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汎愛《洸弍side》4
「すいません」
香水を捨てようと思っていた時、誰かに声をかけられた。
背が高くて、短髪で、ネクタイが青いから中等部の生徒だ。
「俺今日からこの学園に編入したんですけど、生徒会会計に任命されたみたいで生徒会室の場所知りたくて…」
この学園にこの時期に編入で入ってきて、しかも生徒会に任命されるのは珍しいこと。
よっぽど能力があるか、または学園会長に気に入られた訳ありの人物のどっちかだ。
「広くて迷いました…」
「俺は生徒会副会長やってる寺伝洸弍だ。教えてやるからついてこい。案内してやる」
「ありがとうございますっ!」
2年前のことを思い出した。
俺も2年前、綾くんを忘れるためにここに来たんだ。
なのに、忘れてねぇ―…
この香りが2年経っても俺を迷わせる。
「それ、大切な物なんですか?」
「…なんでそう思う?」
「捨てるのに、かなり時間かかってたみたいだから」
確かに、捨てようとして10分以上はあそこに居た気がする。
忘れたいのに、忘れたくなくて。
捨てられない俺は弱い。
でも、強くなるためにここに来たんだ。
だから、忘れなきゃいけない。
「やるよ、これ」
「え…大切な物じゃないんですか?」
「大切な物だったよ。でももういらねぇんだ」
今の俺にはいらない。
必要ない。
もう綾くんを求めない。
「お前、名前は?」
「大空です。大空嵐 」
「よろしくな、大空」
「はい!」
この学園で、俺は変わるんだ。
変わらなきゃいけない。
俺が大空に犯されて、体だけの関係になって、大空と付き合うようになるのはまだ少し先の話。
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