い呼吸を繰り返して胎の中を収縮させ、ルイを食い締める。
やがて不規則に何度も跳ねた身体が緩んだ。
「うー、ルイ、おく」
レイに散々お預けを食らった記憶がまだ鮮明に残っている。
早く、もっと奥まで暴かれて、いじめられたい。
「ふふ、シャオユーは奥の方が好きだもんね」
応えるようにルイが腰を進め、奥にルイの先端がぴったりとはまる。
それでもまだ、奥があるのをユーシーもルイも知っている。
「シャオユー、もう少し、ね」
あやすような甘やかな声とともに、優しく奥の襞を捏ねられて、ユーシーの襞は喜ぶようにルイの先端にしゃぶりつく。
丸く張った先端がキスするように押し付けられては離れ、肉輪は徐々にその口を開き始めた。
そして。
ルイが一際強く突き入れた。
「あ、う」
何が起きたのか、言われなくてもわかる。胎の一番奥に、ルイの先端が潜り込んだ。
ユーシーの視界には何度も星が瞬いて、頭の中は一瞬で快感に染められる。神経が灼けるようで、動けない。身体は勝手に強張って、喉を晒し、背がシーツから浮く。
待ち望んだ感覚に、全身を歓喜が駆け巡っていた。ずっと欲しかった一番奥まで、ルイに埋められている。最奥は迎え入れたルイの先端をしゃぶるように吸い付く。
腹が熱く濡れた。
根元までルイが収まって、尻にルイの下生えがざらりと当たる。
「シャオユー、中も、甘えん坊だね」
ルイの声をどこか遠くに聞きながら、ユーシーは快感の波に飲まれ、ただ身体を震わせるしかできないでいた。胎から生まれる快感が全身を染めて、どこも満足に動かせない。
「は、全部持ってかれそう」
ルイの切羽詰まった声がして、視線をそちらに向ける。わずかに眉を寄せ、目を眇めて唇を舐める様子は獲物を前にした猛獣のようで、ユーシーの胸が甘く締め付けられる。初めて見る、ルイの余裕のない顔だった。いつも笑みを絶やさない彼の獰猛な一面を垣間見た気がして、ユーシーの胸は高鳴りを隠しもしない。
もっと、一番奥まで食らい尽くしてほしい。
「シャオユー、少し、強くするよ」
ルイの甘やかな低音が獰猛な音色を帯びる。甘える粘膜を振り切るように腰を引かれ、縋り付く粘膜ごと引き出されるような感覚にユーシーは甘く啼いた。
ルイのストロークが大きくなり、最奥を力強く突き上げられる。逞しい屹立の張り詰めた先端が熱く熟れた粘膜を叩き、蹂躙していく。
「ひゃ、なか、ぁ、ぜんぶ、きもちい」
ルイが快感を追うだけの荒々しい動きにもユーシーの身体は快感をつぶさに拾い上げ、歓喜の声を上げる。
しこりを抉り、襞を捲り上げて最奥を押し上げる。内臓を捏ねられる感覚も、もはや快感でしかない。
うっすら開いた唇からは、言葉の体をなさない、甘い声と荒い吐息ばかりが漏れる。
「ふ、これで感じてくれるの、嬉しいな」
ルイの囁きを、ユーシーはもはや理解できないでいた。ただルイの甘やかな笑みを見て、自分も表情を緩めるだけだった。
「いくよ、シャオユー」
ルイが額に張り付いた髪を払い、汗ばんだ額を撫でる。
ユーシーは濡れた琥珀色を細めた。
腹の奥でルイが脈打つ。熱いものが吐き出され、柔い最奥に打ち付ける。腹の中がきつくルイを締め上げた。
ぼやけた頭は多幸感に埋め尽くされ、腹の上には、熱いものが散った。
いつの間にか潮を吹いていた。
それでもルイは止まらず、濡れた最奥を掻き回され、腹には何度も吐き出した体液が溜まって小さな水溜まりのようになっていた。
いつ気を失ったのか、覚えていない。
ただずっと気持ち良くて、ユーシーはルイの名を呼び続けた。
その度にルイは微笑み、その優しい手で撫でてくれた。
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