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逆愛Ⅶ《雅鷹side》9
「雅鷹!!お前どこまで行って…あれ?洸弍は?」
「洸弍くんは寝ちゃったから、車に乗せてきた。あ、愁ちゃんも寝ちゃったんだ?」
「そうそう。寺伝兄弟は疲れてるんだな」
どうせ俺がトイレにいる間、愁ちゃんに疲れるようなことしたんでしょ。
「洸弍、元気なくなったよな。学校でなんかあったのか?」
車に洸弍くんを乗せる前に、ルイちゃんに犯されたことを洸弍くんから聞いた。
それを嵐くんに見られて、それでも嵐くんは洸弍くんを好きだと求めて。
それなのに洸弍くんはルイちゃんのせいで応えられなくて、最後にセックスして終わったって。
『純粋に人を好きなだけのに、どうしてこんなに苦しまないといけないのかな…』
洸弍くんが泣きながら俺に言ったこの言葉が忘れられない。
好きな人に好きって言えずに、嫌いって嘘ついたり、
自分以外の人とセックスしてるのを目撃して、
苦しくないわけがない。
「どうした雅鷹、険しい顔して」
「…洸弍くんが、ルイちゃんに犯されたって」
「!?」
やり切れない。
洸弍くんがこんな辛い目に合ってたなんて。
俺はアヤちゃんに洸弍くんが苦しんでいる理由を全て話した。
「ルイの野郎、愁弥だけでなく俺の可愛い洸弍まで…」
「大丈夫だよアヤちゃん、俺が洸弍くんを助けてあげるから」
嵐くんはまだ洸弍くんを好きだと思う。
好きな人をすぐに乗り換えするような子じゃないから。
「大丈夫って…相手はルイだぜ?嵐の担任なんだろ?」
不安気にアヤちゃんが俺を見る。
確かにルイちゃんは真面目に見えて裏の世界では有名な人だけど、
「俺を誰だと思ってるの?」
そういう人こそ崩し甲斐がある。
「俺からしてみればルイちゃんなんて恐るるに足らないよ。山田財閥の力、見せてあげる」
久々に楽しくなりそうでワクワクする。
「そろそろ帰ろっか」
「あぁ。洸弍を頼むな」
「もちろん」
車ですやすやと眠っている洸弍くんの寝顔は、まるで幸せそうな感じなのに、
今は苦しんでるんだね。
両想いなのに
ただ好きなだけなのに
想いが通じないなんて――…
大丈夫だよ、俺が助けてあげるから。
もう苦しい思いさせないようにするから。
「大、空…」
嵐くんの夢を見て、眠りながらも涙を零している。
「大丈夫、俺が助けてあげるから」
眠る洸弍くんの髪を優しく撫でながら、俺は彼を救う方法を考えていた。
「おやすみ」
どうか見ている夢が、
そして流してる涙が、
幸せの涙であることを願って――…
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