15 / 83

逆愛Ⅱ《嵐side》2

「あーらし」 「マリちゃん。今日撮影?」 「でもあたし脇役だからまだまだ出番ないけどね」 ドラマの撮影で、マリちゃんがMY学園によく出入りするようになった。 「てか、この前学食で一緒にいた人って誰?青髪で綺麗な人」 「あれは生徒会の先輩。つか、手ぇ出すなよ。マリちゃん彼氏いるじゃん」 やっぱり洸弍先輩は芸能人から見ても目立つ存在なのか。 俺も初めて見たときから思ってたけど。 「あっ、洸弍先輩!」 たまたま洸弍先輩が廊下を歩いていた。 俺は急いで洸弍先輩に駆け寄った。 「何だよ」 「英語得意でしたよね?どうしても分からない英文教えて欲しいんです。明日提出のものがあって」 さっきの授業で課題を出され、どうしても英語が出来なくて悩んでいた。 「あぁ。俺は今日外出だから帰ってきたら教えてやるよ」 「マジで助かります!ありがとうございます」 俺がこの学園に来た時は、よく勉強を教えてもらっていた。 それが急に洸弍先輩が俺に冷たくなってからは、お互いに避けてたから懐かしい。 「住谷マリがこっち見てるぞ。じゃあ俺は行ってくる」 振り返ると、マリちゃんがニヤニヤしながらこっちを見ていた。 「嬉しそうな顔しちゃってさー。かわいい」 「うるせぇな。ほっとけ!」 「あはは。必死必死。男かぁ。まぁ頑張りなさいよ。社長には黙っとくから」 「うるせ。もう俺今から生徒会あるから行くわ。じゃあね21歳」 「…あんた殺すわよ」 そして俺は生徒会室へ向かった。 新学期はイベントが多い。 だから春は出張や交流が頻繁にあり、生徒会役員は多忙になる。 この学園に編入するためには、生徒会に入るのが絶対条件だった。 何で俺なんだろう… 「おう、そこの若いの!」 「え?」 前から廊下を歩いてくる人物が俺を呼んだ。 どこかで見たことのある人物。 歌舞伎役者の神威綾だ。 うちの母親が神威を好きだからよく分かる。 「生徒会室に案内して欲しいんだけど。雅鷹がそこにいるらしくて」 「あ…じゃあ案内します」 マサやんと知り合いなのかな? ふと、隣から香る匂いが俺と同じ香水の香りだった。 俺と同じといっても、前に洸弍先輩がくれた香水の香り。 「あー!アヤちゃん発見!携帯繋がんないし」 「悪ぃな。充電切れたからさ」 生徒会室の前にいたマサやんが神威に気付き、神威を怒る。 瞬間、 「綾くん!」 振り返ると外出から戻った洸弍先輩が、神威に向かって駆け寄ってきた。 「おぉ、洸弍!やっと会えた」 「どうしたの?」 「あぁ、今日は雅鷹と炯と飲むから迎えに来たんだ。ついでに洸弍の顔を見に来た」 神威に頭をわしゃわしゃと撫でられる洸弍先輩。 見てるだけでムカついた。 「洸弍も来るか?夜中まで飲むからいつでも来いよ。明日休みだし」 「行けたらね。でも綾くんに会えたからもう充分だよ」 「可愛いやつめ。行くぞ雅鷹!じゃあな洸弍。来たかったら連絡しろ」 「うん。じゃあね」 そして神威とマサやんは去っていった。 何なんだこの関係は。 あの神威を『綾くん』と呼び、しかも飲みにまで誘われる関係。 「洸弍先輩」 「大空…いたのか」 「さっきからいましたよ」 こんな近距離にいたのに、神威との話に夢中になってて気付かなかったのかよ。 「英語だよな?お前の部屋でいいだろ?20時ぐらいに行くから用意しとけ」 「分かりました」 あの香水と、『綾くん』という呼び方。 嫌な予感がした。

ともだちにシェアしよう!