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逆愛Ⅷ《嵐side》1

関係が終わってから数ヶ月経つのに、まだ洸弍先輩を求めてしまう。 あの時みたいに戻れないって分かってるのに、 それでもまたあの時みたいになれる可能性を信じてる。 苦しいだけなのに、 嫌われてるのは分かってるのに、 まだ想いが切れない。 綺麗な顔も、 透き通った白い体も、 俺を呼ぶ声も、 愛しいその全ては、手に入らないって分かってるのに―… 「今度から俺が経理担当だからよろしくー」 一週間くらい前から生徒会の経理の担当が、マサやんに変わった。 俺の直属がルイルイからマサやんになるなんて、何でだろう。 急過ぎるだろ。 まぁ、上が誰だろうと与えられた仕事をやるだけだけど。 「また飲み行こうね洸弍くん」 「…遠慮しときます。記憶ほとんどないし」 マサやんが洸弍先輩に絡んでいる。 『また』ってことは既に飲みに行ったのか。 記憶が無くなるまで飲まされたって、いったいどれだけ―… 「そういえばアヤちゃんさぁ、背ぇ伸びたよね」 アヤちゃん……女か? マサやんと合コンでも一緒に行ったのか? 「確かに。まぁ綾くんは昔から大きいイメージだったけど…性格は全然変わってないですね」 「アヤちゃん昔から節操なしだからねー」 綾くんって… もしかして『アヤちゃん』って神威のことか? 神威と一緒に飲みに行ったのか。 神威とマサやんは仲良いみたいだし、洸弍先輩と飲みに行っててもおかしくは無い。 「これアヤちゃんがこの前くれた紅茶。美味しいから飲んでみて」 「どうも」 楽しそうに会話をする二人を見てられない。 耳を塞ぎたい気持ちでいっぱいだ。 俺の愛しい先輩が、他の男と楽しそうに話してるんだから。 まぁいい。 先輩が誰と話してようが関係無い。 先輩の姿を見れるだけで、それだけで幸せだと感じられるから。 同じ空間に存在してるだけで、それだけで充分だと最近思えるようになった。 ―…割り切るのに時間はかかったけど 俺は先輩に嫌われてるし、仕方ないんだ。 俺は自分の席を立ち、マサやんと会話している洸弍先輩の元へと向かった。 「洸弍先輩、先月の決算書…」 会計部のリーダーをしている俺は、副会長である洸弍先輩に決算書のチェックをしてもらってからルイルイに提出をしていた。 副会長にチェックしてもらってからの決算書の提出は規約に記載されていることだ。 「決算書は俺にちょーだい」 洸弍先輩に渡した決算書を、マサやんが奪い取る。 何十枚もある決算書をペラペラめくりながら、マサやんが言った。 「今度から決算書は俺に直接渡して。チェックも俺がするから、洸弍くんには渡さなくていいよ。規約は無視で。俺がルールだから」 俺がルールだなんて、さすが山田財閥。 マサやんは笑顔で俺を見て、再び決算書をペラペラめくる。 決算書のチェックは俺が唯一洸弍先輩と会話できる時間なのに。 予算に対しての総合費用とか、今後どうしていくかとか。 他愛のない会話だとしても洸弍先輩を近くに感じられる、唯一の時間なのに。 「この前、洸弍くんが『大空のせいで俺の仕事が増える』って言ってたからね。手助け。俺いつも暇だし」 「…ははっ。そうなんすか」 ―…それしか言えねぇ 洸弍先輩はマサやんにまで俺を嫌いだと言ってるのか。 確かに仕事はそんなに出来る方じゃないけど、さすがにショックだ。 「じゃあ嵐くんは今から第2実習室まで来て下さーい。今後の予算についてとかあるから」 「あ…はい」 そしてマサやんと一緒に生徒会室を後にした。

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