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逆愛Ⅵ 0.5《嵐side》

嫌いだった。 大嫌いだった。 俺を見下すことしかしない洸弍先輩が嫌いだった。 生徒会室に行くのが苦痛で、先輩なんていなければいいと何度も思った。 俺の中から、 先輩の中から お互いの記憶が無くなってしまえばいいのにと望んでいた。 それが今では――… 無視される方が辛いなんて。 洸弍先輩の中に俺は存在してるのか? 洸弍先輩の目に俺は映っているのか? 消されたいと思っていた俺の存在を、洸弍先輩の中から消えていないことを望んでしまうなんて。 嫌いだと言われてるのに、俺との出来事を忘れないで欲しいと願ってしまう。 好きなんだ。 もう、愛に近い感情。 ――我慢できない 「洸弍先輩」 静寂した生徒会室に二人きり。 先輩の机まで行き、俺は想いをぶつけた。 「これって『普通の先輩と後輩』ですか?」 「なにが…」 心臓がバクバクする。 先輩の顔をきちんと見て話をするのは久しぶりだ。 緊張と愛情が入り混じって、 ――どんな顔をしたらいいんだ 「『普通の先輩と後輩』は、もっと会話をすると思うんですけど」 お互いに避け合ってるこの状況が嫌で嫌で仕方ない。 気まずいのは確かだけど、体の関係続けてたときは仲良くやってた。 俺の一言であの頃みたいになれればと、期待をしている。 『普通の先輩と後輩』に戻れればと――… 「…先輩?」 洸弍先輩は俺の顔を見つめて、目には涙を溜めているように感じた。 それから黙って俯いて、返事を返す様子は無い。 あぁ、そうか―… 冷静になって考えてみれば、嫌いな奴とは仲良くできないよな。 黙るわけだ。 「すいません。今の忘れてください。じゃあ俺、部屋戻ります。お疲れ様でした。また明日」 洸弍先輩の中に俺は存在してるのか? 洸弍先輩の目に俺は映っているのか? ――…きっと、先輩の中に俺は映ってない それでもいい。 俺の中に先輩が存在してる限り、嫌われてても構わない。 それくらい先輩を想ってるから――…

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