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第21話 仕事の後のご褒美
ビルを出たユーシーはその足でジンの元に向かった。
時刻は日付が変わって間もなく。ユーシーは通りに出てタクシーを捕まえ、行き先を告げた。
タクシーは眩く輝く夜の街を駆け抜ける。ユーシーは緊張感の抜け切ったぼんやりとした頭で煌めく街を眺めた。色とりどりのネオンと、絶えない人の流れ。見慣れた景色だった。
ジンのマンションから少し離れた場所でタクシーは静かに停まった。ユーシーは代金を払い、降りると湿度の高い夜の街を歩いた。
汗の滲む身体に、仕事終わりの熱の波がじわりと広がっていくのがわかる。吐き出す息は熱を帯びて、熱の籠る夜の街に溶け出していく。腹の深い場所がずくずくと熱を持って疼き、呼吸が勝手に荒くなる。
マンションに入り、エントランスを抜け、エレベーターに乗り込む。
見上げた階数表示がのんびり切り替わっていくのがもどかしい。階に着くなり開くボタンを押して、ユーシーは足早にジンの部屋に向かう。
ざわめく胸とは対照的に、夜更けの廊下は静かだった。
呼び鈴を押すと、少ししてジンが出てきた。
「どうした?」
少し眠そうな声で招き入れてくれたジンに、ユーシーはスニーカーを脱ぎながらぼそりと告げた。
「片付けてきた」
「は?」
ドアが閉まる。ジンは動きを止め、信じられないものを見るようにその深い茶色の目を見開いた。そんなジンの目を気にするでもなく、ユーシーは続けた。
「四人いたから、四人やったけど」
「おいおい、早すぎだろ。正気か?」
ジンはドアに鍵をかけると、独り言のように漏らす。その言葉には驚きの色が濃く現れている。
「だって、いけそうだったから」
持ち上げた視線をジンに向け、ユーシーは薄い笑みを浮かべた。
そんなのは嘘だった。早く片付けたくて、強行突破した。本来なら一日は下調べをするが、その時間すら惜しかった。
早く、抱かれたかった。持て余した熱を、早く吐き出したかった。
「あんまり無茶するなよ」
黒い絹のような髪を掻き回すように撫でられた。ジンの手の温もりに、ユーシーは表情を緩めた。
視線に、熱が籠る。ジンも、それには気付いているはずだ。
玄関での挨拶もそこそこに、ユーシーはリビングに案内された。
奥のソファに腰を下ろしたジンの前のテーブルに弾の減った銃とナイフと、男たちからくすねてきたメモと写真を並べる。
「八階、十階、屋上に一人ずつ。あと帰り際に一人、連絡係が来たからやった」
「……よくやったな」
ジンは一通り銃を確認して、ユーシーの奪ってきたものは大ぶりな茶封筒にまとめ、傍らのキャビネットにしまった。
代わりに、ジンの懐から小ぶりな茶封筒が差し出される。いつもより厚みがあるそれが、静かにテーブルに置かれた。
「報酬だ」
「ありがと」
ユーシーは中身を確認してポケットにしまう。
「ユーシー、来い」
ソファに深く腰掛けたジンに呼ばれ、ユーシーは立ち上がり、ジンのそばに行く。
ジンの目の前に立つと、長い腕に優しく抱き寄せられた。膝立ちでソファに乗り上げた身体を、しっかりと抱きしめられる。
「ほんと、よくやるよ、お前は」
「ジン」
「よく帰ってきたな。いい子だ」
ジンの声は、子どもを褒めるみたいに穏やかだった。こんなふうに優しく褒められるのはいつぶりだろう。ユーシーは自然とその表情を綻ばせた。
「へへ」
「ご褒美、やる約束だよな」
ユーシーを抱きしめた腕を緩めて見上げるジンの笑みは、見たことのないくらい甘やかで、ユーシーの胸が高鳴る。
「小汚ェ顔。風呂行くぞ」
ジンの指先がユーシーの頬を擦った。
屋上でやり合って転がったせいで、髪も服は埃だらけ、顔も汚れていた。
ユーシーはジンに手を引かれ、バスルームへ連れて行かれる。汚れた服を脱がされ、バスタブに湯を張る間に全身を丁寧に洗われる。腹の中も洗われ、準備が終わる頃にはバスタブにお湯が張られていた。
ジンも脱いで、二人でバスタブに浸かる。こんなのいつぶりだろう。この仕事をするようになってから、こんなふうに一緒に風呂に入ることなんてなかった。
温かなお湯に肩まで浸かって後ろから抱き込まれる。こうやってただ触れ合うだけなんて今までなくて、ユーシーはいたたまれない。いつも以上に後ろにいるジンを意識してしまう。
「なあ、ジン、早くしたい」
ユーシーの手が、後ろ手にジンの性器を緩く揉む。
「バカ、ここでしたらのぼせるだろ」
ユーシーの手を取り、ジンは抱き寄せる。
「ベッドでゆっくりしてやる」
耳元に吹き込まれた甘やかな響きに、ユーシーの心臓は跳ね、腹の奥が甘く疼いた。
ジンに抱えられたまま風呂から上がり、バスタオルを被せられ丁寧に拭き上げられる。ジンの身体も拭き終わると、抱き上げられベッドに連れて行かれた。
整えられたシーツに降ろされたユーシーと、向かい合うようにしてジンが胡座をかいて座る。
風呂上がりの温かな身体に、ひやりとした空調の効いた空気が心地好い。
「ほら、勃たせてくれよ」
ジンに言われるまま、ユーシーは未だ静かなジンの性器へと手を伸ばす。こんなことを言われるのは初めてで、くすぐったかった。ユーシーはまだ柔らかいジンを両手で包んで根本から先端へと動かす。
「あ、ジン、の、でかくなっ、て」
ユーシーの手の動きに合わせて、手の中で育っていく熱いジンの刀身。自分の手でジンが昂っていくのが見えて、甘い充足感で胸が満ちる。ジンの熱い昂りに触っているだけで、ユーシーの背筋をぞくぞくと甘い痺れが駆ける。
いつのまにかジンの手もユーシーの性器に絡んでいた。
「あ……ぅ、ん」
喉が鳴る。涎が止まらない。
ジンの手がはっきりと芯を持ったユーシーの性器を撫で扱く。すでに透明な先走りを垂らしているユーシーのそれは、ジンの手が動くとひくりと反応して先端の裂け目から涎を溢れさせる。
自分の身体のはしたない反応に頬が熱くなる。
「じん」
「どうした、手が止まってるぞ」
言われた通り、ジンに翻弄されるユーシーの手はジンの刀身を柔く握るだけで、ろくに動いていなかった。
「ジン、っあ、いく、っう」
「出せよ」
誘うように甘いジンの声に、ユーシーは身体を強張らせる。ジンの手の中で熱いものが爆ぜる。何度も脈打って、熟れた白濁が散った。
「っは、ぁ」
「早いな、溜めてたのか?」
ジンが蕩けたユーシーの顔を覗き込む。
「そ、だよ、バカ」
ユーシーは放出の余韻でふらつきながらジンにしがみつく。寂しかった。抱かれたかった。そんなどうしようもない自分を、受け止めてほしかった。だから、無茶なことをしてでも、ジンに抱いてほしかった。
きっと、ジンもそれをわかっている。
「お前はほんと、寂しがりだな」
弟を揶揄うようなジンの声。いつもは冷たく鋭いその声が甘さを帯びて、ユーシーの鼓膜をくすぐる。
「ユーシー」
「ン」
ジンはシャオユーではなく、ユーシーと呼ぶ。時々揶揄ってシャオユーと呼ぶ以外は、ユーシーと読んでくれた。弟のような自分を、対等に扱ってくれているみたいで嬉しかった。
緩んだ口元に、自分の吐き出した白濁に塗れた手を差し出される。
ユーシーは何の躊躇いもなく、その手にしゃぶりついた。自らの吐いた白濁を舐め取っていく。ジンの骨張った手に、ユーシーは丁寧に舌を這わせていく。
「ジン、はやく」
ユーシーは濡れた音を立てて指先を吸い、甘く歯を立てて上目遣いでジンを見上げる。
ユーシーの視線を受け止めたジンが目を細めた。暗い色の双眸に、明らかな欲情を滲ませて。
ジンはユーシーの華奢な身体をシーツに横たえた。黒い絹のような髪がシーツに散る。レースを纏ったような刺青は変わらない美しさでユーシーの白い肌を飾り立てていた。
ジンの目が首筋に落ちる。
「派手に跡つけやがって。あいつか?」
いつもは涼しげなその声が、嫉妬を滲ませたような、熱を孕んだものになる。そのギャップに、ユーシーは心臓の裏を炙られた。
ジンが言っているのはルイのことだ。ユーシーの肌に刻まれた消えかけの跡を、ジンが指先で撫でる。気付かれないで済むとは思っていなかった。それで酷くされるなら、それでもよかった。
「ん、そう」
「行かなくていいのか?」
ジンは目を細め、わざと言った。ユーシーにもそれはわかった。
ルイに会えなくて、それでも誰かに抱かれたいユーシーを、受け止めてくれるのがジンだった。
「……ジンがいい」
ここまできて、そんなこと言わないでほしい。今、ユーシーが縋ることができるのはジンだけだった。
ジンはそれもわかって言っている。ジンはそういう男だ。
ユーシーの縋るような視線を受け止めて、ジンは笑みを深めた。
投げ出された脚を膝裏に手をかけて持ち上げられ、腰が浮く。
「ちゃんと息しろよ」
「っ、う」
期待に震える窄まりに押し当てられたジンの鋒は熱く、それだけでユーシーを昂らせ、薄い唇からは消え入りそうな甘い声が漏れた。逸る心が胸を高鳴らせる。
ジンはユーシーのしゃぶりつく後孔にゆっくりと先端を埋めていく。
張り出した部分が前立腺を引っ掻くと腰が震えた。
ジンは何度も往復させ、熟れた前立腺を虐める。その度にユーシーは甘く溶けた声で啼いた。
「奥、しなくていいのか?」
浅瀬だけで甘い声を上げるユーシーを見て、ジンが笑う。
「ん、する、けど、も、少し」
ユーシーは声を震わせた。前立腺を小刻みに弾かれるたびに、身体を跳ねさせながら腹の奥から生まれる快感に浸る。
そんなユーシーを揶揄うように、ジンが腰を突き上げた。
「ひあ」
不意打ちにユーシーの身体が跳ねた。
「ほら、どうした?」
「っあ、ぁ」
ジンの突き上げに、ユーシーは身体を大きく弾ませる。浅瀬から奥まで、中を抉るように擦られて、声が止まらない。
シーツに爪を立て、絶えず湧き上がる快感をどうにか逃がそうとするが、それよりも簡単に快感が上回ってユーシーは泣きそうな声を上げて揺さぶられる。
「ふあ、じん、きもちい」
ぶれる視界に映るのは、涼しげな目を澱ませ、わずかに眉を寄せたジンの切羽詰まった顔だった。ジンが自分で快感を得ていることが、堪らなく嬉しい。
「じん、は?」
「ああ、気持ちいい」
「へへ」
いつも涼しげなジンが欲に濡れた顔を見せてくれるのが嬉しくて、ユーシーはへらりと笑う。言葉で聞くと、それは何倍にも膨れ上がる。
「じん、ぅあ、キス、したい」
ジンの手が、額にかかる髪を払う。汗の滲む額を撫でられ、視線が絡む。
「ジン」
「ふ、かわいいな、お前」
唇が重なって、離れる。触れるだけのキスに、ユーシーは物足りなくて乞うようにジンを見上げた。
「なんで、もっとして」
「欲張りだな」
角度を変えて、何度も唇が重なる。ユーシーは離れたくなくて腕をジンの首に回す。悪戯に舌でジンの唇をなぞると、咎めるように舌を絡め取られきつく吸い上げられた。
脳まで痺れるようで、ユーシーは思わず甘い声を漏らす。
いつもなら、こんなにキスしないのに。ルイに嫉妬しているのなら、それはそれで嬉しかった。
ユーシーは口の中に溜まった二人分の唾液を飲み込む。
「は、ジン」
唾液でとろりと濡れた唇でジンを呼んだ。
「ジン、奥、虐めて」
「酷くされたいのか?」
ジンが目を細め、ユーシーの意思を確かめるように琥珀色を覗き込む。
こんなとき、どう言えばいいのか、ユーシーは知っていた。
「やだ、きもちよくして」
甘く掠れた声でユーシーが答えると、ジンはもう一度触れるだけのキスをした。
抜けるギリギリまでジンの刀身が引かれ、ローションが足される。
膝裏に手を入れてユーシーの身体を折り曲げ、深くまで責める体勢になったところで、ジンは一気に奥まで突き入れた。
「あ、は、ぁ」
鋒が奥の襞に行き当たった。ジンは優しく突き、捏ね回して襞を責め立てる。
「あう、んぁ」
「欲しい欲しいってしゃぶりついて、ここまででいいのか?」
ジンの言う通り、ユーシーの肉襞は小突かれ、捏ねられて、甘えるようにジンにしゃぶりつく。
最奥を責められる快感を知る身体は、ひと突きごとに緩んでいく。
「ん、っひ……ぁ」
緩んだところを力強く突かれ、ぐぽんとくぐもった音を立ててジンの鋒がユーシーの最奥に嵌まった。
視界がぱちぱちと白く弾ける。
息をするのも忘れて、身体が快感に、歓喜に染め上げられる。
「まだ、気をやるなよ」
ジンの低く掠れた声が聞こえた。快感の嵐に途切れそうな意識を繋ぎ止めるのは、ジンの温もりと、絶えず浴びせられる快感だった。
ジンが腰を揺らす。
張り出した部分が何度も襞を出入りする。引っ掛かっては捲れて、その度にユーシーは絶頂へと押し上げられる。
飛びかけた意識は新たな刺激に引き戻され、いつまで経っても快感の嵐から逃れられない。
吐き出した精液やら潮やらで胸から顔にかけてひどい有様だった。
「ひでぇ顔」
ジンの苦笑が見えた。
「んあ、おく、出して」
「わかったよ」
ジンが襞を嬲り、最奥を突く。はらわたを捏ねられるような違和感はすでに快感で上書きされていた。初めてこれを教えたのは、ジンだ。ユーシーの一番深いところに快感を教えたのはジンだった。
しゃぶりつく奥を堪能して、ジンは熱い白濁を放った。何度も最奥に叩き付けるジンの熱を感じながら、ユーシーの最奥は歓喜するようにしゃぶりついた。
ユーシーの身体が緩み、シーツに投げ出される。
ジンは未だ収斂を繰り返すユーシーの中でじっと落ち着くのを待っているようだった。
「すごいな、まだいってる」
ジンの骨張った指が汗で張り付いた髪を払う。ジンが額にキスを落とすと、ユーシーは蕩けた笑みを浮かべた。
中が熱い。腹の中はずっといっていた。
「気が済んだか?」
「ん」
優しく頭を撫でられ、ひどく満ち足りた気持ちでユーシーは意識を手放した。
目覚めるとバスルームだった。薄明るい、暖かなバスルーム、お湯の抜けたバスタブでユーシーはジンに抱えられ、後孔を掻き回されていた。
「ん、あ」
「起きたか」
ジンに抱かれてそのまま気を失ったのだと思い出す。何故バスルームにいるのかすぐには思い至らず、ユーシーは瞬きを繰り返した。
「じん、なに、して」
「後始末だよ。中に出しただろ」
言われて思い出したところで、ジンの指が後孔を拡げる。中の温度の馴染んだ体液がとろとろと溢れてきて、ユーシーは思わず声を上げた。
「あ、う」
ジンはユーシーが中に出されるのが好きなのを知っているし、ねだれば出してくれる。それでも、ジンとするのは久しぶりで、せっかく出してくれたそれがもうなくなってしまうのが寂しかった。
「少し我慢しろよ」
ジンの指が、中の白濁を掻き出していく。中で蠢く指に快感を見出して、ユーシーはジンにしがみつく。体温に染まった白濁が粘膜を伝い落ちるのが、堪らない。とろりと垂れ落ち、皮膚を伝う熱い感覚にユーシーは身体を震わせる。
「ほら、終わったぞ」
温かなシャワーで洗い流され、清められたが、ユーシーは離れようとしない。
「風邪ひくぞ」
「う……」
ユーシーは幼子のようにジンにしがみついた。
「ユーシー」
ジンに促され、ユーシーはもぞりと腰を揺する。刺青が美しく彩る腹の下では、愛らしい色の性器が兆していた。ユーシーは、なんとか誤魔化したかったようだが、ジンもそれに気付いていた。
「ベッドでしてやる」
低く甘い声とともにバスタオルに包まれ、ユーシーはまたベッドへ運ばれた。
先程までの情事の跡の残る波打つシーツにユーシーが下ろされる。ひやりとした感触が、熱を上げる身体には心地好かった。
ジンは胡座をかいた脚の上にユーシーを抱き上げた。背中が、ぴったりとジンの身体に触れて、そこからジンの体温が伝わってくる。
天を仰ぐユーシーの性器にローションをまぶし、ジンはその大きな手で包んだ。
「あ」
ローションの立てる粘ついた音とともに、輪を作ったジンの節くれだった指がユーシーを扱く。
段差を何度も引っ掛けられ、丸く張った先端は親指の腹でくるくると撫でられた。
「ふ、あ、じん、きもちい」
ジンには弱い部分は全て知られている。簡単に高みに押し上げられて、ユーシーは背をしならせた。
肌が触れ合う部分で混ざる二人分の体温がユーシーの心を蕩かす。
「ほら、いけよ」
ちょうど良い力加減で擦られ、先端を爪先で引っ掻かれると、すっかり昂ったユーシーは簡単に吐精した。
何度も脈打ち熱い白濁を放って、余韻に揺られながら甘く満たされて、ユーシーは再び意識を手放した。
ユーシーが目を覚ましたのは翌朝だった。
布団の中の一糸纏わぬ身体は正面からしっかりとジンに抱かれていて、目の前にはジンの胸板がある。頭の下にはジンの腕が置かれて、ジンの温もりに包まれていた。
ジンも裸で、触れ合ったところで体温が混ざり合う。昨夜の情事を思い出して思わず身体を引くと、ジンが目を覚ました。
「ユーシー」
滅多に聞くことのできない、ジンの寝起きの甘やかな低音がユーシーを呼んだ。
見上げれば、ジンは眠そうな目でユーシーを見ていた。その目は普段とは比べ物にならないくらい優しく穏やかだった。
「おはよ、ジン」
ユーシーは久しぶりに見るジンのそんな姿に心臓を震わせた。
「早起きだな」
「何時?」
「……九時」
ベッドサイドの明かりの下に置かれた腕時計を見てジンが言う。
随分と早い目覚めだった。いつもなら、まだぐっすり眠っている時間だ。
「まだ眠いなら寝てろ」
ジンの手が頭を撫でる。温かくて、ユーシーの瞼は自然と落ちていく。
「ん」
そのまま昼まで寝て、起きてからは久しぶりに一緒に食事をした。
シン婆の店に二人一緒に行くのも久しぶりだった。
食事の後も、ジンはユーシーを構ってくれた。市場を一緒に歩いて、買い物をして、ユーシーが部屋に帰ったのは夜も更けた時刻だった。
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