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逆愛Ⅱ《洸弍side》4
ドラマの撮影で、住谷マリがMY学園によく出入りするようになった。
気付くと大空と話をしている気がする。
別に、俺には関係のないことだけど。
「あっ、洸弍先輩!」
住谷マリと廊下で話してた大空が俺に気付いて駆け寄ってきた。
「何だよ」
「英語得意でしたよね?どうしても分からない英文教えて欲しいんです。明日提出のものがあって」
「あぁ。俺は今日外出だから帰ってきたら教えてやるよ」
「マジで助かります!ありがとうございます」
大空がこの学園に来た時は、こうしてよく勉強を教えてやったもんだ。
それが大空に冷たくなってからはお互いに避けてたから、懐かしく感じる。
昔から英語が苦手なんだよな大空は。
「住谷マリがこっち見てるぞ。じゃあ俺は行ってくる」
そして俺は学園を後にした。
外出先での会議が終わって、戻ってきたのは17時過ぎだった。
まだ皆は生徒会室にいるだろうと思って、部屋に戻る前に生徒会室へと向かった。
瞬間、
遠くからでも見覚えのある人物が廊下にいた。
担任の山田雅鷹と…
「綾くん!」
「おぉ、洸弍!やっと会えた」
俺の大好きな人。
この人を忘れるために、ここにきたんだ。
「どうしたの?」
「あぁ、今日は雅鷹と飲むから迎えに来たんだ。ついでに洸弍の顔を見に来た」
綾くんに頭をわしゃわしゃと撫でられる。
久しぶりに会えて嬉しい。
嬉しいのに、
「洸弍も来るか?夜中まで飲むからいつでも来いよ。明日休みだし」
「行けたらね。でも綾くんに会えたからもう充分だよ」
「可愛いやつめ。行くぞ雅鷹!じゃあな洸弍。来たかったら連絡しろ」
「うん。じゃあね」
嬉しいのに、胸がときめいていない気がした。
いつも実家に帰って綾くんに会うと胸が高鳴るのに。
「洸弍先輩」
振り返ると大空がいた。
「大空…いたのか」
「さっきからいましたよ」
さっきからいたんだろうけど、綾くんと話に夢中になってて気付かなかった。
「英語だよな?お前の部屋でいいだろ?20時ぐらいに行くから用意しとけ」
「分かりました」
そして俺は自分の部屋に向かった。
綾くんに会えたことよりも、大空に勉強を教えようとしている今の方が嬉しく感じている。
頼りにされてるから?
なぜかはよく分からない。
俺は風呂に入ってから大空の部屋に向かった。
「あぁ、なるほど!こう訳せばいいのか」
「それ基本の英文だから覚えとけよ。今後も使う」
「ありがとうございます」
こうして大空に勉強を教えてると、本当に飲み込みが早いなと思う。
生徒会に入れるくらいだから頭はいいんだろうな。
単純な奴だけど。
「ちょっと休憩しましょう」
そう言って大空は冷蔵庫からケーキを取り出した。
「クリュグ飲みます?」
「いらねぇよ」
あれを飲むと、気分がおかしくなる。
今飲んだら俺は何を言うか分からない。
だから遠慮した。
「上手いなこのケーキ」
「あのタルトには負けますけどね」
ケーキと紅茶を飲みながら休憩。
そういえば綾くんに飲みに誘われたな。
「もう21時か…」
あの人達は朝方まで飲むだろうから、俺じゃついていけないんだよな。
どうしてあんなにザルなんだ。
「洸弍先輩が今日話してた人って、神威綾ですよね?」
「あぁ。綾くんを知ってんのか?」
神威家はあまりメディアに出ようとしない。
稽古や芝居に専念するためだ。
「母親が好きなんで知ってます。知り合いですか?」
「兄貴の親友で家が近所なんだ。哀沢と山田雅鷹とも高校の同級生みたいだぜ」
兄貴の親友というよりも、兄貴の恋人。
俺の大好きな人。
「いつも抱かれてるときに言ってる『リョウくん』って…神威のことですか?」
いつも目隠して大空を綾くんと思いながら抱かれている。
そういえば、大空に綾くんのことを教えたことは無かった。
まぁ、聞かれなかったし。
「そうだ。お前の体格は綾くんに似てるからな、勘違いもしちまう。好きな人だからな」
「神威に抱かれたことあるんですか?」
「まぁ、何回かはある」
もうしばらく実家に帰ってないから、綾くんに抱かれることも無いけど。
でもまだ綾くんが好きだから大空を利用したんだ。
目隠しを条件にして。
「お前こそ慣れてるよな?何人ぐらい抱いてきたんだよ」
「男を抱いたのは洸弍先輩が初めてですよ。女は…10人ぐらいですかね?」
「住谷マリとか?」
「あぁ…マリちゃんは俺の初体験の相手ですね」
まさかと思って出した名前がヒットした。
大空が住谷マリと話してるのでさえ、いい気がしないのに。
「マリちゃん実は俺の4つ上なんで、俺が13の時に誘われてヤッたんです。彼女からは色んなこと教わりました」
「10人ってまさか全員事務所の女か?」
「そうですね。来るもの拒まず、別に好きな人もいなかったんで。俺から誘うことは無かったですけど」
大空は「母親に知られたら殺される」と笑いながら俺に言った。
だからこいつは手慣れてたのか。
その瞬間、大空の携帯が鳴る。
「はい、何?ちょっと今勉強しててさ…」
女だろうか、とか考えてる自分が嫌だ。
もう勉強も一通り終わったし、大空の電話は終わりそうにない。
部屋に戻るか。
その瞬間、俺の携帯が鳴った。
綾くんだ。
『おい洸弍!こっち来ねぇのかよ』
「行けたら行くよ」
『待ってるからな!』
そう言って電話を切った。
相当酔ってる声だったけど。
大空の電話が終わりそうに無かったから、ノートの余白に『帰る』と書いて部屋を出ようと席を立った。
「待っ…」
ドアを開けようとした瞬間、大空が後ろから俺の手を掴んだ。
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