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第4話【歩みを阻む悪夢】
寝苦しいほど、息が出来ないほど、全身が鉛のように頭重感を感じる。
目を開けようとしても重たい瞼は上がらない。そもそも私は寝ているんだろうか。
無数の腕に四肢を絡みつかれ、逃げてはならないと言葉で縛り付けられる。
そんな感覚を延々と感じ続けては身体も脳も、心まで腐り果ててしまいそうになる。
嗚呼、このまま心まで腐り果てて、死んでしまってもいいかもしれない。
それで、自由になれるというのなら─────────。
─────同時刻 宿屋
ピチャ、ピチャと水音が聞こえる。
まるで締めた蛇口からいつまでも水が滴り落ちるような、不快な音。
随分と寝ていた気がするが耳障りな音を聞いてハッと目を覚ましたアルフレッドは上体を起こすと眼を擦る。
「……オリヴィエ、さん……?」
そういえば共に旅をするようになったあの人は寝れているだろうか。
オリヴィエに声をかけてもらったまでは覚えているか知らない間に眠ってしまったようで、その後、手洗いに目を覚ました時は少し寝苦しそうに眠っているように見えた。
あの時はずらされた上布団をかけて「おやすみなさい」と頭を撫でて寝た気がする。
今は落ち着いて眠れているだろうか、大丈夫だろうか。
しかし、ピチャピチャといつまでも続くこの音はなんだ。
アルフレッドが寝ている間にオリヴィエが目を覚まして水でも出したのだろうか。
しかし、この部屋には手洗い場なんてものはなかったはずだ。部屋を出て少し離れた場所にあるはず。
ではなんだ。
そう眠たい目を擦ってアルフレッドはオリヴィエの方を見ると何か泥のようなものに覆われた人間の成れの果てのような生き物─────否、化け物がオリヴィエに覆い被さっている事に気付く。
「な…っ!お前、一体何なんだ!」
「……う、ぅ…し、な……せ……」
寝間着姿であった為、すぐに臨戦態勢に入ろうとしても剣は離れたところに立てかけている。
オリヴィエは起きているだろうかと目を見張るとどうやら寝苦しそうに呻き声を漏らして青ざめた顔を伺えるだけ。
(あの、化け物はいったいどこから…っ、しかし見た事ないタイプだ…)
化け物の多くが獣の姿をしたモノが多い。いずれも獣の成れの果てと呼ばれているが、この人間の皮膚が腐敗し爛れ泥に覆われたようなおぞましいモノは新種の化け物だろうか。
判断はつかないがベッドから這い出て剣を取ると身構える。
『オ、ォ……オ、ォ…ゴ、ロ……』
何か唸り声のような音を発する化け物は敵意を露わにするアルフレッドに顔を向ければ手を伸ばす。
ゆっくりとした動き。これならば避けれる、そう踏んで体を一歩前に出し、横に避けては剣を振るう。
だが予想外にも伸ばされた腕はそのまま直進する事なく、カクンと肘関節が横へと曲がったように横へと薙ぎ払われ、アルフレッドの剣を払った。
「ん…っ!知性はある…?」
明らかに獣型の化け物とは異なる。此方の動きを読んで動く姿にアルフレッドは眉を顰める。
優れた能力を持たないアルフレッドからすればただがむしゃらに剣を振るうしか術はない。試しに剣を無茶ぶりに振るえば全て弾かれ、何なら剣を掴まれて投げ飛ばすように壁へと叩きつけられる。
「ぐ、ぅッ!!」
ダンッと壁に叩きつけられ背中から全身へと痛みが走る。
まさか此処まで不利になるとは予想はしていなかった。いまだオリヴィエが目を覚ます様子はなく、一人でこの化け物を相手にするにはかなり分が悪かった。
だからこそ、アルフレッドはオリヴィエを呼び覚まそうと声をあげる。
「お、オリヴィエさん!目を覚ましてください、化け物が目の前に…ぐぅ、あっ、がはッ!?」
腕を掴まれ、再び勢いよく壁にダンッと大きな音を響かせて叩きつけられる。
流石にこの音を聞いて隣部屋に泊まる客人は驚きを隠せないだろう。だが、誰かが見に来る事も声が聞こえる事もない。
いったいどうやってこの化け物が入ってきたのか、そしてオリヴィエが一向に目を覚ます事がないのか。
「ど、うして…目、を…!」
流石に何度も叩きつけられては骨が折れたのか全身が悲鳴を上げ始める。
内側から崩壊していくような痛みに指先まで震えて落ちた剣を拾う事すらできない、そんな非力なアルフレッドを前に化け物は再び手を伸ばす。
『オ、ォ…シ、ヌ…ベ、キ……シ、ジャ…ス、ル…オ、マ……ケ、ス……』
手が眼前に伸び、頭を鷲掴んだ時、言葉にも似た音を発した。
それが一体何を意味するのか分からないがぐらり、と視界が大きく揺れて頭から持ち上げられた事に気付くとアルフレッドは足をばたつかせて抵抗する。
「は、なせ…!ぼ、くはオリヴィエさんを…ッ、守るんだ…!」
いくら抵抗したところでなんともならない。グワリと大きく広げられた口に運ばれ今にも飲み込まれそうになるとアルフレッドはギュッと強く目を瞑る。
なんとかして逃げる術を探さなければ。しかしどうすれば─────。
「破ァッ!!」
ドゴォンッ!!と爆風と共に耳を劈くような音を爆音が部屋の玄関から横殴りで入ってくる。
目で捉える事すら叶わないほどの凄まじい真空刃が飛べばたちまち、化け物の胴体が上下で綺麗に真っ二つに引き裂かれた。
ボテッと床に叩き落されたアルフレッドはゆっくりと這い上がり、顔をあげる。扉を衝撃波で粉砕して入ってきたのはいったいどこの誰だろうか。
それを視認すると白髪の小柄な男性が杖を手に入ってきたのが見える。
「……失礼する、此方がアルフレッド・オルブライト殿が宿泊されている部屋で間違いないか?」
堅苦しいその物言いにピリリッとした緊張が走る。
「は、はい!ぼくがアルフレッドです!」
すぐに名乗り出ると彼は部屋の中に足を踏み入れ、ベッドで横たわり魘されるオリヴィエを見れば腕を組んで化け物へと視線を送る。
「ふむ…、思うたよりも深刻であった、か。王が眠ってからこのような事になったのか?」
「お、王?え、ええ、そうですね…寝る前から顔色が良くなくて…」
「それは心病に取り憑かれ患ったゆえに」
「しん、びょう…?」
見慣れぬこの男が発する言葉は全て聞き覚えのない言葉ばかりでアルフレッドは首を傾げるばかり。
心病とはなんだ、この化け物とはなにか関係があるのか。全く何も読めない状況だが男が組んだ腕を下ろし、手に持っていた杖を横に振り払い、これまた強力な風圧で化け物を木端微塵に叩き潰す。
たった一瞬でアルフレッドが苦戦していた相手を消し飛ばすこの人物はいったい誰なのか。
自分を置いて話が進んでしまう事にアルフレッドは頭を抱えていると部屋の外からドタドタと大きな足音を響かせて部屋に向かってくる者がいた。
「お、おい、ユヒィ将軍!勝手に入るなよ、っていうか此処まで暴れたら誰が弁償するってんだ!」
何やら大きな荷物を担いで走ってきたのはカルヴァン・サルヴァンタだ。
アルフレッドは苦手な人でもあるカルヴァンの突然の来訪にヒュッと息の根が止まりそうになるが何やら布を俵を運ぶように脇腹に抱えているのを見て再び首を傾げる。
「弁償はそなたがするのだ。それよりもこの若者が全くもって話がついていけていない様子、ひとまずここは危ないがゆえに場所を移して語らおうではないか」
「…このクソジジイ…。ほら行くぞ、アルフレッド!」
知り合いなのだろうか、お互いを知った様子で話す二人を見ていたアルフレッド。
ベッドで眠るオリヴィエを運んできた布に包んで担いだカルヴァンは一足先に窓を開けて飛び降りた。それに続いて降りようとユヒィと呼ばれた少年らしきその男は窓の手すりに手をかけると振り返る。
「……立てるか?」
「は、はい…たて、ま…ッ」
その問いにアルフレッドはすぐに立とうとするがズキッと全身に痛みが走り、座り込んでしまう。
その様子を見てすぐにユヒィは部屋に引き返すとアルフレッドの腋に手を差し入れ、足を持てばグッと抱き上げる。
「わ、わわ!?だ、大丈夫ですから!」
小柄な相手に所謂お姫様抱っこをされては恥ずかしくて仕方がない、というよりも重いのではないかという気持ちが勝る。
その細腕からでは想像もつかないほどに軽々と運ばれると窓から身を乗り出される。
「安心されよ、多少重かろうがあのカルヴァンを運べる身、安心して身を預けよ」
そう言ってヒョイッと窓から外へと飛び降りた。
(いやいや、カルヴァン君ってぼくよりも大きいけど!?いや流石に安心してって─────)
ドンッと地面に着地すると同時にビリリリッと衝撃がアルフレッドにも伝わってくる。
さすがにその衝撃に全身が痛みを覚える、が何事もなかったようにスタスタとユヒィは歩いてカルヴァンの足取りを追う。
一体どうやったらあんな高所から落下しても平気なのかと驚きを隠せなかったが街の外れまで出てカルヴァンの姿を見つけるとユヒィは駆け足、というよりもまるで神速という言葉が適したかのように猛スピードで地を駆け、僅か一秒たりともかからずにカルヴァンの目の前に姿を現した。
「ふむ、待たせたようだな」
「いや、全然待ってやいねぇし、何よりもコイツ大丈夫か?」
「ふむ?」
ユヒィの腕の中に確かに抱えられていたはずのアルフレッドはあまりの速さに凄まじい勢いで回転する椅子に乗せられたような気がしてならず、目眩がして腕の中でだらりと力尽きていた。
それを見て理解できない様子でユヒィは困惑とした顔を見せていたがカルヴァンもかつてそういった経験をした事があるのか、「常人がアンタと同じだと思っちゃいけねぇーよ」と哀れみながらアルフレッドが起きるまで横たわるオリヴィエの横に寝かせて顔を仰いで様子を見ていた。
それからしばらくしてアルフレッドは酔いが醒めて意識がハッキリとし始めた頃、上体を起こしていまだ辛そうに青ざめた顔を見せるオリヴィエを見て二人で歓談するカルヴァンとユヒィを見る。
「あ、あのっ、助けてくれて……ありがとう、ございます」
その第一声を聞いてユヒィはゆっくりと顔を向けるとカルヴァンに視線を配った後、アルフレッドの澄んだ碧眼を見て首を横に振る。
「いや、構わん。我々は王を捜しに来たまで、お主が王の従者であるというならば助けるも当然」
落ち着いた声で話す内容を聞いているとアルフレッドは一つの疑問を抱く。
「あ、あのっ、その…王って、なんですか?ぼく、よく分からなくて……」
それはカルヴァンが最初に疑問を抱いたものと同じ言葉。
その問いにユヒィは小さく微笑む。
「いやはや、すまない。此方の世界のものに王だのなんだの語ろうても分からんのも仕方あるまい。王について話す前にまず認識すべき事がある」
「認識すべき事…?」
「そう、お主は此処より東の果てにある…あの塔を存じているか?」
塔といえば此処より見える遥か彼方にあるあの塔の事以外、他にはないだろう。
勿論知っていると縦に頷けばユヒィは地面に人差し指を押し当ててひし形を描くと横に伸びた四つの線をひし形の上に描く。
「では、説明しよう。あの塔へと向かい上ると上への階層へ行ける。そこから更に上れば地上へと出れ、更に上れば最高層に辿り着ける」
「最高層…?という事は、此処は…」
「そう、地下二層にあたる"放棄された世界 クラブ"である。なお、これより上は騎士の世界スペード、商人の世界ダイヤ、そして世界を掌握する絶対たる王の世界ハートがある」
「……世界……」
「我輩は数年前に失踪した王を求めて旅をして此処にやってきた。ゆえに何年も待ち望んでいたが遂に王は姿を露わにした、それがオリヴィエ・メルレである」
「は、はい…?」
スッと指差されたのはオリヴィエ。彼が王であると突然告げられてもアルフレッドは理解できずにいた。
だが、その話を聞く限り、合点がいくところもあった。
「ちょっと、分からないですけど…確かにオリヴィエさんは最上階を目指すと仰ってました。という事は彼が本当に……?」
「うむ、間違いない。長年、王家に仕えたこの爺やの目は誤魔化せん。ついに王へと君臨するべきだと自覚なされたのは良い事だ」
「い、いや、納得するのはいいですけど、どうして王にならないといけないんですか⁉」
王というものが何か分からない。だが重要であることは分かる。
しかしあまりにも先が見えず不透明な話に頭が混乱するアルフレッドにユヒィは困惑しながらも一つ一つ話しを進める。
「王が玉座に収まらねばお主らが化け物という異形の成れの果ては今後とも生まれ続けるだろう。だが、王を玉座より下したのはダイヤとスペードの悪しき人間共の仕業。王は長年、スペードの人間共に幽閉されていた、それを脱してここまでやってきたのだ…」
「幽閉…?あ、まさか……」
オリヴィエは休む前、何者かに追われていると言っていたような気がする。
はっきりとは思い出せないがそれがスペードの騎士達であるというのならば玉座があるという王の世界まで戻るまでには誰かが同行し、守らねばならないだろう。
だが、どうしてアルフレッドに白羽の矢が立ったのかが理解できずにいた。
「まぁ、各世界の相互関係は後に知ればよいがお主には化け物に堕ちぬ精神力を持っている、それが王の望んだ従者に適した人材なのだろう」
「精神力……確かにオリヴィエさんも言っていましたがぼくではあんな化け物すら倒せません…、ぼくよりもカルヴァン君や貴方の方がいいような……」
意気消沈と言わんばかりに落ち込み、不安の色を隠せずにいるアルフレッドにユヒィは「ほっほっほっ」と軽く笑い飛ばす。
「何を言う。このカルヴァンが同行すればそれこそ王は常に気が気でないだろう、それに我輩が同行したと知れば王は顔色良うせぬだろう。だからこそ、何も知らぬお主に白羽の矢が立つのだ。お主は人が好さそうだし、のう?」
「は、はぁ……?」
そういうものだろうか、とカルヴァンの方を見ても彼は「ケッ」と唾を吐いてつまらなさそうにするばかり。
そういうものか、と納得してアルフレッドは頷いているとユヒィはゆっくりと立ち上がり杖に手を添えて街へと歩き出した。
「あの、どこへ!?」
手を伸ばして呼び止めるとユヒィは足を止める。
そして振り返る事なく、フッと小さく笑えば
「宿屋に弁償代を払うべく戻るのだ、お主は王が目覚め次第、東へと赴くがよい。ではな、また会おう」
そう手短に告げれば先へ先へと振り返る事なく歩んでいくカルヴァンの後を追って歩いていく。
姿が見えなくなるまで見届けていたアルフレッドは再び周囲が静寂に包まれるとオリヴィエが目覚めるまで待っていた。
それから冷たい夜風からどことなく生暖かい風が流れ、小鳥のさえずりが朝を告げる。
相変わらず灰一色の世界は朝七日夜なのかさえも分からない。ただ一向に目覚めないオリヴィエの顔を見ながらアルフレッドはぼんやりと考えていた。
(……睫毛、長いなぁ。髪の毛もサラサラで……やっぱり、オリヴィエさんって良い所で育ったのかな、お上品そうな感じだし……)
そんな事をただ意味もなく考えていると瞼が微かに動き、ゆっくりと目が開くと梅紫色の瞳がただ虚ろ気に周囲を見渡し、手を伸ばす。
その手をパシッとアルフレッドが掴めば優しく髪を撫でる、まるで悪い夢から目を覚ました兄弟を優しく落ち着かせるような仕草で。
「……オリヴィエさん、大丈夫ですか?」
「……え、ええ…アルフレッド…私……いえ、アタシ、は……」
一瞬、一人称を間違えていた事から酷く魘されていたのだろうかと推測してしまうがどうやら多くを語りたがらない様子からして、上体を起こしたとしてもただ無理強いをさせず、気持ちが落ち着くようにと背中を擦り続ける。
そうこうしている事、およそ五分。ようやく落ち着きを取り戻したオリヴィエがアルフレッドの顔を見れば幾度か瞬きした後、アルフレッドの肩にもたれた。
「……少し、少しだけこうしていて……いいかしら」
「…はい、ゆっくり休んでください。いっぱい休んで、落ち着いたら行きましょう、東の塔へ」
どこか不安を隠しきれない震えるオリヴィエの手に自らの手を重ねる。
体格こそ異なり、背丈の低いアルフレッドの方が若干手が小さいものの男だというのに細くしなやかな指は触れるだけで折れてしまいそうだった。
無骨な指を絡めて、ただ静かに言葉も変わさず、一緒に居続ける。
それがなんだか不思議で、ただ過ぎゆく時間の中で時折握り返してまるでそこにいるか確かめるように顔を覗き見るオリヴィエに優しく微笑みかけると優しく握る手に軽く力をかける。
大丈夫、俺は此処にいますよ─────と伝えるように。
それから暫く、長くも短い静かな時間を送っているとゆっくりと手が離れ、オリヴィエは立ち上がる。
「……もう、大丈夫よ」
その声を聞いてアルフレッドも立ち上がるとどこか弱々しくなっているオリヴィエを横から顔を覗き込む。
昨晩に比べてげっそりとした印象を受けるその姿に心配になればアルフレッドは優しく抱き着いて頭を撫でた。
「大丈夫ですよ、ぼくが貴方を守りますから。安心してください、オリヴィエさん」
その言葉を聞いた瞬間、込み上げるものがあったのか、梅紫色の瞳は涙で濡れてキラキラと輝き、大粒の涙をぽつりぽつりと流せば抱きしめてくれるアルフレッドの手の甲を取って感謝する。
「……ありがとうね、アルフレッド……優しいわね…」
「オリヴィエさんが心配だからです、だから…いつでも頼ってください」
その言葉には感謝してもしきれないほど、心が落ち着いていく。
暫く涙を流した後、涙を拭えばオリヴィエはアルフレッドから離れて鼻頭を赤く染めながら微笑んでみせる。
「ありがとうね、本当に。もう大丈夫よ」
「本当ですか?」
「ええ、本当。何があったのか…知らないけれど敢えて聞かないでおくわ。今は前へ進むわよ!」
そう言って踵を返し、前へと進みだしたオリヴィエの後ろ姿は思っていた以上に弱く儚さを感じさせる。
だが、気丈に振舞うその姿を見てはあまりとやかく言うのは野暮であろう事は言わずもがな、分かっている事だった。
アルフレッドはただ、その背を支えるように「はい!」とだけ返して追いかける。
次の町は一体どこだろうか。地図もない灰色の世界をただ足の赴くままに、しかしその足取りは確かに東へと向けて歩いていく。
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