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逆愛Ⅴ《洸弍side》1

何が起きたのか分からない。 気付くと自分の部屋にいた。 ー…そうだ、足利槞唯に犯されたんだ ほんの2時間前の出来事を思い出した。 気持ち悪くなり、俺はバスルームに駆け込んだ。 汚れたこの体を清めたい。 だから制服を脱がずに水のままシャワーを浴びた。 大空に見られた。 きっと勘違いしてるだろうな。 でも、いい機会なのかもしれない。 あいつは帝真竜が好きなんだし、勘違いしてもらったほうが諦めがつく。 俺が大空に好きだなんて言ったところで、結果は目に見えてるんだから。 俺なんて、汚いだけだ。 そしてシャワーに打たれながらその場に座り込んだ。 涙が止まらなかった。 今、大空に逢ったらどうしよう。 逢ったところで、苦しいだけなのに。 今の大空にとって、俺はどんな存在になってるんだろうか。 きっと、汚れた先輩でしかない。 「冷たっ…これ水じゃん。洸弍先輩何やってんですか!風邪ひきますよ」 誰かがバスルームに入ってきて、シャワーを止めた。 「大空…?」 なんで大空がここに… 「早く体を拭いてください。風邪ひきますよ」 何でここにいるんだよ。 出来れば逢いたくなかった。 弱りきってる俺を見て欲しくない。 「いいんだよ俺なんて…別にどうなったって」 大空は洗面所の棚からタオルを取りだし、俺の髪を拭いた。 優しくするな。 そんな優しさ、今はいらない。 「触んな。てめぇ何しにきたんだよ」 俺は大空の手を掴んで、手の動きを止めた。 「何しにって…どうしても洸弍先輩に伝えたいことがあって」 何を言いに来た? さっき足利槞唯とヤッてたことか? それとも帝真との恋が実ったとかか? 「なら、とっとと言って出てけ」 「…」 何も聞きたくない。 だいたい予想はついてる。 俺を罵倒しに来たんだろ。 もう何でもいい。 どうせ俺と体の相性が良かっただけだろ? 俺なんて、もうどうなったっていいんだ。 少し沈黙が続いたあと、大空は俺の目を見て深呼吸をして言った。 「俺、洸弍先輩が好きなんです」

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