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逆愛Ⅴ《洸弍side》2
予想していなかった言葉に驚いた。
俺を好き?
いや、まさかー…
「…冗談だろ?」
「本気です」
真剣な顔で大空は言った。
大空が俺を好き?
嬉しさと驚きが混ざり合って、心臓の鼓動が速くなる。
同時に、
足利槞唯の言葉が甦る。
『追放』
俺が大空を好きになったら、大空はこの学園から追放される。
俺の感情をありのまま今の大空に伝えたら、必ず足利槞唯にバレる。
俺のせいで大空が苦しむことになる。
なら言えない、
お前に「俺も好きだ」なんて言葉は言えない。
絶対に言えないー…
「俺を好き?めんどくせぇ。じゃあもうこの関係終わりにしようぜ」
「え?」
大空が俺を好きだと分かった以上、傍に居れない。
だから俺は自分の感情を押し殺して、大空を俺から突き放すことにした。
「俺はお前なんて好きじゃねぇんだよ。お前でも足利槞唯でも、セックス出来れば誰だっていいんだから」
大空を守るために、傷付ける言葉を繰り返した。
「所詮お前なんて綾くんの身代わりなんだよ」
もう少しだけ早く、お前の気持ちを知れたら良かったのに。
そうしたら、ここまでお前を傷付けることなんてなかったかもしれない。
でも、もう無理だよ。
自分の気持ちを優先してお前が苦しむくらいなら、
俺はー…
「同情したくねぇから、もう俺に近づくな」
俺は身を引いてお前を守るよ。
だからそんな悲しい顔で俺を見るな。
今の俺には、お前を傷付けることしかできないんだ。
今だけだから、
俺から離れればもうお前が傷付くことはないから、
だから、そんな顔するなー…
「分かりました」
大空はそう言って、バスルームを出ようとした。
嫌だ、
行かないで、
なぁ、今の俺はどんな顔をしてるー…?
瞬間、大空が俺の唇を奪った。
「んっ…」
更に大空の生温かい舌が侵入してきた。
俺は無意識に舌を絡ませていた。
大空が唇を離して言う。
「抵抗しないんですか?」
「誰でもいいからだ」
大空がいい。
大空じゃなきゃ嫌なのに、
お前を傷付ける俺を許してー…
「…じゃあ最後にセックスしてください」
「……」
「それで終わりにしましょう」
『最後に』という言葉を聞いて苦しくなった。
お前は俺を諦めるのか?
その程度の気持ちなのか?
最後になんてしたくない。
思考が矛盾している自分に腹が立つ。
「…好きにしろ」
もう、どうにでもなれ。
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