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逆愛Ⅱ《嵐side》6

「え!マジで犯ったの!?」 洸弍先輩を犯してから久しぶりに誠に会って、例の件の報告をした。 誠はかなり驚いていた。 「何驚いてんだよ誠。お前が提案したんじゃねぇかよ」 「いや、あれ冗談で言ったんだけど」 「はぁ!?クリュグ使えとかノリノリだったじゃねぇか」 「ははっ。まさか本当に実行すると思わなかった!」 「誠…」 きょとんとしてる顔がムカついた。 誠らしいと言えば誠らしいんだけど。 こいつ…もし俺が任務失敗したらとか予想してなかったのかよ。 思いつきであの洸弍先輩を犯せって…今考えると怖い。 「で、寺伝さん変わった?」 「あぁ、殴られなくなったし最近優しい。今まで何であんなに酷い仕打ちされてたんだろう」 誠は黙り込んだ。 「もしかして嵐さ、宮本をいじめてたこと寺伝さんに言った?」 「あぁ。なんで編入したのか聞かれたから」 「なるほど…」 そして誠から洸弍先輩の過去を聞いた。 いじめで大切な人を失ったこと。 確かに、俺がいじめをしていたことを言ってから冷たくなった気がする。 「寺伝さんの中で竹内さんを救えなかったことは、悔やんでも悔やみ切れない過去なんだよ」 「俺の存在は、竹内さんを救えなかったことを思い出すからか…」 なんとなく分かった。 洸弍先輩が俺に冷たい理由。 そんな過去があったなんて。 俺なんて殴られて当然の存在だ。 最低なことをしたんだから。 「でも寺伝さん優しくなったんだから、もう過去は吹っ切れたんじゃないか?」 「だといいけど」 でも俺が、最低なことをしたのは事実。 洸弍先輩に許される権利なんてないのに。 なのに洸弍先輩は俺に優しくしてくれる。 「おい、大空!今日お前の部屋に行くからな」 普通に接してくれる。 俺の存在は嫌な過去を思い出すはずなのに。 「すいません、今日はちょっと…」 ダメだ。 「あぁ。そうかよ」 洸弍先輩とまともに話が出来ない。 俺が傍にいるとダメな気がした。 最低な俺に、許される権利なんてないから―… それから洸弍先輩を避けるようになった。

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