16 / 83
逆愛Ⅱ《嵐side》3
「あぁ、なるほど!こう訳せばいいのか」
「それ基本の英文だから覚えとけよ。今後も使う」
「ありがとうございます」
20時ぐらいに洸弍先輩が俺の部屋に来た。
やっぱり、洸弍先輩の説明は分かりやすい。
「ちょっと休憩しましょう」
そう言って俺は冷蔵庫からケーキを取り出した。
「クリュグ飲みます?」
「いらねぇよ」
まぁ、そりゃそうだろうな。
俺も何聞いてんだ。
「上手いなこのケーキ」
「あのタルトには負けますけどね」
ケーキと紅茶を飲みながら休憩。
隣からは石鹸のいい香りが漂う。
風呂に入ってきたのかよ。
ムラムラするじゃねーか。
「もう21時か…」
洸弍先輩が時計を見て呟いた。
さっき、神威達に飲みに誘われてたな。
―…行くのかな
「洸弍先輩が今日話してた人って、神威綾ですよね?」
「あぁ。綾くんを知ってんのか?」
「母親が好きなんで知ってます。知り合いですか?」
まぁ、あんなに仲良いとこ見せられて知り合いじゃない方がおかしい。
「兄貴の親友で家が近所なんだ。山田雅鷹とも高校の同級生みたいだぜ」
微笑みながら神威の話をする姿に嫉妬した。
「いつも抱かれてるときに言ってる『リョウくん』って…神威のことですか?」
「そうだ。お前の体格は綾くんに似てるからな、勘違いもしちまう。好きな人だからな」
「神威に抱かれたことあるんですか?」
「まぁ、何回かはある」
あの人に抱かれていたのか。
今日初めて生の神威綾を見たけど、かなり顔の整った人だった。
あの香水、
やっぱり神威と同じものだったのか。
だから洸弍先輩は俺を神威だと勘違いしたのか。
「お前こそ慣れてるよな?何人ぐらい抱いてきたんだよ」
逆に洸弍先輩に質問された。
「男を抱いたのは洸弍先輩が初めてですよ。女は…7人ぐらいですかね?」
「住谷マリとか?」
「あぁ…マリちゃんは俺の初体験の相手ですね」
懐かしい。
13の時に誘われて、かなりリードされながらの初体験だった。
「マリちゃん実は俺の4つ上なんで、俺が13の時に誘われてヤッたんです。彼女からは色んなこと教わりました」
「10人ってまさか全員事務所の女か?」
「そうですね。来るもの拒まず、別に好きな人もいなかったんで。俺から誘うことは無かったですけど」
こんなの母親に知られたら殺されるといつも思ってた。
母親も父親も多忙な人間だから、俺を気に入った事務所のモデル達とは何回かした。
価値なんて気にしてなかった。
快感さえ感じられれば良かったから。
その瞬間、俺の携帯が鳴る。
母親だ。
「はい、何?ちょっと今勉強しててさ…」
『あんたマリのことちゃんと護衛してよね』
「いやいや無理でしょ。俺だって忙しいし」
その瞬間、洸弍先輩の携帯が鳴った。
神威か?
「行けたら行くよ」
そう言って電話を切った。
『学園で会っても嵐が相手してくれないって言ってたわよ』
「俺だって忙しいんだって。いちいちマリちゃんの相手してらんねぇし」
あぁもう、うざい母親。
電話を切るに切れない姿を見て、洸弍先輩はノートの余白に『帰る』と書いて部屋を出ようと席を立った。
「待っ…」
俺は電話を切って、先輩の後を追った。
飲み会に行って欲しくない。
行かせない。
ドアを開けようとする洸弍先輩の手を掴んだ。
ともだちにシェアしよう!